大和ハウスグループの（株）コスモスイニシア（東京都港区芝5-34-6）は、都市型アパートメントホテル「APARTMENT HOTEL MIMARU」を2018年2月に東京・上野で開業して以来、3月下旬開業予定の「新宿WEST」を含めて15施設（東京都9、京都府6）に拡大している。運営状況と今後の事業戦略について、同ホテル運営会社である㈱コスモスホテルマネジメント代表取締役社長の藤岡英樹氏に聞いた。

　―― “暮らすように滞在する”を主題とし、訪日外国人旅行者などグループでの中長期滞在の需要に対応している。
　藤岡　約2年前に、日本には3～4人で滞在できるホテルが少ないと判断し、参入した。当ホテルは、①リビング・ダイニングスペースを備え4人以上で快適に過ごせる空間、②客室内にキッチンや調理器具などを常備し、客室または共用部にランドリールームを備えることで叶う、暮らしの延長線上にある自由な過ごし方、③都市部や観光地などにアクセスしやすいことで可能となる様々な体験――の3つを特徴とする。1室40m²程度の広さを中心とし、1室ごとに料金を設定。「MIMARU」というブランド名には、旅先で過ごす団らんの時間を皆で共有し、そこで生まれる会話によって、思い出をより深めてもらいたいという思いが込められている。

―― 観光産業、ホテルは、新型コロナウイルスの影響を受けている。状況はどうか。
　藤岡　1月中旬以降から予約状況や客足で影響が出ている。当社の客層は、中国人比率はそう高くはないのだが、世界中に新型肺炎が広まったことで、当社ホテルへの外国人観光客の影響も免れていない。先の予想はできない状況（2月下旬時点）で、早期の終息を願うばかりだ。新規開業するホテルに設置するための家具の製造工場が中国にあることから、当社への納期が遅れる影響も出ている。

―― 他方、日本の観光地では、多くの企業がホテルを建設したため、供給過剰感が起きた。
　藤岡　当社のホテルは、4～9人のグループや、家族旅行に対応しているため、他社の1～2人用客室のホテルとは直接競合しないものの、ホテル宿泊費用の相場が下がっている影響は少なからず出てきている。

―― 施設稼働率と客層はどのような状況か。
　藤岡　19年4～9月期は、ホテル平均稼働率が71.8％、平均客室単価は2万6000円、平均滞在日数は3.0日だった。当社のホテルは、4～9人の宿泊に対応し、父と母、お子様の4～5人での家族旅行で来日される方が多い。同期も引き続き90％以上が外国からのお客様で、その中でも台湾からが一番多く23％を占めた。中国とその他アジアはそれぞれ11％ずつ、香港は9％、韓国は3％といった状況だ。65％がアジアからのお客様なので、今後は欧米にも販売促進をかけたいと思っている。

―― 自然な接客が高い評価を受けている。
　藤岡　トリップアドバイザー社が口コミ評価などをもとに作成した「インバウンドレポート2019」内で、〝外国人に人気の日本のホテルランキング2019 TOP20〟を発表。国内外の一流ホテルの名前が並ぶ中で、当社のホテル3施設が入った。会話を大切にし、人気家電を無料貸し出しするなど、各施設の取り組みが高い評価を得た。当社のホテル従業員は大部分が外国人で、細かな接客マニュアルはないが、自然で丁寧な応対で、お客様が親しみやすく接するように指導している。勤務時間外にホテルの外で、お客様の遺失物発見をお助けした従業員もいる。

―― 20年3月期は、東京4、京都3の合計7施設が開業した。
　藤岡　「MIMARU東京」は、八丁堀、銀座EAST、上野御徒町、新宿WEST（3月下旬見込み）、「MIMARU京都」は、STATION、烏丸御池NORTH、河原町五条が開業。これにより、合計15施設760室（開業済み施設の増室予定含む）となった。22年3月期までには全1500室体制を目指している。すでに1600室までの開発案件を確保している。20年度は、大阪2、京都2施設の新規開業を計画、さらに21年5月ごろには東京で1、大阪で1の2施設の開業予定がある。

―― 「忍者ルーム」「ポケモンルーム」など新たな装いの客室を開発した。
　藤岡　「忍者ルーム」は、日本忍者協議会の監修によるもので、1月に開業した東京・上野御徒町のホテル内に設置した。海外のお客様にもなじみのある「忍者」を客室のデザインに採用、錦絵や手裏剣レプリカ、忍びの心得を記した巻物を展示し、忍者探しゲームなどをお楽しみいただきながら宿泊できる。「ポケモンルーム」は、世界のポケモンファンのお客様に室内装飾、小物をお楽しみいただける部屋として、東京2、京都3施設でご用意している。今後もこのような体験型客室を企画していく。