九州旅客鉄道(株)(JR九州、福岡市博多区博多駅前3-25-21、Tel.092-474-2501)は、福岡市が推進する博多駅周辺の再開発プロジェクト「博多コネクティッド」において、民間事業者として協議会の設立や博多駅の再開発など主導的な役割を果たしている。同時に、2021年春までに、宮崎駅と熊本駅に駅ビルを開業するなど、九州エリアの中心市街地の活性化にも注力する。同社事業開発本部まち創造担当部長小池洋輝氏に話を聞いた。
―― 「博多コネクティッド」に対して主導的な役割を果たしています。
「博多駅空中都市構想」の検討対象エリア
(白く網掛けした部分)
小池 19年1月に福岡市の「博多コネクティッド」の発表を受け、当社が事務局となり1月下旬から地権者と博多エリアの発展について話し合う協議会を準備し、19年5月に博多駅周辺にビルを所有している17社とともに「博多エリア発展協議会」を設立した。活動としては、街区ごとのあり方や、回遊性の向上策など、再開発の指針となるグランドビジョンの策定に向けたディスカッションを20回ほど行った。現在は最終調整を進めており、今春には正式発表できる見通しだ。また、参加企業も今春までに20社を超える見込みである。
―― 現在の博多エリアの課題は何ですか。
小池 高さ規制や容積率の制限により、築40~50年のオフィスビルの建て替えが進んでいないことで、結果として、博多エリアはオフィス需要が高まっているのに、供給不足となっている。「博多コネクティッド」による建て替えの促進で、大手企業やグローバル企業、起業家などを誘致しやすい次世代に対応した街づくりを進めていく必要がある。
―― 貴社は博多空中都市構想を計画していますね。
小池 博多駅の在来線下り線路側上に商業、ホテル、オフィスを軸とした複合型の施設を開発する計画で、現在は事業費などの検討を行っている。20年代後半の完成を目指している。
―― 沿線外開発について現状は。
小池 17年9月に開業した「六本松421」については、施設自体が順調に推移しているとともに、周辺においても新しい店舗ができ、週末の広域からの集客につながるなど賑わい創出の起爆剤となっている。
また現在は、福岡市が推し進める九州大学箱崎キャンパス跡地の再開発公募に向け勉強しており、新駅を設置してほしいという地元からの要望も聞いている。
―― 来年春までに宮崎駅と熊本駅に新たな駅ビルができます。
小池 宮崎駅については、中心市街地の活性化を図るため、宮崎交通と共同で「JR宮交ツインビル」を開発し、シネコンなど約80のテナントが出店した「アミュプラザ宮崎」を展開する。地元住民だけではなく、立地特性を生かして旅行者やビジネスパーソンも取り込んでいきたい。
一方で、熊本駅は新幹線の開通や、線路の高架化に伴う土地区画整理事業などで開発用地ができたため、地下1階地上12階建て延べ10万7000m²に、商業やホテルなどを導入した「熊本駅ビル」だけでなく、複数のオフィスビルなども同時並行で開発している。
―― そのほかの地域は。
小池 長崎駅に関しては、商業、オフィス、外資系ホテルを導入した、13階建て延べ約11万4000m²の新駅ビルを25年度までに開業し、国際観光都市として長崎の価値の向上を図る。
鹿児島中央駅では以前から、社有地を活用した再開発計画を進めていたが、鹿児島県が新体育館の整備を検討したため、19年9月ごろまで計画を停止していた。現在は議論を再開し、周辺の地権者とともに改めて住居や商業などどのような街づくりをできるのか検討を重ねている。
―― 今後の展開を。
小池 当社では引き続き、九州の駅ビルや社有地だけではなく、街の姿を方向づけるような大型の再開発案件に参画し、街の特性を生かしたまちづくりや都市開発に取り組んでいく。加えて、九州エリア外のビジネスを広げていくつもりで、「虎ノ門二丁目地区第一種市街地再開発事業」のようなプロジェクトへの参画など、東京や関西での不動産の取得を積極的に進めていく。
一方で、古民家再生事業や無人駅のプロデュースなどローカルで小さなまちづくりも計画しており、鉄道会社ならではの地方創生事業を検討している。
(聞き手・北田啓貴記者)
※商業施設新聞2334号(2020年2月25日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.328