日本政策投資銀行は、2025年度設備投資計画調査をまとめた。これによると大企業(資本金10億円以上)の2025年度の設備投資は前年比14.3%増となり、計画時点としては4年ぶりに20%を下回ったものの、米国の関税強化など先行き不透明感がある中でも2桁増を維持する。
24年度の設備投資は、計画時点の21.6%増からは下方修正されたものの、通信・情報のAI計算基盤構築や自動車の電動化投資などにより、10.5%増と3年連続で増加した。非製造業は12.6%増とバブル期を超える高い伸びとなった。また、製造業も前年の12.8%増の高い伸びからは鈍化したものの、6.1%増と4年連続で増加した。
25年度製造業は、自動車による電動化投資の継続や、素材業種を中心とした脱炭素投資により、21.0%増の高い伸びが継続。一方、非製造業は前年度の伸びが高かったこともあり、11.3%増に減速する。
24年度の国内設備投資が当初計画を下回った要因として、「工期の遅れ」の割合が高止まりしたほか、「工事費高騰に伴う見直し」も上昇した。一方で、「確度の低かった投資の剥落」の割合が低下し、「投資内容の精査、無駄の見直し」が上昇したことから、前年と比べ投資が精緻に計画・実行された可能性がある。当初計画を下回った要因のうち、コロナ禍で人手不足が深刻化したこともあり、「工期の遅れ」の割合は22年度に急上昇したが、足元では緩やかに低下。一方で、インフレ長期化に伴い、「工事費高騰に伴う見直し」の割合が近年大きく上昇した。
企業が投資を一部見送った場合の対応策について、米国の関税強化など先行き不透明感が広がる中でも、前年に続き7割以上の企業が計画の維持と回答。25年度の投資計画を押し下げる要因は、24年度実績が当初計画を下回った要因と同様、「工期の遅れ」のほか、非製造業を中心に「工事費高騰に伴う見直し」の割合が高い。また、製造業では、国内・海外景気の減速を懸念する企業が一定数見られた。
25年度製造業では、半導体や電動化関連を中心に、素材業種や自動車などで増設・拡張投資が継続する。また、鉄鋼の電磁鋼板増産や電炉新設、石油のSAFなど次世代燃料増産など脱炭素関連の高度化・高付加価値化投資も見込まれる。AI需要増に伴い、データセンター向け投資が増加するほか、幅広い業種で人手不足対応の自動化投資が見込まれる。
非製造業では、運輸業を中心に、インバウンド需要の増加を受け、空港機能の増強に加えて、新型航空機・車両の購入が増加するほか、駅周辺・都心再開発も継続する。
米国の関税強化に対して、多くの企業が影響精査中。一方で、米国への輸出比率が高い加工業種では、競争力の高い一般機械を中心に「米国での販売価格引き上げ」の割合が高い。また、加工業種の一部に「不確実性による投資先送り」の動きがみられるが、全体的にサプライチェーン変更などの動きは限定的であり、米国の関税強化の影響はまだ顕在化していない。
米国の関税強化を受けて、中国の生産・輸出拠点を縮小する動きが広くみられた一方で、日本のほか、東南アジア、インドなどの拡大超が顕著に。米国は拡大、縮小する企業ともに多くみられた。
米国の関税強化を受けて中国の生産・輸出拠点を縮小すると回答した大企業および中堅企業は、日本をはじめ、米国のほか、ベトナム・タイなど東南アジア諸国、インドを生産・輸出拠点として重点的に強化する方針。また、中国拠点を縮小する企業で、「海外拠点の国内回帰」や「海外仕入れ調達先の国内への切り替え」の動きが一部に見られる。「需要地での事業拡大」や「海外拠点の一層の分散・多様化」を回答する割合も高く、サプライチェーンの多様化に積極的な傾向がある。
24年度の海外設備投資(連結ベース)は前年比8.2%増となり、伸びが鈍化した。地域別では、中国、中国除くアジアが減少したものの、北米が幅広い業種で増加し2桁増となったほか、欧州やその他地域も大きく増加した。
25年度の海外設備投資計画は2.2%増と3年連続で伸びが鈍化する。北米では自動車が増加するが、ここ数年の高い伸びからの反動もあり、化学、鉱業、不動産を中心に減少する。中国では、成長鈍化や米中貿易摩擦への懸念などから、前年度に続き減少する。一方で、不動産を中心に欧州が増加するほか、中国除くアジアは自動車に加え、内需の取り込みに向けた不動産、化学などの増加により2桁増となる。
25年度は、国内設備投資が2桁増を維持した一方で、海外設備投資の伸びは大きく鈍化し1桁台にとどまった。その結果、海外設備投資比率の低下が続く見込み。業種別に海外投資比率をみると、非製造業は不動産を中心に上下する一方で、海外投資の大宗を占める製造業は、近年幅広い業種で低下傾向にある。