(株)産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉
米国でシェールガス革命が巻き起こっている一方で、日本列島はいまや、ときならぬメガソーラー(大規模太陽光発電所)ブームに沸いている。なんといっても政府が1kW当たり42円で買い取る、というとんでもないばか高い価格を設定したことで、新規参入の発電事業者がめちゃめちゃに増えているのだ。メガソーラーの建設候補地は2011年秋の時点では約150カ所であったが、買い取り価格42円が確定した時点で「こいつは儲かるぜ」とばかりにすさまじい勢いで発電事業者が増え、現状では候補地はほぼ倍増の260カ所にも達している。
環境エネルギー産業情報(産業タイムズ社刊)によれば、日本国内に予定されるメガソーラー建設候補地260カ所の敷地面積を合計すれば、3227ヘクタールに達する。ところが、である。これらの候補地すべてにメガソーラーが設置されたと仮定し、発電容量を計算すれば1291MWとなる。260カ所にメガソーラーをガンガン建設したとしても、出力はわずか39万件の家庭の電力をまかなえるだけなのだ。もう少しわかりやすくいえば、これだけのことをやってもようやく原発1基分のエネルギーしか確保できないのだ。
それでも、メガソーラー建設のニュースは毎日のように記事になっている。2012年9月14日には岡山県に国内最大級の25万kWというメガソーラー建設が決まったことがアナウンスされた。事業主体は日本IBM、NTT西日本、東洋エンジニアリング、ゴールドマンサックス証券など7社であり、実に総事業費は650億円を投入し、塩田跡地の400ヘクタールに建設することになり、2013年3月までに具体的な基本計画が策定される。ちなみに、太陽光発電では日照時間や日照の強さが問題となるが、岡山県は日照時間が長いことでは日本一の県であり、ここに国内最大のメガソーラーが設けられるのもリーズナブルといえるだろう。
太陽光発電導入に積極的なドイツ、イタリアなどヨーロッパ諸国に比べ、日本政府が決めた太陽光発電の買い取り価格42円というのは、とんでもなく高い。これを狙いに外資系企業が鵜の目鷹の目で日本国内にメガソーラー進出を考えている。米国のサンエジソンは、約4000億円を投じ日本国内数カ所にメガソーラーを建設すべく、用地物色を行っている。カナダのカナディアンソーラーは太陽電池そのものを作る大手メーカーであるが、こちらもサンエジソンと同じく3000億円以上を投じ、日本国内へのメガソーラー設置を計画している。さらには、中国のスカイソーラー、インドのモーザーベアなどアジア勢も日本国内に大規模な土地を数カ所物色しているといわれる。これだけをみれば、日本国内に大規模な外資の投資が実行されるわけだから、それなりの経済効果があるという向きもある。しかし、見方を変えればまさにハゲタカ外資の食い物にされているともいえるのだ。
「東日本大震災および福島第1原発の事故以降、国民感情は極めて原発に対しアレルギー反応を強めている。そうなれば、再生可能エネルギー推進の声は高まるわけであり、メガソーラーブームが来たことも時代の必然ではある」
こう語るのは環境エネルギー産業情報の甕秀樹編集長であるが、一方で彼は、単なる金儲けではなく、リスクを背負う覚悟があり、かつ発電事業を長期にわたり継続できるまともな事業者に参入してもらいたい、と指摘する。
売電で投資がペイするレベルに達するためには、ある程度の発電量を稼ぐ必要がある。たとえば、2MW以上の場合、たとえ15年償却でも180万kW以上の年間発電量が稼げなければ採算は厳しいといわれている。また、買い取り価格は3年後には下がるという可能性もある。太陽光発電システムの変換効率が経年変化し、思ったように出力できないというリスクもある。太陽光には必ず必要となるパワーコンディショナーは10年に1回は交換しなければならない。つまりは、バカバカ作れば儲かるというほど甘くはない。