商業施設新聞
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第201回

(株)ルミネ 代表取締役社長 森本雄司氏


デジタルとリアルをクロスユース
横浜ニュウマンはより感度高める

2019/10/15

(株)ルミネ 代表取締役社長 森本雄司氏
 ファッションビルを展開する(株)ルミネの2018年度売上高は、既存店ベースで前年実績をクリアした。しかし依然ファッション市場は伸び悩み、またECの隆盛でリアルの価値も問われている。こうしたなか、ルミネの次の一手は何か。森本雄司代表取締役社長に聞いた。

―― ファッションを取り巻く環境をどう見ますか。
 森本 大量生産・大量消費が招く同質化や、ECの進展、また、SNSで様々な情報が発信されトレンドが掴みにくくなるなど、ファッションを取り巻く情勢は厳しい。当社はリアル店舗の楽しさ、ファッションの価値を伝えることを基本とする。そのため質の高いサービスを提供し、店頭に来て学べる・楽しめることを主眼に置く。

―― 18年度売り上げは。
 森本 既存店が前年比で101.5%の3483億円だった。ルミネ全15館のうち、「ルミネエスト新宿」が単館で500億円を突破したほか、「北千住」「池袋」「有楽町」「新宿1」「新宿2」「荻窪」「大船」「藤沢」「川越」「ニュウマン新宿」の10館が過去最高売上高を記録した。

―― 最近の改装は。
 森本 大型案件では、ルミネ池袋と、ルミネ大宮で実施した。ルミネ池袋はメーンエントランスの地下1階を大幅に改修した。入り口の天井を高くし、照明の照度を上げて入店しやすくした。併せて店舗も改装し、感度を高め、大人の女性客の需要を取り込んだ。
 ルミネ大宮では、3階のコスメゾーンに上がる導線を強化した。デジタルサイネージを置き、3階に上がるとコスメゾーンが広がり、そこから3階の婦人服売り場に誘導できるようにした。

―― 今年の大規模改装は。
 森本 各館で秋の定例改装を計画している。比較的大きなものは横浜となる。また、池袋の上層フロアと大宮の食品フロアの改装を予定する。

―― ファッションの比率は低くなりますか。
 森本 各館が実績を見て調整していく。全体で見ると、コスメや食が増え、婦人服は減少傾向にある。ただ、新宿駅は巨大ターミナルであり、巨大商業地であるため、新宿の館はファッションに特化し、それがルミネのイメージとなる。
 一方、郊外の大宮、立川、北千住などは、ファミリー層もターゲットとなる。ファッションビルではあるが、レストランやくつろぐ機能に一定面積は割くし、大型区画の店舗も入るなど、地域ニーズは強くなるが、テイストは上質なライフスタイルで、ファッションの感度は保っているつもりだ。お客様はそこは使い分けて、より尖った商品は新宿でお求めになる。

―― 新店は。
 森本 20年に横浜駅にニュウマンを開業する。現・ルミネ横浜より少し感度を高めるとともに、地元愛も刺激するような取り組みを考えたい。従来よりも区画数を減らして、ゆったりしたショップや売り場や空間をつくり、商品のストーリーや背景、世界観を訴求できるように演出したい。

―― 直営事業について。
 森本 ライフスタイル提案が我々の役割と認識しているが、ややもすればデベロッパー目線だけで見がちになる。自らがショップを運営することによって、飲食や小売りの奥深さを体感するのが重要だ。現在展開する米国西海岸発のナポリピザ「800°DEGREES」は、ニュウマンのほか、駅ソトの東京・南青山に2号店、有楽町に3号店がある。ニュウマン横浜に4号店を展開する。
 また、19年3月に新宿ルミネに1号店を開店した「ザ・メドウ」はオペレーションを改善中だ。

―― EC隆盛の中、どう舵取りをしますか。
 森本 デジタル化時代において、リアル店の価値は、お客様に提案して、新たな自分を発見していただくことだと思う。楽しく学べる場所を、ショップスタッフと一緒に実現していく。
 もう1つは、オムニサービスだ。通販サイト「アイルミネ」やアプリ「ワンルミネ」を駆使して価値を情報発信して、来館を促し、デジタルとリアルで買っていただくという、クロスユースに力を注ぐ。

―― 「旅ルミネ」を始めました。内容と狙いは。
 森本 地方の良いものをお客様に提案する「ココルミネ」という取り組みを行っているが、旅ルミネはその一環で、地方がそのままやってくる。地域の方をお招きし、その土地の文化や食材、背景や歴史を直接地元の人に話していただく。興味が出れば実際に現地に足を運び、体験していただくと、旅ルミネになる。
 第1回は佐渡島。佐渡島が好きな方や、ルミネのこうした活動に興味がある方が集まった。佐渡の自然を紹介しながら、お酒や食材、文化的なものを学ぶ。第2回は群馬県・中之条町を7月に開催した。

―― 次のルミネの姿になるのでしょうか。
 森本 旅ルミネに限らず、モノの価値を伝えていきたいと考える。ファッションにおいても日本のモノづくり、作り手の思いや生産者と消費者をつなげていくことがますます大切になるし、企業であればそういう姿勢を応援したい。そういうことをきちんと伝えられるSCを目指したい。

(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2312号(2019年9月17日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.311

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