商業施設新聞
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第210回

静鉄プロパティマネジメント(株) 代表取締役社長 川井敏行氏


新装効果で売上高8%増加
“セノベーション”で商業進化

2019/12/17

静鉄プロパティマネジメント(株) 代表取締役社長 川井敏行氏
 静鉄プロパティマネジメント(株)(静岡市葵区鷹匠1-14-5、Tel.054-266-7014)は、新静岡駅直結の商業施設「新静岡セノバ」(以下、セノバ)を2011年10月に開業、その後17年秋から18年春にかけてファッションを中心にリニューアルした。リニューアル後1年以上が経過し、効果とその後の事業戦略について同社代表取締役社長の川井敏行氏に聞いた。

―― 18年春のリニューアルから1年以上が経過した。効果はどうか。
 川井 館全体の売上高は、19年3月期に前年比8.2%増の195億5000万円となり、良い成長率を確保できた。19年度は、6月と8月、9月が暦年の単月売上高で過去最高を記録した。アパレル・雑貨の強化により、客単価が伸長し、売上全体を牽引した。

―― 次の課題は。
 川井 18年春のリニューアルでは、物販テナントの40%を入れ替えたのだが、飲食分野に手をつけなかった。5階のレストラン、3階のフードコートの飲食店の事業状況は順調なのだが、セノバ開業から8年が経過したことから、消費者目線で“変わった感”が必要な時期であると判断している。そのため、20年8月から21年度にかけて3段階でリニューアルを進める考えである。

―― どのようなリニューアルにするのか。
 川井 前回のリニューアルでは、ファッションMDで感度の高い方向へ軸足を移した。それと同様にフードコートでも、大人の女性が足を運びたくなるような施設にしたい。実は、当社に入社して2年目の女性社員たちからそのような要望が出ている。「フードコートでいいや」と安易に食事に訪れる場所ではなく、セノバのフードコートへ行きたいと思われるような、やや高級感のある飲食テナントを集積したい。今のお客様を阻害するわけではなく、食のバラエティの広さを打ち出したい。

―― フードコートでは、ラーメンの新企画もある。
 川井 10月から全国人気らーめん店が期間を区切って続々と登場する「らーめん駅伝」を実施している。特製みそらーめんの「ど・みそ」(東京都)、黄金真鯛塩そばの「鯛塩そば灯花」(東京都)、のどぐろ煮干しだしらーめんの「Ramen&Bar ABRI」(石川県)、鶏塩らーめんの「麺処 わた琉」(沖縄県)、煮干しラーメンの「まぐちゃんラーメン」(山梨県)が、20年2月まで交代で出店、その後も21年1月まで続く予定だ。人気ラーメン店は集客力がある。

―― 9月に公式アプリを開発した。
 川井 新静岡セノバ公式アプリ「& cenova」(アンド セノバ)のサービスを9月21日から開始した。静岡鉄道が発行するルルカカードとの連携により、「ルルカポイントアップキャンペーン」の実施や、「クーポン」の配信、毎月実施される「応募キャンペーン」などアプリ会員限定の特典を提供、セノバでの買い物がさらに楽しく、便利になる。

―― セノバの客層は女性が多い。
 川井 カード会員では、85%が女性で、40歳代の方が最も多い。当施設のターゲットは、自立した働く女性で、中には主婦になられた方もいる。セノバ開業から8年が経ち、当初のお客様のお子様が会員になってくださる時期に入っている。親子で来店してくださり、母が娘から新しいアプリの操作方法を習う楽しい光景を想定している。

―― 他社とのコラボによる販売促進策が注目を集めている。
 川井 7~9月は、「シーチキン食堂」(はごろもフーズと協業)、「トラベルフェア~旅するセノバ~」(全日本空輸と協業)という販売促進のコラボ企画が良い成果を出した。シーチキンと当施設の飲食・食物販、ANAの空の旅と当施設のファッション・アイテムの組み合わせが、意外性や非日常感を想起し、それがSNSへの拡散やメディア報道につながり、大きな反響を呼んだ。

―― 他社とのコラボによって起きる化学変化を“セノベーション(セノバ×イノベーション)”と呼んでいる。
 川井 売り場を提供する商業施設という縦軸を、シーチキンや旅行というテーマの横串が貫いた構図と捉えており、多くのテナント様の協力を得て館全体が盛り上がり、集客と売上増につながった。他社とのコラボは、18年の劇団四季の「オペラ座の怪人」など、以前から試みており、PDCAを繰り返して検証した成果である。他社との協調によって起きるセノバの変化を、“セノベーション”と呼び、社内外で浸透させたいと思っている。

―― 次の仕掛けは。
「セノバ8ッピーアニバーサリー!」の吹き抜けバナー
「セノバ8ッピーアニバーサリー!」の吹き抜けバナー
 川井 10月は、セノバの8周年祭に加えて、消費税率の10%化、静岡鉄道の運賃改定、また皇室の即位礼正殿の儀の祝日があるなど、大きな出来事が重なる。そこで、令和という時代を見つめながら、平成や昭和も振り返り、親子で懐かしい会話をして楽しんでいただけるように、「セノバ8ッピーアニバーサリー!」を企画した。
 テーマは「レトロJAPAN」として、キービジュアルにはレトロなイメージがありながらも、リバイバルアイテムとして注目されるカセットテープを起用し、象徴的に8の文字を打ち出した。懐かしい流行歌などを館内専用のラジオ放送で流したり、昭和レトロ展を開催した。秋の次にはクリスマス企画に突入する。

(聞き手・笹倉聖一記者)
※商業施設新聞2321号(2019年11月19日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.317

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