イオンタウン(株)(千葉市美浜区中瀬1-5-1、Tel.043-212-6369)は、常に進化する地域密着型ショッピングセンター(NSC)を全国に展開している。エリアや地域を支えるライフラインを担うほか、コミュニティの場としても存在感があり、利用者からの信頼も厚い。最近では物販中心の店舗構成から、飲食やサービス店の比率を高め、より使い勝手の良いNSCを目指している。従来にはない新たなモデルのNSCを模索する、同社代表取締役社長の加藤久誠氏に話を聞いた。
―― 足元の状況からお願いします。
「イオンタウン郡山」は飲食店棟の増設などで
好調に推移した
加藤 上期を振り返ると、アパレルの苦戦などが表面化する中、売上高はほぼ計画どおりに推移した。とりあえずは順調であったと言えるだろう。エリアで見ると、関東はほぼ予算どおりで、関西~九州にかけての範囲が好調だった。
個店ベースで良かったのは「イオンタウン郡山」(福島県郡山市)。同店は4月末にリニューアルオープンし、アパレルを中心とした「おしゃれ館」の店舗入れ替え、飲食店棟4棟の新設などが寄与して、売上高前期比は15%程度増加した。そして、アパレルも店舗の見せ方、組み合わせでまだ伸びる、ニーズがあることが分かった。同店のような大型店で2桁伸びるというのは、既存店の数値に与えるインパクトも大きく、当社とすれば、開業後20年超の店も増えてきたので、これからどう活性化していくかの好例になった。
―― 大小含め、リニューアルは推進しますか。
加藤 店舗年齢で20年超の店を中心に、今後5年で135億円を投資して約100店を改装する計画だ。リニューアルでは開業時に70%程度だった物販比率を50%程度まで下げ、今ニーズのあるフィットネスや飲食、サービス関係の比率を高めながら、時代に合ったNSCに変えていく。また、共有スペースの面積も拡大させる。今後は、物販面積を取るよりも共有部を充実させ、利用価値を上げていくことがSCの価値向上にもつながっていくし、そういう時代になってきている。
―― 出店については。
加藤 当社はNSC業態なので、商圏人口(約3km圏内)3万~5万人で考えると、店舗数は足りない。まだ守りに入る段階ではなく、成長を止める段階でもない。もっと出店を進めていく必要がある。
―― 小型と大型のすみ分けについて。
加藤 イオングループでのシェアや系列店舗の配置を見ながら、そのエリアをグループとしてどうカバーするかがまず基本で、それに応じて店舗の規模をどうするか、そのエリアにとって、グループにとって最適なサイズを考える。個人的には、今の形のNSCが未来永劫続くと思っていないので、これから先も生き残っていくために新しい形への取り組みは常にチャレンジしながら、新しいNSCの形態を模索していく。
―― 新しい形のNSCとは。
加藤 例えば、「道の駅」のようなものが挙げられる。当社はデベロッパーなので、施設をつくり、そこに道の駅を誘致する形になる。機能としては、スーパーなどの物販をはじめ飲食、サービスなど従来のイオンタウンの機能に加え、地のものを販売するショップや温浴施設、公園などが考えられる。自治体などと連携を深めながら進めていきたい。
また、道の駅に近いところでは、「イオンタウン湖南」(滋賀県湖南市)の中に一部展開しているものはあるが、本格的なものはまだこれから。整備としてはリニューアルで設置するのではなく、基本的に新設でと考えている。
このほか、ウェルネスに特化したものなど、カテゴリーを分け、色々なジャンルで新しい取り組みをやっていきたいし、NSCとして地域住民の憩いの場、コミュニケーションの場となる広場などのプラットフォームづくりにも注力したい。
―― 19年度の新設は。
加藤 「イオンタウン四日市泊」(三重県四日市市)、「各務原鵜沼」(岐阜県各務原市)、「江刺」(岩手県奥州市)、「諫早西部台」(長崎県諫早市)、「山科椥辻」(京都市山科区)、「稲城長沼」(東京都稲城市)の6店を計画しており、すべて11~12月にオープンする予定だ。これにより、19年度末の店舗数は145施設となる。
―― 中長期的な目標は。
加藤 前述した既存店のリニューアルを進めながら、25年度をめどに200店体制を目指す。基本的には既存店があるエリアでのドミナント出店を進めつつ、良好な物件があれば未進出エリアにも進出したい。
また、東京23区内でも従来のイオンタウンとは異なる店舗集積やモデルで出店のチャレンジをしてみたい。
(聞き手・編集長 松本顕介/若山智令記者)
※商業施設新聞2316号(2019年10月15日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.314