(株)JR東日本リテールネット(東京都新宿区西新宿2-3-1、Tel.03-5324-6800)は、エキナカコンビニ「NewDays」を展開するほか、デベロッパー事業としてエキナカ商業施設「エキュート」を運営している。2018年4月には、同じくエキュートを手がけていたJR東日本ステーションリテイリングと合併し、今後の施設運営・展開についてもさらに注目を集めている。同社の取締役営業本部デベロッパー営業部部長の飛嶋聡氏に話を聞いた。
―― 合併し新体制となりました。
飛嶋 もともとエキュートのデベロッパー事業は、当社とJR東日本ステーションリテイリング、JR東日本都市開発の3社で行っていた。このたびJR東日本ステーションリテイリングと合併することで、分散していた人材やノウハウ、そして取引先との関係性などの経済的資源を集結させ、運営の効率化と最大化を図った。運営をまとめることで、取引先も広がり、リーシングがより多様になった。
―― 足元の状況は。
飛嶋 エキュートのデベロッパー事業の18年度商品売上高は537億円、テナント数は382店となった。当社直営のドラッグストアや書店、雑貨店などの専門店の商品売上高は461億円、店舗数は261店で、前年と比べても堅調に推移している。エキュートは鉄道に付帯する施設のため、19年は台風など異常気象による計画運休で影響を大きく受けたが、おおむね前年並みで推移している。
―― エキュート事業について。
飛嶋 エキュートでは現在東京、品川、上野など計10施設を展開しており、飲食・食物販、雑貨、各種サービスなど、エキナカに必要な機能を取り揃えている。エキナカ施設ということで一般的なSCと違い、乗り換えの合間などのクイックな購入需要が多く、おすすめポップを付けて商品を選びやすくしたり、新幹線で食べやすいサイズのものを販売するなど提供方法に変化を付けている。食物販では、クリスマスケーキやおせちなどのハレの日需要に対応した商品のほか、弁当、総菜、スイーツなども販売している。
―― 飲食・食物販について。
飛嶋 エキュートのメーンコンテンツとして、約8割は食を取り扱っている。立川や大宮のような遠隔地にあるターミナル駅では、中食需要を見込んで惣菜を多く取り扱っており、新幹線が通っている東京、品川では手土産用の菓子をメーンに取り揃えた。飲食では、待ち時間や待ち合わせに利用できるカフェを主に配置している。
―― リニューアルも積極的に行っています。
飛嶋 各施設でゾーンごとにリニューアルを行っており、直近ではエキュート大宮のベーカリー・スイーツ・カフェを19年11月~12月に刷新したほか、店舗単位での入れ替えも施設ごとに継続的に行っている。来年度はエキュート日暮里(現在休業中)でリニューアルを行う予定で、店舗数の増加や地元店の出店などを計画している。
―― 渋谷スクランブルスクエアに出店したエキュートエディションについて。
飛嶋 JRの施設外で初めての出店となり不安も大きかったが、JRの乗り換え口のある1階に出店ということもあって多くの人が訪れており、おおむね計画どおりの推移を見せている。和菓子やスイーツなど、業態を絞ることでなるべくコンパクトに展開できるようにした。エキュートは主要な駅に展開しているが、渋谷や新宿などで私鉄を利用する人たちにはまだ認知度が低く、今回の出店は多くの人にエキュートを知ってもらうチャンスだと考えている。
―― 今後の出店は。
飛嶋 オリンピック・パラリンピックに向けて駅の改良・改修工事を行うなかで、それに合わせてエキュートの店舗スペースを捻出する工事も行っている駅もあり、出店を考えている。東京以外でも十分なスペースがあれば進出したく、エキナカ・エキソト両方で積極的に展開していきたい。
―― 今後の展望を。
飛嶋 テクノロジーの進化とともに駅の在り方も変化してきており、エキナカでも変化に即した新しいサービスを考えていかなくてはならない。JR東日本では積極的にスタートアップ企業とコラボレーションしているが、エキュートでも最新技術やAIなどを取り込んで、ワンランク上の商品やサービスを提供していきたい。開業から15年、鉄道は利用するがエキナカで買い物をしない人はまだ多い。スイーツなどの食物販だけでない、リアルの価値を感じられるものをエキナカで提供していきたい。
(聞き手・編集長 松本顕介/新井谷千恵子記者)
※商業施設新聞2330号(2012年1月28日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.326