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千代田区高齢者C・九段坂病院(上)、4~5月に建設入札、6~7月着工


松本博之氏「5つの機能で医療・介護・元気を」、九段坂病院がリハ病棟を新設

2013/3/12

松本博之氏(左)と鳥飼達也氏
松本博之氏(左)と鳥飼達也氏
 (株)日本計画研究所主催の特別研究セミナーとして、「千代田区・国家公務員共済組合連合会『高齢者総合サポートセンター(仮称)建設計画』および『合築:新九段坂病院プロジェクト』の進捗と今後の展開」と題して講演が行われた。第1部は東京都千代田区保健福祉部長 松本博之氏の「高齢者総合サポートセンターの狙いと設計の特徴」、第2部は国家公務員共済組合連合会 九段坂病院事務次長 鳥飼達也氏の「新九段坂病院における機能と高齢者支援の取組み」の2部構成で、今回は第1部のセミナー内容を紹介する。
 松本氏は、(1)高齢者総合サポートセンターが目指していること、「5つの機能で医療・介護・元気を」、「九段坂病院との合築がもたらすもの」、(2)基本設計の概要(建築計画の特徴)の順で講演を進めた。
 高齢者総合サポートセンターは、(1)高齢者の様々な相談拠点、(2)在宅ケア(医療)の拠点(九段坂病院が担う)、(3)高齢者の活動拠点、(4)高齢者ケアに関する人材育成・研修拠点、(5)多世代交流拠点の機能を備え、また、社会福祉協議会の事務局やシルバー人材センターを併設する。
 昼間人口は80万人以上にのぼる千代田区であるが、住民は5万人ほど。区の高齢化率は20%程度で、前期高齢者、後期高齢者の比率はほぼ半分の5000人ずつを占め、このうち要介護認定は前期高齢者が181人であるのに対し、後期高齢者は1717人、と現状を説明。また、サービス別第1号被保険者1人あたりの給付指標では、特養ホーム、短期入所、訪問系サービスの利用は全国平均を上回り、特に訪問系は2倍以上と高い。療養病床は全国平均並み、有料老人ホームなど特定入所者介護サービスや通所系サービスは全国平均を下回る。リハビリ施設は1病院が備えるものの、介護系のリハビリ施設はゼロで、また、回復期リハビリテーション病棟もゼロとなっている。
 松本氏は、区として回復期リハビリ病棟の確保を目指したが、千代田区、文京区、中央区、港区、台東区で構成する東京都2次保健医療圏域「区中央圏域」は基準病床6208床に対し、既存病床数が1万3703床と2倍以上に達する大幅な過剰状態であるため、九段坂病院との合築に際し、病院が回復期リハビリ病棟を40床程度新設することで合意し、確保できることになったと背景を説明した。
 九段坂病院は、前出(2)在宅ケア(医療)の拠点の役割を担い、総合診療部門の新設(24時間365日の医療相談対応、緊急入院病床の確保、訪問診療などの在宅療養支援)および訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションを実施する。
 さらに、九段坂病院は地域医療の向上を果たす役割も期待されており、区民を対象とした24時間の初期救急の実施、回復期リハビリ病棟40床程度を新設しながら、急性期から回復期、さらに維持期という総合的・継続的なリハビリテーションを提供する。また、区内の診療所や医師会からの要請により検査や緊急時の入院受け入れなどに対応するとともに、大規模災害発生時には、負傷者等を積極的に受け入れて、医療対応を実施する方針だ。
 施設整備の手法については、建物の建築確認までに定期借地契約を締結(期間50年)、施設の設計と建設工事・工事監理は国家公務員共済組合連合会が契約主体となり、建物は区分所有し、区が必要とするスペース(高齢者総合サポートセンター)に応じた負担金を国家公務員共済組合連合会に支払う。既存建物の解体は区が実施することになっている。
 松本氏は、建物外観イメージ図や建物立面図、平面図を用いながら、基本設計の概要、建築計画の特徴へと話を進めた。
 合築施設は、千代田区九段南1-6-11(区役所旧庁舎の住居表示)の敷地3334m²(建ぺい率76%、容積率699%)を活用し、免震構造のRC造り地下1階(ないし地下2階)地上14階建て延べ2万3290m²の規模で建設、このうち高齢者総合サポートセンターが4610m²、九段坂病院が1万8580m²を占有する。地上高は59.8m。
 建物の地上4階までは、内堀通り側およびお堀側ともに5階以上の建物よりフロア面積を広く確保、お堀側は上部から見下ろすと地形に沿って三角形状に張り出している。
 高齢者サポートセンターは、1階に相談拠点(病院の在宅拠点と併設)、サロン・ホール(108席)、カフェ厨房、飲食・待合スペース、ラウンジなどを配置、4階は全フロアを使って会議室、交流コーナー、事務室、会議室、研修室1~3、活動室2~5、調理室、展示販売スペースなどを確保、5階に娯楽室1~3と活動室1、機能回復訓練室、休憩室、図書コーナー、浴室などを設ける。5階は病院のリハビリ施設と通所リハビリ施設も配置し、利用者はお堀側の4階屋上に整備する眺めの良いテラス・リハビリ庭園に出られる。
 高齢者サポートセンターでは、災害時に特別な配慮を必要とする高齢者を一時的に保護する「福祉避難所」を開設するほか、物資・器材(簡易ベッド、ポータブルトイレ、車いす、歩行器など)を備蓄し、さらに災害ボランティアセンターを設置してその活動拠点とする。
 建物の高断熱(屋根断熱、外壁断熱)、Low-Eガラスの採用、屋上緑化、壁面緑化、高効率給湯器(ジェネライト)の採用、全熱交換器の採用、太陽光発電、雨水利用(お堀の水源として利用)など、環境・温暖化対策として、建築面、設備面で配慮する。
 皇居外苑堀(内堀)は、都心の貴重な水辺空間となっているが、水質悪化が課題となっており、今回の合築施設の上下水道設備面での配慮だけでなく、東京都による合流式下水道の改善工事(15年度までに完了)など水質浄化の大規模な取り組みが行われている。また、建設地に近い牛ヶ淵では05年以降にヘイケボタルの生息記録があり、繁殖行動を妨げないよう近隣の建物に水辺方向に光を漏らさない対策が求められ、これを踏まえて合築施設ではホタルに配慮した照明を採用する。
 松本氏は、「設計が終盤に差しかかっており、建設工事の入札は4月から5月に行われ、6月ないし7月には着工したい」と話し、「施設は16年度中に竣工、15年度に開設する」とスケジュールを説明した。

(この稿続く)

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