(株)インベストメントブリッジ(東京都文京区)主催の、メディカル・ケア・サービス(株)(さいたま市大宮区大成町1-246、Tel.048-651-6700、名証セントレックス上場)による「ブリッジセミナー」(個人投資家向け会社説明会)が2月6日に開催された。説明会では、認知症高齢者向けグループホーム(GH)「愛の家」を主力に急成長を続けるメディカル・ケア・サービス(MCS)の執行役員の丸山和雄氏が、(1)市場動向と介護業界、(2)MCSの会社概要と特徴、さらに、(3)国内での施設計画、訪問系サービスの事業開始、海外事業といった今後の事業計画の順で詳説した。
65歳以上の高齢者人口は3074万人(2012年9月16日現在)で、このうち約1割の305万人が認知症高齢者であり、2025年にはこれが470万人に達すると予想されている。要介護認定者数(うち認知症高齢者数)の推移は、10年が487万人(280万人)、15年予測568万人(345万人)、25年予測702万人(470万人)と、高齢化の進展で要介護認定者数および認知症高齢者数の増加は続く。その一方で、少子化が進み、生産年齢人口(15~64歳)に対する高齢者の割合は、2010年が3人に1人、2030年が2人で1人、2050年には1人で1人となる。
介護保険サービスは、居住系では介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設のほか、MCSが主力とする認知症対応型共同生活介護(以下グループホーム)およびMCSが施設を増やしつつある特定施設入居者生活介護(介護付有料老人ホーム)に大別される。在宅系サービスでは、通所介護(デイサービス)、短期入所(ショートステイ)、訪問介護(ホームヘルパー)、小規模多機能型居宅介護および認知症対応型通所介護に分類される。
主力のグループホームでは、厚生労働省が12年の17万人分から17年に25万人分まで増設を促進する。ちなみに、12年の認知症高齢者(305万人)と17年の同予想(373万人)の居場所別内訳は、在宅介護が12年149万人・17年186万人、このうち小規模多機能型居宅介護が5万人・14万人、24時間定期巡回・随時対応サービスゼロ・3万人。居住系サービスは28万人・44万人で、このうち特定施設入居者生活介護が11万人・19万人、グループホーム(再掲)17万人・25万人。
一方の介護施設は89万人・105万人で、うち介護老人福祉施設48万人・58万人、介護老人保健施設等(介護療養型含む)41万人・46万人、医療機関が38万人・38万人となっている。
メディカル・ケア・サービス(高橋誠一代表取締役会長兼社長)は、1999年11月24日に設立、06年8月22日に株式上場を果たした。資本金8億7125万円で、三光ソフランホールディングス(株)が株式の60.5%を保有している。施設運営の地域子会社10社や食材提供会社などを傘下に、従業員3800人(連結)を擁し、運営する介護施設・事業所数(2月1日時点)は、グループホーム185棟(3554室)、介護付き有料老人ホーム6棟(453室)、住宅型有料老人ホーム1棟、小規模多機能型居宅介護5カ所、デイサービス1カ所、居宅介護支援事業所2カ所。子会社には、事務アウトソースおよび清掃・事務業務のMCSハートフル(株)(障害者雇用促進:特例子会社)、福祉用具販売・レンタルの(株)ケアスター、食材管理・献立提供のグリーンフード(株)がある。
事業所(棟数)の分布は、北海道10、宮城5、福島県4、東京都15、神奈川県13、本拠地の埼玉県33、千葉県15、山梨県5、長野県4、新潟県7、福井県2、静岡県9、岐阜県24、愛知県12、三重県7、大阪府4、兵庫県5、京都府1、奈良県2、岡山県1、山口県1、香川県2、高知県2、福岡県1、熊本県1で、首都圏4県で計76、東海4県が計52となっている。
MCSでは、全国のグループホーム公募案件情報をいち早くキャッチする情報収集力、グループホーム公募を通過するための市町村に対する運営実績、サブリース方式(土地・建物オーナーからの施設一括借上)により、全国にグループホームを建設できる信用力を背景に、人口10万人以上を1つの商圏として年間15~20棟の展開を続けている。
