※前週の続き
―― 「RAYARD Hisaya-odori Park」の開発における狙いは。
鈴木 ここ数年、名古屋駅地区は開発が進んだ一方で、栄地区は少し賑わいが衰え、久屋大通も大きな賑わいはなかった。名古屋市は将来的に栄地区、名古屋駅地区、名古屋城地区の回遊や経済の連携を構想している。栄地区では大型開発が進みつつあり、エリアを再び盛り上げる起爆剤となるべく久屋大通の再整備に至った。
―― 約1kmとかなり長い範囲ですね。
「RAYARD Hisaya-odori Park」
鈴木 公園を4つのゾーンに分け、それぞれのコンセプトに合わせて公園の整備や店舗の誘致を進めた。テレビ塔がある一番南側は、栄など繁華街が近く、観光客も多いので、海外のファッションブランドなどを誘致した。ここには新しいシンボルとして約80mの水盤も整備した。そのほかにも大型芝生広場があるゾーン、そぞろ歩きを楽しめるゾーン、大型サイネージがあってイベント広場としても使えるゾーンなどを設けた。
―― 公園の風景はかなり変わりましたね。
鈴木 以前は芝生も少なく、樹木が密集していて日が当たらない場所もあった。そこで公園の中心部に開放的な広場などを整備し、公園の両サイドに店舗を整備した。地元の方も変わりように驚いているそうだ。
―― 各店が公園ならではの取り組みを進めています。
鈴木 「スノーピーク」にはキャンプ用品を広場に出してもらっており、「T4 NAGOYA」には卓球台を外に出してもらい、屋外で卓球ができるようになっている。樹木を多く残したエリアでは「PEANUTS Cafe」など上質な飲食店を複数配置して、緑があふれる環境で食事を楽しめるようにした。一番北側の広場では、テントやハンモックを貸し出し、9月の4連休には多くの人に利用いただいて、足りなくなるほどだった。このエリアにはBOOK&CAFEの「天狼院書店」が出店しており、ライフスタイルを発信するようなイベントを行ってくれるだろう。
―― 改めて公園+商業の面白さは。
松本 公園は本当に色々な人たちが訪れる。もともと買い物が目的でなくとも、たまたま併設する商業施設が目について利用していただけることもあるだろう。我々の施設を見ていただくきっかけになるし、これまでと違う客層、年代と接点ができる。また商業施設単独だとある程度、年齢などターゲットを設定するが、人は年齢を重ねるのでいずれターゲットから外れていく。公園との複合なら長く使っていただける。
―― 貴社として初めての公園と商業施設の複合開発でしたが。
松本 商業施設とともに公園整備も行ったが、公園整備にマニュアルはないので、自治体と試行錯誤しながら作り上げていった。オープンした後も、思いもよらぬ使い方を目にして勉強になる。今後は商業施設と公園をミックスしたイベントなど様々な取り組みを進めたい。チャンスがあれば新しいRAYARDの開発を進めていきたい。
(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2366号(2020年10月13日)(2面)
三井不動産に聞く 公園+商業施設のポテンシャル