葉山コーヒー(株)(横浜市西区みなとみらい2-2-1、Tel.045-277-3744)は、神奈川・葉山町の名前を冠するとおり、高級感とこだわりを持ったコーヒーを提供する喫茶店「葉山珈琲」を展開している。自由度の高いFCを提供することで日本の喫茶文化を大事にし、緩やかであるが着実に店舗数を拡大している。同社代表取締役の前野守杜氏に話を聞いた。
―― FCについて。
前野 当社のFCは、「自分がやりたい店」をやれるというのが大きな強みだ。街角にある喫茶店のように、映画や音楽など、マスターの趣味と美味しいコーヒーが楽しめる、というのが究極の理想で、そのお手伝いを行えたらと思っている。FC加盟者の中には、趣味のバイクを飾ってアメリカンテイストにした店舗や、木材店のオーナーが運営することを生かして、内装などにふんだんに木材を使用したところもある。全店舗同じ内装やメニュー構成にすることは考えておらず、その地域の特徴なども加味したうえで、店舗ごとの特色を出していただいている。
ただし葉山珈琲のブランドを使用するので、コーヒー豆などは当社から仕入れてもらうほか、コーヒーの味や入れ方には一定の基準を設けている。
―― 足元の状況は。
前野 現在年商は3億円ほどで、店舗数はグループ店3店、直営店3店を含み計15店となっている。グループ店とは、FCの契約期間が終了した後にも店舗運営を行っていただく制度だ。せっかく経験やお客様との関係を積み上げた後にやめるのはもったいないと思い、コーヒー豆を当社から購入していただくことで、屋号を自由に付けられ、さらに店舗運営を継続できるシステムにしている。
また、違うところでFCに加盟していた人が当社のFCに加盟したいとなったとき、今までのノウハウを生かすためにもグループ店の提案を行っている。
―― 直近では、喫茶店と併設で鉄板焼き店舗もオープンしました。
前野 2019年12月20日には「葉山珈琲 曽根崎店」とともに「鉄板焼 葉山」が開店した。ホテルドンルクール大阪梅田内出店ということで、ホテルの朝食の提供なども担っている。葉山珈琲のFC加入者の中に鉄板焼き屋を運営する方がおり、その運営力を当社が逆輸入する形で出店に至った。ホテル運営者側からも、レストランと喫茶店の運営が両方とも同じというのは魅力的であり、当社としても食後のコーヒー需要などで最終的には葉山珈琲の利用につながるとみており、面白い試みだと思っている。今後もこのような複合店舗は増やしていきたい。
―― 今後の出店について。
前野 当社は店舗オーナーの熱い思いをできる限り実現させるために、1店1店の店作りを徹底しているので、出店数は1年間で6店ほどだ。今後は各都道府県に1店は出店するのが目標だが、東京や神奈川などの中心・都心部では、賃料や競合などを考慮すると厳しい面もある。「あの葉山珈琲に行きたい」と思っていただけるような店舗を作り上げれば、都心部でも郊外でも、ドミナント化がされていなくても大丈夫だと考えている。また昨今ではSNSの普及により、店舗のない地域のお客様にも来店していただく機会が増えた。店舗でのSNSの活用をさらに促進し、さらなる来店機会の増加を試みていく。
今後は競争も少なく、地元の人たちの憩いの場になったり、観光客が訪れるなどして需要の強いロードサイド型で、特に地方を中心に出店していきたい。SCへの出店よりも、腰を据えて運営できる物件をメーンに見据えている。
―― 今後の展望は。
前野 店舗運営はもちろんのこと、スーパーでのコーヒー豆販売など物販も積極的に展開していきたい。渋谷のヒカリエ、関西では阪急オアシスで商品を販売しているが、店舗展開も考えている。当社はFC展開でもコーヒー豆販売に利益の比重を置いており、コーヒー豆屋の側面が大きいので強化していきたい。
また私たちは「聴けるフランチャイザー」を目指している。「こうしてください」の繰り返しではなく、「加入者の理想のお店に近づくにはどうしたらいいのか?」を主軸に置くことで、大手チェーンにはない店舗ごとの個性が出ている。なので、私たちのライバルは街の喫茶店。個性があふれ、さらに人と人の付き合いやコミュニティが生まれている街の喫茶店に負けない、葉山珈琲ならではの魅力的な喫茶店を作っていきたい。そして最終的には、葉山珈琲を知っているお客様を増やしていきたい。
(聞き手・編集長 松本顕介/新井谷千恵子記者)
※商業施設新聞2332号(2020年2月11日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー