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名市大病院、救急・災害医療センター新築、延べ2.8万m²の設計委託へ(1)


救急車アクセス最短19秒、最大14台受け入れ可能、災害時は408床の増床実現

2020/11/17

救急・災害医療センター建設予定地
救急・災害医療センター建設予定地
 名古屋市立大学(名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1、Tel.052-858-7546=医学・病院管理部事務課施設管理係)は、(仮称)名市大病院救急・災害医療センター新築の設計を委託する公募型プロポーザルを実施し、優先交渉権者に(株)山下設計を選定した。同時に実施したコンストラクション・マネジメント(CM)業務委託の公募型プロポーザルでは、7月13日にプレゼンテーションを行った。

 設計の業務には、センターの新築および既存建物改修の基本設計、実施設計(建築・設備)を含み、業務委託費は6億4339万9900円(税込み)。CM業務の委託費は9014万5000円(税込み)で、いずれも、履行期間は2022年2月28日まで。

 このほか、同大学(Tel.052-858-7520=医学・病院管理部事務課施設管理係)では、(仮称)救急・災害医療センター運営計画等策定支援業務の入札後資格確認型一般競争入札を行い、7月9日に開札した。業務は、運営計画、医療機器整備計画、経営計画などの策定支援業務で構成し、履行期間は契約締結日から22年2月28日まで。予定価格は非公表としていた。

 救急・災害医療センターは、免震構造のRCまたはSまたはSRC造り地下1階地上8階建て延べ約2万7600m²(渡り廊下、地下連絡通路除く、全体敷地面積6万5170m²)の救急・災害医療センターの新築のほか、渡り廊下(外来診療棟との接続地下1階~地上4階、病棟・中央診療棟との接続5階)、ヘリポートや地下鉄との地下連絡通路を整備するとともに、既存棟改修として、病棟・中央診療棟(機能移転による室内改修約5500m²、既存不適格)、外来診療棟(渡り廊下接続に伴う接続部分改修、既存不適格含む)、医学部研究棟(既存エネルギーセンターとのエネルギー分担および接続)、さらに外構工事として、地中内旧病棟地下部分などの取り壊し、工事に伴う樹木撤去および仮設通路工事、付帯設備工事、駐車場整備事業などを含む。

 スケジュールは、20~21年度に基本・実施設計、駐車場整備事業、22~24年度に救急・災害医療センター工事、25年度以降に開院および既存棟改修工事を進める。

 山下設計が提案した設計概要によると、課題提案書1「断らない救急を実現する直線動線と大容量平面」では、瑞穂通から救急車はスロープで2階を目指し、19秒という最短アクセスでの到着が可能で、また日本一の救急ヤード(救急車最大14台可能)を備え、さらに南北方向に将来的に拡張が可能である。

 この2階救急フロアは、正方形の平面計画で、初療から画像診断、処置・手術まで順番に一方向に移動する回廊型ERホールとして整備する。回廊型ERには、感染入り口、風除け、熱傷汚染、器材室、救急ワークステーション、救急外来、待合、ハイブリッドERの初療エリア、器材室、観察室、CSS、SC、診療室、画像診断(心カテ、アンギオ、CT、MRI、一般撮影)、検査、家族控室などを配置。

 また、救急フロア~屋上へリポート~手術フロアを結ぶ救急用エレベーターは、特注で大型サイズの採用を計画している。内部にカウンタショック、人工心肺、ICUベッド、データスコープなどの医療機器、付き添いスペースのほか、状況に応じてストレッチャー2台の同時搬送も検討する。このほか、感染疑いの患者は専用の入り口から2階の感染室へ誘導する。

