オムロン(株)(京都市下京区塩小路通堀川東入、Tel.075-344-7000)綾部事業所は、先ごろ、平成24年度省エネ大賞(主催:一般財団法人省エネルギーセンター、後援:経済産業省)の「省エネ事例部門」において、最高賞の「経済産業大臣賞」を受賞した。以前より、その省エネ活動は多くの企業から注目を集めていたが、受賞後は注目度がさらに増し、現在、企業からの見学依頼が急増しているという。今回、その取り組みをレポートする。
京都府綾部市中山町鳴谷3-2にある綾部事業所は、1986年に稼働を開始。敷地面積16.5万m²、延べ床面積3.3万m²の規模を誇る。生産は1~4号館と呼ばれる棟で行われており、主に、生産工場で用いられるセンサーや検査装置など、約2万8000種類(年産1億個)の製品の生産・開発を手がけている。
その綾部事業所では、2010年10月に、エネルギー効率を最大化することで主力生産棟である2号館の使用電力を13年度末までに50%削減し、「業界ナンバーワンのエコファクトリー」となることを目標として掲げた。その取り組みの中で特徴的なことは、「見える化」ではなく「診える化」を標榜している点だ。
コミュニケーションツールとしても使われている
「環境あんどん」
オムロンでは、データを取得・グラフ化し見ていくことを「見える化」、そこから一歩進み、データを目的に合わせ必要な層別化や分析・解析をすることを「観える化」と定義。そして現在、さらに進んだ形として、エネルギー使用量の目標を示し取り組むべき内容を診断する「診える化」を推進している。その診える化を行う上でカギとなるのが、「環境あんどん」と呼ばれる独自の監視システムだ。
2号館には、電力モニター84台をはじめ計158台のセンサー機器が設置されており、電力・パーティクル・温湿度・エアー流量・生産数・原単位などを測定している。環境あんどんは、これらのセンサーを24時間常時監視。1分ごとにデータ化し、リアルタイムでモニター表示するシステムである。フロア全体はもちろんのこと、各ライン、各設備単位での監視が可能で、比較分析・診断をシンプルな形で表示してくれることが特徴だ。システムの仕様は、生産現場の従業員が使えるように、簡易なものになっており、従業員同士が生産の改善点を見出すためのコミュニケーションツールとしても活用されている。
これまでの改善事例としては、環境あんどんの画面から、クリーンルームのパーティクル(微小チリ・ゴミ)量の変動を知ることができ、異常発生の原因や変動要因が判明。対策を施すことでパーティクル量を3分の1にすることができた。その結果、従来はクリーンユニット7台を24時間運転していたが、必要なときのみ制御運転することが可能となり、クリーンユニット電力を40%削減することに成功した。そのほか、印刷工程の電力、成形機非稼働時の省温による金型電力、圧力エアーの改善によるコンプレッサー電力など、13年1月時点で34件の改善事例を生み出しており、省エネだけでなく生産性も約7%向上した。なお、環境あんどんは、13年度から外部向けにも販売を開始する予定だ。
現状、導入機器はセンシングすることがメーンであるが、ここから一歩進み、設置するだけで省エネ効果を生み出す機器の開発にも取り組んでいる。その1つが、工場用のエネルギー回生システム。ハイブリッド自動車で使用されているブレーキング時のエネルギーを回収・蓄積し再利用する仕組みを、生産現場で使用されているモーターのブレーキングに適用する試みが進んでいる。
そして最終的には、前述のセンシングや制御機器に加え、オムロンが持つパワーコンディショナーなどの創エネ・蓄エネを絡め、自家発電設備で必要なすべてのエネルギーをまかない活用する「ゼロ・エナジー・エコ・ファクトリー」の実現を目指していく。