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国際協力銀行、国内製造業の海外事業動向調査を報告、尖閣・竹島問題の影響も調査


2013/1/15

 (株)国際協力銀行(東京都千代田区大手町1-4-1、Tel.03-5218-3100)は、わが国製造業企業の海外事業展開の動向に関するアンケート調査を実施し、結果を発表した。この調査は、海外事業に実績のある日本の製造業企業の海外事業展開の状況や課題、今後の展望を把握する目的で1989年から実施しており、今回で24回目となる。
 今回の調査は、2012年7月に調査票を発送し、7月から9月にかけて回収したもので、調査対象企業数は1011社、有効回答数は613社、有効回答率は60.6%となっている。また、12年8月以降の近隣諸国を巡る情勢変化の影響を分析するため、インターネットを活用し、今回の調査で回答のあった企業を対象に、12年11月5日から20日にかけて、中国、台湾および韓国事業などへの影響に関して追加アンケート調査を実施した(対象企業数613社、有効回答数327社、有効回答率53.3%)。
 まず、この調査では、例年質問している「中期的海外事業展開見通し」や「海外事業展開実績評価」、「有望事業展開先国・地域」などに加え、個別テーマとして、「海外現地法人の経営管理に係る現状と課題」、「グローバル市場における競合状況と競争力向上の取組み」についても分析を行った。また、追加調査においては、これらの情勢変化を踏まえ、「中国、台湾および韓国事業への影響」、「中国事業に係る現状および今後の具体的影響」、「中華系顧客の行動の変化」、「有望事業展開先国・地域の変化」、「中国事業への取組み姿勢の変化」および「中国事業の販売水準」について質問した。
 この調査によると、わが国製造業企業の海外事業展開は、中期的に強化・拡大される方向にあるが、足元では足踏み状態が見られる。また、国内事業の縮小姿勢が自動車、電機・電子を中心に強まった。海外事業を強化・拡大するとした企業の約8割は国内事業も維持・拡大するとしており、回答企業の4社中3社が国内雇用も維持・拡大するとしているものの、国内雇用は縮小すると回答した企業も一部に見られた。また、労働コストの上昇、電力供給見通しの悪化、円高の進行は国内事業の強化・拡大に対しブレーキとなることが示された。
 11年度の海外事業実績評価については、売上高・収益満足度が円高や競合激化などにより、リーマンショック後初めて低下しただけでなく、収益満足度については全地域、全業種で当初見込みを下回った。中期的な有望事業展開先国については、中国が有望国として引き続き第1位を確保したものの得票数は減少した。一方、市場が急拡大するインドネシアが3位に上昇し、新しくメキシコとミャンマーが10位以内に入った。中国への事業拡大姿勢に一服感が出る中、わが国製造業企業の有望事業展開先国の関心がより新たな市場へ向きつつある。
 回答企業の約3割がグローバルな人事制度導入に関心を持つものの、導入済み企業はわずかとなった。しかし、わが国製造業企業は拡大する海外事業に対応するため、生産、販売を中心に現地人材の活用を積極的に推進している。日本からの調達額の見通しについては見方が分かれているが、中期的な現地調達率については、回答企業の約65%が今後もさらに上昇するとしている。また、回答企業の3社中2社が、海外現地法人からの利益が、今後、国内研究開発や設備投資を含め重要な資金ソースになると認識している。わが国製造業企業は海外事業拡大のため、海外の人材や部品・材料を益々活用する方向にあるが、同時に海外事業を通じて得た資金が国内事業に果たす役割も大きくなる見通しであることが示された。海外事業への取組みは国内事業にとっても重要度が高まっていると言えよう。
 わが国製造業企業は、アジア新興国市場での中国・韓国・台湾系企業の競争力について、製品開発力と製造技術は自社が上回るものの、販売力と経営スピードの差は埋まらず、欧米系企業については、全項目で自社を上回る手強い相手と認識していることが示された。わが国製造業企業の多くは価格競争力を弱みとするものの、高品質・高機能品を製造するノウハウやブランド力、アフターサービスを強みとする自己評価の下、アジア新興国市場のシェア拡大策として、高品質化・高機能化やブランド力強化が効果的と認識し、品質・ブランド・サービスなどによる差別化で、今後も競争優位を築く戦略であり、低コスト化を志向する企業は、自動車、電機・電子の一部に限られた。また、競争優位を築くにあたり、地場企業をはじめとした他の企業との連携を模索する企業は約3割にとどまることが示された。新興国企業との競合が世界的に激化する中、販売力や経営スピードにおいて競合先企業と大きく差が開いた現状を鑑みれば、自らの強みを活かすだけでなく、競合先企業の強みの取り込みや自社の弱みの軽減努力の実施、または自社の弱みを補完する他企業との連携の推進も一考に値しよう。
 追加調査では、竹島、尖閣諸島を巡る情勢変化を踏まえ、台湾事業、韓国事業についてはそれぞれ回答企業の約84%が特に影響はないと見ているが、中国事業については自動車関連を中心に回答企業の約65%がマイナスの影響を受けたと認識している。2年前に実施した中国事業に関する同様の設問において「影響を受けた」と回答した企業の割合が約23%であったことを踏まえれば、わが国製造業企業は、今回の情勢変化が中国事業に対してより大きな影響を及ぼしたと認識していることが示された。
 回答企業の多くが、今まで受けた具体的な影響として、取引先の被害、日本品不買運動などによる生産・販売への影響あるいは出張などの自粛による業務全般への影響を挙げ、今後も生産・販売への影響が継続すると見ている。また、回答企業の約53%は、現時点の販売水準が情勢変化の前よりも低下していると回答し、半年後の販売水準についても、回答企業の約51%が、情勢変化前には戻らないと見ていることが示された。
 中期的な有望事業展開先国としての中国の評価については、12年7月実施アンケートの結果よりも低下したと考える回答企業が半数近くとなり、有望事業展開先国の得票率では、第2位のインドとの差がさらに縮小したものの、引き続き第1位を確保した。他方、インドネシア、メキシコ、タイなどを有望事業展開先国とする回答社数も増加した。
 今後の中国事業への取組みに係る意識変化に関しては、回答企業の6割強が「見直し」、または「慎重な対応が必要」と感じているが、その4社中3社が、「中国事業への取組みは今後も続けるが、他国・地域へのリスク分散が重要と認識している」と回答。また、他国・地域における取組みを強化すると回答した13社は、主に「追加・更新投資の縮小・削減による規模の縮小」により 「中国事業・市場への依存度を下げるなど見直しを行う」方針であり、「中国市場から完全撤退」するとの回答は皆無であった。わが国製造業企業は、今後も、リスク分散を図りつつ、より慎重に中国事業に取り組む姿勢であると読み取れる。





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