 課題提案書2「災害時においても日常の延長として活動可能な災害対応力の高い『さくらひろば』」では、柔軟性:災害時の機能転換が容易なつくり、継続性:災害時にも本来の医療機能を保持、即時性:素早く、災害時モードへ機能転換を実現することを掲げる。1階の屋外『さくらひろば』と建物1階ピロティを合わせた1250m²のスペースはトリアージ空間として活用するほか、屋外には炊き出しに活用できる焚火ベンチ、仮設テントを設置できるパーゴラ、災害時に使えるトイレ用マンホールを整備する。「パンデミック発生時の機能転換」として、隣接する駐車場に仮設感染病棟、隔離スペース(陰性発熱対応)を設け、「大規模火災・交通災害時の機能転換」では、軽症者の救護用65床を設置可能とする。

 建物1階部分は、大ホール、小ホール、ホワイエ、会議室(災害時にDMAT室)、DMAT倉庫、収益施設、プロムナードを配置し、大ホールはユーティリティを備え、130床の病棟に変更が可能である。この1階130床と、2階の救急外来の仮設ベッドスペース化(ベンチベッド化)で24床、さらに、感染外来に仮設ベッド8床を確保し、1~2階で最大162床を確保する。また、医療ガスコンソール、非常電源、災害用の清・汚ユーティリティを整備しておく。

 「災害時ノンダウン病院」として、上水は、井水ろ過を検討、飲料水はペットボトルを備蓄。排水の確保では、地下ピットの湧水槽を排水槽に転用、空調は非常用発電機で電気供給する個別熱源空調方式の採用、電力は電源2系統引き込み、備蓄液体燃料による非常用発電機の設置(施設機能100%×5日間)。医療ガスは、ポータブルの医療ガスボンベ(N、N2など)を備蓄(大ホール・シミュレーター室などに設置)、食事は、非常用LPG対応装置と電気による加熱5日分の非常食の貯蔵スペースを確保、通信は、地上通信網が途絶えても通信可能な衛星通信を利用したネットワーク構築を検討、医療機器では、ディスポーザル医療機器を備蓄する。

 地下1階は、薬剤庫、物品庫、機械室を配置、災害時などには、エントランスホールを一時避難スペース(帰宅困難対応)として活用する。

 3階の救急病棟(20床、うち感染2床)・一般病棟(20床)・透析(10室)は、災害時に一般病室(個室)を2床化したうえ、仮設ベッド10床を含め計50床、救急ベッドを感染病床化し、仮設ベッドを含め計30床に転換し、計80床とする。4階は、手術部門(一部感染対策手術室)。


 5階のEICUとCCU計14床は、災害時に個室を2床化し、仮設ベッドを含め計28床に、ICU・PICU10床は、災害時に感染病床化し、仮設ベッドを含め20床とし、災害時には計48床となる。6階のMFICU、NICU、GCUの計50床は、災害時も変更しない。

 7階は、通常時の模擬病室、シミュレーター室、模擬診察室を、災害時には、模擬病室を感染病床化し仮設ベッド含め66床、シミュレーター室に仮設ベッド75床、計141床、8階の講義室・会議室・研修室・シミュレーター室は、災害時にはシミュレーター室に仮設ベッド45床を設置し、会議室を災害対策本部化する。

 なお、同大学(Tel.052-858-7545=医学・病院管理部経営課契約調達係)は、全身用X線コンピュータ断層撮影装置1式およびNICU患者情報システム1式の各一般競争入札を公示し、いずれも7月13日に確認申請書などの提出を締め切った。それぞれ、入札書の提出期限は8月18日、開札は8月19日で、履行期間は21年2月28日まで。また、da Vinci Xi サージカルシステム初度調弁2 3DメディカルHDレコーダーほか1式およびda Vinci Xi サージカルシステム初度調弁1 モノポーラカーブドシザーズほか1式の入札を7月27日に終えた。納期は21年2月28日。

 同病院は、病床808床(一般772床、精神36床)を運営、13年度の1日外来患者数は1846人、入院患者数は660.5人(病床利用率83.2%)。平均在院日数は14.2日で、手術件数は6901件。

(編集長 倉知良次)
(この稿続く)

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