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日本政策投資銀行、20年度大企業国内設備投資は全産業で3.9%増、着地は9年ぶりの減少か
2020/9/1
(株)日本政策投資銀行は、2019・2020・2021年度設備投資計画調査をまとめた。これによると大企業(資本金10億円以上)の20年度国内設備投資計画額は、製造業を中心に全産業で3.9%増となるが、近年の本調査における計画から実績にかけての下方修正の傾向を踏まえると、着地は9年ぶりの減少となる公算が大きい。
19年度国内設備投資額は、自動車の次世代技術開発に向けた投資や都市機能拡充に向けた投資が底堅く推移し、全産業で1.9%増と8年連続の増加となった。
20年度計画は、自動車の次世代技術開発に向けた投資が続くほか、デジタル化需要拡大に向けた投資が増加するが、新型コロナウイルス感染症発生による下押し圧力が広範に及ぶ。
20年度の国内設備投資の業種別動向は、製造業(8.1%増、寄与度3.0%)は、化学や非鉄金属、電気機械などで自動車の次世代技術開発に向けた投資が継続するほか、デジタル化需要拡大に向けた投資も増加する。
非製造業(1.4%増、寄与度0.9%)は、電力の維持更新投資に加え、通信・情報でデジタルインフラ整備に向けた投資が増加するが、新型コロナによる下押し圧力が広範に及び、運輸や不動産、小売が減少する。
海外設備投資は、全産業で3.6%減と2年連続で減少する。欧州向け(6.3%増)で、新型コロナを受けた今後の医薬品需要増をにらんだ投資が増加するが、北米向け(5.6%減)が輸送用機械を中心に減少する。
企業行動に関する意識調査では、新型コロナによる事業への影響とともに、有形固定資産投資や情報化投資、研究開発などを含めた、企業にとっての「広義の投資」の取り組みについて引き続き調査を行った。情報化投資では、AI、IoTを活用しているとの割合が19年から高まったが、専門人材の不足感は高まっている。研究開発では、オープンイノベーションなどの活用が増加しているとの回答は3割程度と昨年から小幅に減少したが、新型コロナを受けても大きな変化はみられていない。研究効率改善に向けては、AIなどのデジタル技術活用への期待もみられた。人手不足の状況は、新型コロナを受けてやや緩和したが、中期的には再び人手不足が深刻化に向かうとの見方が多い。
新型コロナの事業への影響については、9割の企業がマイナスの影響があると回答し、うち3割が過去最大のマイナスの影響と回答した。マイナスの影響の内容として、8割程度の企業が国内需要の減少と回答し、製造業では、海外需要の減少との回答も多くみられた。
新型コロナ感染拡大の影響を受けて、3割の企業が設備投資を見送ったと回答した。他方、見送った企業の8割は今後事態が収束すれば見送った投資を実行に移す可能性があると回答した。
感染拡大前の売上水準への回復時期は、21年上期との回答が3割程度と一番多いが、見方は分かれており、回復が見通せないとの回答も目立った。
新型コロナを受けた製品やサービスの中長期的な需要見通しとしては、6割の企業が不変と回答したが、3割超は需要が減少すると回答した。
新型コロナを契機として、5割の企業が事業の見直しが必要と回答した。また事業の見直しに向けた取り組みとしては、5割の企業が新たな製品やサービスの提供が必要と回答し、3割超の企業が非接触型など、サービスのデジタル化への移行が必要と回答した。
新型コロナを受けたサプライチェーン見直しの内容として、製造業では、4割の企業が海外の仕入調達先の分散、多様化と回答し、次いで製品や部品の標準化・規格化との回答が多くなった。
新型コロナの感染拡大により、7割超の企業がリモートワークなどの未整備が事業の制約になったと回答した。リモートワークなどの導入、整備においては、6割程度の企業が情報機器の不足や通信インフラの問題が障害になったと回答した。また取引先との関係や社内風土などが障害になるとの回答は多くない一方、5割程度の企業が既存の業務プロセスが制約になったと回答した。