高崎ターミナルビル(株)(群馬県高崎市八島町222、Tel.027-322-7211)は、JR高崎駅や熊谷駅の駅ビルを中心に、駅直結の利便施設などを運営している。駅ビル事業では、立地を活かした集客、コト消費に対応したイベントの開催などを行い、地域密着と地域活性に貢献する働きを通じて、駅ビルを“地元の良さを伝える場”とすることに取り組む。同社代表取締役社長の丸山勝氏に話を聞いた。
―― 運営施設と足元の状況から。
丸山 JR高崎駅の「高崎モントレー」、熊谷駅の「アズ熊谷」という2つの駅ビルをはじめ、高崎、前橋、籠原、上尾駅で駅直結の利便施設「イーサイト」を4施設展開している。各施設の2018年度売上高は、高崎モントレーとアズ熊谷が、いずれも前期比で微減となった。一方イーサイト高崎は、過去最高の売上高を更新するなど、施設で差が出る結果となった。
前述した高崎駅直結の「イーサイト高崎」は、ここ最近、毎年数%の成長を遂げている。中でも、直営展開している物産ゾーンの「群馬いろは」が好調で、土産物ニーズが高いと感じている。
―― 客数の推移は。
丸山 直近では、高崎駅周辺で「高崎アリーナ」や「高崎OPA」(オーパ)などの大規模施設が開業した影響もあり、来館者は増加している。また、高崎市の調査では、駅前の歩行者通行量が2年前に比べて30%増えているというデータがあり、この好影響をイーサイト高崎は受けている。
また現在、高崎駅周辺は様々な開発が進行中であり、9月に高崎芸術劇場、20年春にはコンベンションセンターの「Gメッセ群馬」やタワーマンションなどが完成、開業を迎えるため、来街者や定住者の増加が期待できる。
―― 17年にオーパが開業した。この影響は。
丸山 オーパの開業当初は、多少の影響を受けたが、現在は食品以外は元に戻ったと思う。食品はどうしても競合は避けられないが、共存の道を探っていきたい。オーパとは単なる競争相手になるのではなく、街にどう集客するかを考え、密にコミュニケーションを取っている。つまり、お互いに協力していこうという考えだ。
例えば、東京なら施設単体で勝ち組が出てもけっこうだが、地方都市はそうはいかない。街やエリア全体が、どう魅力付けをして、来街者を増やし、盛り上げ、活性化するかなどを考えなければいけない。
―― 集客面の工夫で取り組んでいることは。
丸山 アズ熊谷で、2年前から「熊谷プレイス」という、カフェ併設型の内装デザインにこだわったコミュニティ空間をつくった。地元の人のマーケットを月に1回開催するなどして、人の流れを変えようと努力しており、実際に新しい層のお客様が来てくれている。そして、モントレーでも同様のイベントスペース「高崎ベース」の展開をスタートした。地元の人が駅ビル事業に関わる、地元の良さを伝えられる場所として駅ビルを使っていく。実際に地元の人に話を聞くと、「駅で何かをやる」ことを非常に敷居が高いと感じているようだ。だが、気軽に使える場所にしたい。今では「こんな使い方ができないか」と提案を受けることもある。
イベント内容は、デザイナーや個人でものづくりを行っている人、カフェ事業者などが、それぞれの人脈を使って人を集め、テーマ性を持ったマーケットや物販展を開催したり、ワークショップを行ったり幅広く展開している。
―― モントレーで好調な業種は。
丸山 17年に導入した成城石井や飲食店は堅調である。あとは雑貨系も調子が良い。雑貨系は無印良品が長い間好調を維持している。2年ほど前に増床し、年々伸びている。
―― リニューアルについて。
丸山 直近では、20年4月から始まるJR東日本の「群馬ディスティネーションキャンペーン」に合わせて、モントレー、イーサイト高崎の両施設の入り口まわりをリフレッシュする。また、モントレーはコンコース階(2・5階)を店舗の入れ替えを含め、今夏~今秋をめどにリニューアルし、その後、1階食品フロアを20年夏までをめどに改装する計画だ。食品フロアは、専門店を集積した地元のお客様に便利なつくりにしたい。あわせて、設備の更新や一部動線の変更なども行う。イーサイト高崎は、19年3月に「群馬いろは」を一部改装した。その他の部分も時期は未定だが、改装について検討を進めている。
―― 最後に抱負を。
丸山 現在、全施設で売上高は約165億円だが、中期的には200億円を目標としている。一方、売上高の成長が難しいなか、客数をいかに増加させるかも重要だと考えており、情報発信や医療機能・サービス機能の集積なども必要だ。実際に“来てもらう”ことが本当に重要で、リアルの価値を提供する施設づくりを行っていきたい。
(聞き手・若山智令記者)
※商業施設新聞2307号(2019年8月13日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.308