グループホームの入居率は97%台を維持し、その収益モデル(埼玉モデルケース)では、1人あたり月39万円、2ユニット(定員18人)の売上総利益率は15%、4カ月目で満室・黒字化をモデルとする。5カ月目以降は、保険売上450万円以上、利用料売上220万円以上、570万円ほどの経費を差し引いた毎月の収支は100万円を目安とする。
また、これまでにM&Aにより16事業者から継承したグループホーム43施設はすべて黒字化を達成しており、これもまた信頼度を高めている。12年8月期の業績は売上高14.8%増の161億3800万円、営業利益1.9%減の8億9100万円、経常利益15.7%増の13億5000万円、純利益9.5%増の6億6600万円となっている。
今期以降の事業計画では、グループホームにおいては、年間20棟以上の継続的開発を進め、13年8月期には累計200棟を目指す。グループホーム数の推移は09年8月期100(うちM&A31)、10年8月期126(35)、11年8月期147(35)、12年8月177(43)。
グループホームの開発を進めるに当たって、利用者や行政からのニーズが高い小規模多機能居宅介護を併設した事業モデルの確立に取り組む。この併設モデルは現在、練馬西大泉(開設11年11月)、中野上高田(12年4月)、大阪松(12年5月)、小平上水南(12年9月)、浜松富塚(12年9月)の5カ所にある。
介護付有料老人ホームは、大都市圏で年間1~2棟の開発を進め、13年8月期は2棟増の計7棟となる。介護付有料老人ホームには、アンサンブル大宮(さいたま市大宮区)、12年10月にオープンした県下最大級の同ホームであるアンサンブル大宮日進(さいたま市北区、150室)、5月1日オープン予定のアンサンブル浦和(さいたま市緑区、77室)、ファミニュー石神井(東京都練馬区)、ファミニュー墨田文花(東京都墨田区)、ファミニュー大森南(東京都大田区)などがある。
新規事業では、社会的意義の向上(認知症介護に対する情報発信、認知症分野のネットワーク構築)と収益的効果(福祉用具販売、広告販売)の両側面から、WEB事業(認知症ポータル事業)に本格的に注力する。
また、独居高齢者、夫婦高齢者世帯の増加と、国の在宅誘導政策を受けて、訪問介護事業を今期から開始する。第1号事業所は、さいたま市大宮区で3月1日に開設。まずはスロースタートで実績・ノウハウを構築しながら、慎重に事業を展開し、グループホーム事業に続くコア事業として確立する考えだ。訪問介護事業への参入には、在宅から居住サービスへの導線確保(潜在利用者の早期囲い込み)、職員のキャリアパスの多様化(新たなマネジメント職の確保)、日中のみ勤務可の職員への対応(勤務形態変更職員の雇用確保)、海外への輸出ノウハウの構築(中国への事業進出へ活用)といった狙いもある。
これらの事業に、グループ会社が運営する往診、訪問看護、訪問歯科、調剤などの医療サービス事業と連携することで介護保険報酬以外の収益基盤を強化するとともに、高齢者がどのような状態になっても住み慣れた地域で安心して生活を続けられるインフラ整備を目指す。
こうした一連の事業により、WEB事業による介護認定前からのサポートから、介護認定後の軽度の高齢者への訪問介護(在宅事業)、これまでのグループホーム・小規模多機能、介護付有料老人ホームの対象である中~重度高齢者から、医療サービスが必要な患者までサービス事業を拡大し、トータルサポートが可能なサービスラインアップを社内にて備える。
さらに、経済成長が続く新興国向けに、介護先進国として大きな優位性を保有する分野で、チャイナリスクを踏まえて慎重に準備しながら、まずは中国へ進出する方針。高齢者マンション運営サービス事業、(日本式)介護生活支援事業、介護施設運営受託事業の展開を図る。
13年8月期の業績予想は、売上高が185億円、営業利益8億5000万円、経常利益12億円、純利益5億8000万円。