キャピタランド・モール・ジャパン(株)が運営する「ビビット南船橋」(千葉県船橋市)が、過去最高の売上高を達成する見通しだ。隣接地に巨大商業施設があるため試行錯誤をした時代もあったが、いまやキャピタランドが同施設を取得した時と比べ、売上高は約2倍となった。同社ビビット南船橋CMOセンターマネージャーの竹井健二氏に取り組みを聞いた。
―― 施設の概要から。
竹井 南船橋駅から徒歩で約10分の場所にあり、延べ約9万8000m²、店舗数は約70店。04年に開業して以降、06年にキャピタランドが取得し、09年から当社が運営を担当している。19年は売上高110億円(売上非公表店舗は除く)、来館者数は650万人と、売上高、来館者数ともに過去最高を記録する見通しだ。売上高は施設を取得した06年と比較して約200%になる見込みだ。また、多くのお客様、テナントに支えられ、19年に15周年を迎えることができた。
―― 以前は経営が厳しいことで知られていました。
竹井 09年に運営を内製化した時のテナント入居率は46.9%で、50%を切っていた。施設の隣には「ららぽーとTOKYO-BAY」があり、当施設とテナントが同質化していたのが要因だった。そのため、ビビットは人が集まりにくく、テナントの売り上げが厳しくなり、退店が加速した。
―― 厳しい状況で運営を開始したのですね。
竹井 ただ、船橋市の人口は伸びており、施設の3km圏内の人口は10年時点で約19万9000人だったのが、15年は約21万人に増加した。比較的所得の高い方が住むマンションも増え、ららぽーとを目的に南船橋を訪れる人も多い。すみ分けしたMDを構成できればチャンスがある施設だった。
―― どのような手を打ったのですか。
竹井 まずはテナント稼働率の上昇に注力した。稼働率が50%を切っていると、テナントが出店に対して前向きになれない。07年、10年、12年、16年の4期にわたって大型リニューアルを施したが、10年のリニューアルの時に稼働率は88.3%まで上げた。その結果、16年のリニューアルで「大塚家具」や「ニトリ」といった知名度の高いインテリア店を誘致できた。南船橋には「イケア」があるほか、ららぽーとにもインテリアを扱う店があるため、家具を買うなら南船橋、として集客ができている。
―― MDの方針は。
竹井 スーパーマーケットの「スーパーバリュー」を軸にした地域密着型と、広域集客ができるテナントをミックスする“ハイブリッド型ショッピングセンター”を掲げている。広域商圏としては、コスプレアミューズメント写真スタジオ「HACOSTADIUM TOKYO.one」、ダイビング機材のディスカウントショップ「mic21」、スポーツサイクル専門店「Y'sRoad」など、ロードサイドでも収益を上げられるようなテナントを誘致することで、5km圏以上からも集客している。
―― 最近も新店がいくつかオープンしました。
竹井 施設として大きかったのが18年12月、4階にオープンした屋内遊園地「ファンタジーキッズリゾート」。これにより、ファミリー層がさらに増加し、飲食など各テナントにもプラスに作用した。最近では11月7日、フードコートに「バーガーキング」がオープンした。ファストフードがオープンするのは施設として初めて。ファンタジーキッズは食事の持ち込みができるので、ファストフードとの親和性が高い。
―― 改めて一般的なRSCとはコンセプトが異なりますね。
竹井 一般的なRSCはファッションを中心とした中小型の区画を中心に形成しているが、我々は1000坪クラスの集客力の高い大型店を複数導入している。ファッションは1割程度しかなく、「ファッションセンターしまむら」などにお任せしている。
また、塾などスクール系テナントが集積しているのも特徴だ。周辺にはマンションが多く、小学校の生徒などにご利用いただいている。ゴルフスクールなどもあるため幅広く習い事を受けられる。託児機能併設のワーキングスペース「ママスクエア」などもあり、コト消費向け店舗が充実している。
―― ビビットの将来は。
竹井 ファンタジーキッズリゾートにより増加したファミリー層に、いっそう満足していただくべく3~4年後をめどにリニューアルを検討している。サービスや機能の拡充をしたい。
また、南船橋全体を盛り上げたいと思っている。近接する幕張エリアには大型商業施設や家具店などがある。都市間競争の時代であり、周辺施設との協力を深めつつ地域を盛り上げたい。最近では隣接するららぽーと、船橋競馬場と集客イベントなどを行っており、こういった取り組みをさらに進め、南船橋の賑わいを作っていきたい。
(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2325号(2019年12月17日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.321