(株)関西都市居住サービス(大阪市中央区本町2-1-6、Tel.06-6271-5050)は、(株)新都市ライフホールディングスのグループ会社として、関西一円で街づくりを行っている。5つのコミュニティ型ショッピングセンター(CSC)を運営するほか、UR都市機構が手がけた再開発の物件を対象にサブリースも展開している。ニュータウンという肥沃な足元商圏を武器に、CSCの価値向上を目指す同社の取り組みについて、SC企画部のサブマネージャーである西口英徳氏に話を聞いた。
―― 貴社の概要から。
西口 当社は2016年4月1日付で、新都市ライフホールディングスのグループ会社となった。現在、大阪府、兵庫県、奈良県、滋賀県の関西一円で街づくりを行っており、施設数は33施設、テナント数は核店舗の16店を含めて487店、総賃貸面積は17万8000m²(19年4月現在)の規模を誇る。
主力となるのは敷地3万~5万m²の規模を持つCSCで、エコールという名称で「エコール・ロゼ」「エコール・いずみ」「エコール・リラ」「エコール・マミ」「エコール・なじお」の5施設を運営している。このエコールシリーズは、1施設で70億~100億円の売上規模がある。
また、公共団体との連携を進めており、エコール・リラは地域住民の交流の場として、誰でも自由に弾くことができる「ストリートピアノ(街角ピアノ)」を神戸市が設置し、エコール・いずみやエコール・マミは地域活性化および住民サービスの向上を目的として、行政と包括連携協定に関する協定を締結している。そのほか、UR都市機構が手がけた再開発の物件でサブリースを行った施設として、「無印良品」や「アカチャンホンポ」がテナントとして入居する「アクタ西宮」がある。
―― 既存施設の状況を。
西口 モノ売りが厳しいなか、当社の施設は足元にニュータウンを抱えているため、お客様にいかにして、日常のお買い物に足を運んでいただくかを日々考えている。主力のエコールシリーズも空き区画が増えているため、様々な業種・業態を展開する必要があり、3月にリニューアルオープンした「エコール・リラ」では、新しい取り組みを行っている。
―― エコール・リラの改装について。
西口 同施設は本館と南館の計2棟で構成されるが、顧客導線が弱く、連動性も図りづらい状況であった。ちょうどテナントとの契約満了を迎えたことから、「コンパクトシティ」をテーマに、同施設の活性化事業を行った。具体的には、イオンから本館5階の売り場を返却いただいて、同フロアに「エディオン」「くまざわ書店」「マックハウス アーバンストア」などの大型専門店を配置した。これまでは本館と南館に物販店が点在していたが、今回の改装を機に、本館に物販店を集約している。
一方、南館は1~2階に銀行や理美容が、3階は「コープ藤原台」のほか、和菓子店やファストフード店が入っていた。前述の改装で、4階と5階の物販店が本館に移ったことから、4階に「神戸市立北神図書館」、5階に「こべっこあそびひろば」などの行政施設を導入した。
―― 改装後の状況は。
西口 本館は顧客から買い物しやすくなったという声が増え、売り上げも好調に推移している。1カ月に5万人が来場する図書館が南館の4階に開館し、この来場者を売り上げに結びつけるため、当社では販促策や連動企画を計画している。また、神戸市で初めて導入したこべっこあそびひろばは、1日500人の利用限定にもかかわらず、多くのお客様に利用いただいており、館内でベビーカーを押すお客様が増えたと感じている。こうしたお客様も今後、取り込んでいきたい。
―― 今後の開発方針について。
西口 既存施設の活性化が最重要課題となる。例えば、15年3月にリニューアルしたエコール・マミでは近商ストアが食品に特化し、併せて雑貨テナントも導入したことで、売り上げが好調に推移している。不足業態の「エディオン」も導入することができ、デベロッパーと核店舗が協調した良い事例であり、こうした事例を増やしていきたい。
直近では、大阪市此花区の商業施設「高見プラザ」において、入居するイオンから2~3階の床を返却いただいて、2階に「パーティハウス」と「西松屋」、3階に「キャンドゥ」が11月21日に開店した。3階の「アクトス」は20年春にオープンする予定だ。今後もエコール・ロゼやエコール・いずみで専門店との契約満了を迎えることから、将来的な建て替えも視野に入れて、既存施設の活性化を図っていきたい。
(聞き手・岡田光記者)
※商業施設新聞2324号(2019年12月10日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.230