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Report36

大津市民病院、関西初のベッドや調光フィルムの新ICU稼働


パラマウントのトータルリフトベッド導入で早期離床・早期回復へ

2019/3/26

新ICUの全景
新ICUの全景
関西初導入の「トータルリフトベッド」
関西初導入の「トータルリフトベッド」
 地方独立行政法人 市立大津市民病院(滋賀県大津市本宮2-9-9、Tel.077-522-4607)は、ICU(集中治療室)の全面改修・増床工事を行い、関西エリアで初となる立位のとれるベッド「トータルリフトベッド」を導入した新ICUを、11月1日より稼働している。トータルリフトベッドはパラマウントベッド(株)が取り扱う早期離床・早期回復を促すための電動ベッドで、より高度な早期リハビリテーションをサポートする機能が標準装備されており、近年、大きな問題となっているICU-AW(ICU関連筋力低下)の予防などに役立てる方針だ。

 同病院はこれまでICUを6床で運営してきたが、救急需要の増大、患者の高齢化に伴う重症化、患者や家族のニーズの増大に伴い、病床のニーズを満たせない状況があることから、今回、全面改修工事ならびに増床工事を実施した。

隔離用の陰圧室の様子
隔離用の陰圧室の様子
 同工事では病床数を6床から8床まで増床し、なおかつ個室を1床から4床まで増やしている。ICU内の空気清浄度はクラス1万で、4床の個室のうち、1床は隔離用の陰圧室となっており、同室のみトイレを備えている。

 
 
 
個室の様子
個室の様子
 個室内は、寝ている患者の目に直接光が当たらないように間接照明を採用。照明の色は患者の尿などを確認するため、青色の光を導入している。また、個室の窓には、凸版印刷(株)の調光フィルムをICUで初めて採用。この窓は次亜塩素酸で拭くことができるため、カーテンよりも清潔に保つことができ、調光機能を持つので隣室の患者の様子も確認することが可能だ。同室内の天井には、監視カメラも設置されている。

8台を導入したコラムシステム「プルゴ」
8台を導入したコラムシステム「プルゴ」
 さらに、工事前のICUには、壁沿いにウォールケアユニットを設けていたが、患者の挿管作業で邪魔になることから、新ICUではパラマウントベッドが取り扱うコラムシステム「プルゴ」を8台導入した。プルゴは酸素、空気、吸引といった医療ガスを供給するほか、ナースコールやLANのジャックも取り付けている。そのほか、新ICUには医師や看護師の机を備え、医局や休憩室を設けており、仮眠室(2室)やシャワー室も完備している。

 新しく導入されたトータルリフトベッド「T425型」は、ベッド仕様が全長(ニュートラル位置)218cm、最大伸縮幅30cm、全幅104cm、床面から床板までの高さ(低床時)46cm、床面から床板までの高さ(高床時)75.5cmとなっている。主にICUで使用される、早期離床・早期回復を促すための電動ベッドで、最大82度まで無段階で傾斜するチルト機構や、柔軟性のある素材で患者を支えるストラップシステムを備え、ベッド上に寝た状態のまま、安全に起立訓練を行うことができる。

 また、体重・重力負荷量のリアルタイム測定・表示機能や、床ずれ防止に役立つ湿潤管理機能付き連動エアマットレスなど、より高度な早期リハビリテーションをサポートする機能が標準装備されている。同ベッドは、主に人工呼吸器を装着している患者や、ICU-AWで不動状態の患者を利用対象として考えているという。

 近年、ICUにおいて重症患者の救命は相当高いレベルで達成されるようになったが、「命は助かったが運動機能、認知機能や精神機能が著しく低下する」という、ICU-AWが大きな問題となっている。ICU-AWは年間で20~30例、重症化するのも年間で数例が報告されており、患者によっては永続的に障害を残すとされ、ICU関連医学会では近年、最大のテーマとして扱われている。この予防や回復への最大のカギは早期離床、早期リハビリであり、同病院でもICU専属の理学療法士を配置するなどの施策を講じており、今回のトータルリフトベッドもその一環である。

 なお、同病院では11月1日より許可病床数を439床に変更しており、一般431床(緩和ケア20床、救急22床、ICU 8床ほか)、感染症8床(1種2床、2種6床)という内訳になった。

(岡田光記者)

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