商業施設新聞
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第209回

(株)東急ハンズ 執行役員 渋谷店長 池田高博氏


東急ハンズ渋谷店
モノづくりを最も色濃く反映
新店と連携し街を活性化

2019/12/10

(株)東急ハンズ 執行役員 渋谷店長 池田高博氏
 (株)東急ハンズ(東京都新宿区新宿6-27-30、Tel.03-5155-5311)は、渋谷、新宿、池袋の東京都内大型3店を旗艦店と位置づけ、他の東急ハンズ店舗にはない独自の取り組みを行っている。渋谷店は「DIY・モノづくり」を色濃く反映し、開業40周年を迎えた2018年には大規模リニューアルを行い、さらなる強化・充実を図った。渋谷という様々な人が集まる場所で、“ここならでは”の商品やサービスを提供する渋谷店について、同社執行役員渋谷店長の池田高博氏に聞いた。

―― 渋谷店の概要を。
 池田 1978年9月に、藤沢店(神奈川県藤沢市)、二子玉川店(東京都世田谷区)に次ぐ3号店としてオープンした。渋谷店は一度増床を経ており、開業時のCフロアは今の半分以下の面積だった。現在の規模は、約2000坪、アイテム数約15万SKUを展開する大型店で、店舗面積は当社の中でも最大級だ。

―― 渋谷店の特徴や開業時のコンセプトは。
 池田 開業時に打ち出した、手づくり=Do It Yourselfや、モノづくりの部分の色が、当社の中で今でも色濃く残っている店だと思うし、お客様もそう感じていると思う。また、男性客が多いというのも一つの特徴であり、当社の中でも稀な店だ。男性客が多いのは、DIY用品の扱いが多いという渋谷店開業時からの特徴みたいなもので、特別に意識したわけではないが、「男が楽しむ雑貨店」という位置づけで認知されてきたのだろう。
 新しいモノを作って生み出す楽しみも当然あるが、一方で、ソリューション的な「何か困ったな」を解決する部分の役割も昔から期待されている。
 開業時は「何かが変わる、何かが始まる」というテーマを掲げ、その時の「変わる・始まる」というあたりが、現在の「生み出す」という部分につながっていると感じる。今思えば、開業時のコンセプトは「40年前のコト消費」だったのではないか。さらに、これが今も続くハンズの「CREATIVE LIFE STORE」を明確に表すランドマークに、渋谷店がなったのだと思う。

―― 18年のリニューアルについて。
5階「インクスタジオ」は人気の高いスタジオの一つ
5階「インクスタジオ」は
人気の高いスタジオの一つ
 池田 渋谷店の特徴である「DIY、モノづくり」をもう一回今の時代に合わせて考え直し、同店の強さを出すために各階に「スタジオ」を設置するという新しい取り組みを行った。スタジオという名称にしたのは、楽しさを発信する場所にしたかったからだ。ここでは従来のワークショップだけでない、様々なモノづくり体験ができる。
 スタジオ設置の根底には、「我々が信じたものをしっかりとお客様に伝えたい」という想いがある。モノづくりの楽しさや奥深さなど、その良さをどう伝えたら良いかと思った時に、やはりお客様と一緒に作業を行い、お客様が作りたい物を我々がどうサポートできるかと考え、このスペースを店の中に作りたいと思った。これこそ渋谷店の色で、こうした独自色を出していかないと渋谷店である意味がない。ここでしかできないことを提案し、お客様に「渋谷店に行けば何とかなる」と思われる場所であり続けなければならない。
 このリニューアルの結果、渋谷店の既存顧客には、しっかりと滞留していただけるようになった。一方、客数がすごく増えたかと言われればそこまでには至っていないので、このコンテンツをさらに広げ、発信していく必要がある。

―― 今後、渋谷はどうなると思うか。
 池田 駅周辺に新しい商業施設ができ、東急ハンズ渋谷店の近くに「渋谷PARCO」が復活するなど、より大人が買い物しやすくなる街になると思う。一方で、何でも揃う東急ハンズがあることが、当社としての利点なのだが、今後専門店がどんどん出店してくる。お客様は渋谷に集まるかもしれないが、そこからハンズに来てもらうには、より渋谷店の独自性を出さないと、非常に厳しくなるとも感じている。
 また、11月1日、渋谷駅に「東急ハンズ渋谷スクランブルスクエア店」が開業した。同店の面積は渋谷店の約4分の1となるが、渋谷の入り口という立地・考えのもと、「東急ハンズが渋谷スクランブルスクエアへお客様をお迎えに上がりました」という意識で取り組んでいる。同店では東急ハンズを代表するカテゴリーを揃えるほか、店内に大きなイベントスペースもあり、お客様の興味やワクワク感を高める旬の仕掛けを設けている。この開業もひとつのきっかけとして、渋谷の街の活性化に寄与したい。

―― リアル店舗の考え方、渋谷店の今後は。
 池田 今、商品を買うだけならネットでできる時代。そこに店頭のリアルだから気づくことができる何かが加わることで、新しい発想や考え方が生まれる。現物を目の前にして、従業員と会話をし、お客様が納得して自分の考えをもって購入できる場所にしたい。それがリアル店舗としての存在価値だと思う。
 また、渋谷店は東急ハンズの歴史の中でも重要な位置にあり、大切な場所だと思う。従って、渋谷で我々の存在価値をどう出していくかを考え、実践していかないといけない。当然、すべてが成功するとも思っていないが、スタッフ一丸となって様々なヒントの提案をし続けたい。

(聞き手・若山智令記者)
※商業施設新聞2320号(2019年11月12日)(2面)
 新・渋谷 ~レボリューション'19~ No.8

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