電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第2回

期待の医療向け半導体の市場が視えてきた!!


~カプセル内視鏡の半導体チップは日本勢がほぼ独占~

2012/7/6

(株)産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉

 「検査の苦痛を和らげるカプセル内視鏡の世界は、いよいよ本格テークオフの時期を迎えた。小腸の検査では完全に実用段階に入っており、今後、大腸や胃の分野にも拡大することは確実だろう。ところで、このカプセル内視鏡に使われている半導体や部品のほとんどが、信頼性の高い日本製であることに注目してもらいたい」

 こう語るのは、カプセル内視鏡のジャンルで世界シェア90%を持つギブン・イメージング(株)日本法人の河上正三社長である。河上氏によれば、医療向け内視鏡という分野は、オリンパス、HOYAなど日本メーカーのほぼ独占状態となっているが、カプセル内視鏡については日本勢は出遅れているという。お堅い厚生労働省が、ようやくにしてカプセル内視鏡を認めたのが2007年と非常に遅く、かつ既存の内視鏡メーカーは、カプセルタイプを自らの市場を侵食するものとして敵対視していたこともあるかもしれない。

日本の医療機器の市場構造

 この間隙を縫う形でイスラエルのベンチャー企業であるギブン・イメージングがまずは小腸向けのカプセル内視鏡の開発に成功し、かなりの勢いで市場を取り始めた。同社の売り上げは約200億円であり、もう決してバカにはならない数字なのだ。これゆえに、腰の重かった日本勢も、水面下でカプセル内視鏡の次世代版の開発を急ピッチで進めていることは疑いもないだろう。現在の技術水準ではまだ大腸や胃など他の内臓器には適用できない。やはり決め手となるのは、半導体技術であり、バイオテクノロジーであり、メディカルテクニック、MEMSなどの高度テクノロジーなのだ。

 さて、ギブン・イメージングの作っているカプセル内視鏡のイメージは、私たちが普段飲んでいるカプセル状の風邪薬とほぼ同じと考えてもらっていい。ちなみに筆者は世の中で胃カメラくらい嫌いなものはなく、あまりの苦痛にのた打ち回り、看護師から「いいかげんにしなさい」と諌められたほどなのだ。人にもよるだろうが、ある検査のときなどは涙目でドクターに「もうこのまま殺してください」と訴えるほどまでに追い詰められた。しかして、口の中に管が入っているだけに、その思いは言葉にはならなかった。カプセル内視鏡はこうした筆者のような患者に対しては画期的な朗報であるといえるのだ。苦痛なく飲み込んですべてが解決する。なんとすばらしい。

 ギブン・イメージングによればカプセル内視鏡の先端には、内臓を照らし出すLEDが埋め込まれており、撮影のためのCMOSセンサーも使われている。無線通信でやり取りするために、高度な通信用半導体も必要だ。さらには、全体をコントロールするためのマイコンやASICなども内蔵しており、まさに半導体の塊なのだ。同社はさまざまな半導体チップを検証した結果として、品質のずば抜けて高い日本製を選んだ。医療という世界は、絶対の安全安心が保証されなければならない。その意味では、IT分野で一敗地にまみれているニッポン半導体にとって、こうしたメディカルチップは将来を切り開く重要デバイスとなっていくだろう。

 しかしながら、内視鏡や一部のがん治療装置を除けば、大型医療機器の代表格であるCTやMRIは、GE、フィリップス、シーメンスなど欧米勢が圧倒的なシェアを持っている。ここは一番、日本の医療機器メーカーにも奮起を促したい。そしてまた、複合的なものを作らせたら世界一、といわれる日本の半導体メーカーとタイアップして新たな時代を切り開いてもらいたい。日本の医療機器産業は、少し前の経産省リポートによればわずか2兆円と小さいが、いずれ巨大化してくることは間違いなく、まさに半導体と医療産業のクロスオーバーで世界と戦う意気込みが必要なのだ。

日本の医療機器の位置づけ

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