(株)ファーストキャビン(東京都千代田区紀尾井町3-12、Tel.03-3237-8720)は、従来のカプセルホテルの枠にとどまらない、ラグジュアリーな「キャビンスタイルホテル」として急成長を続けており、現在全国で25施設を展開している。JR西日本との協業による新ブランド「ファーストキャビンステーション」の展開や、商業施設内への出店など新たな取り組みも進行中だ。同社代表取締役の来海忠男氏に、これからの展開や地方進出、商業施設内への出店戦略などについて話を聞いた。
―― 2018年度の状況は。
来海 18年度は7店を開業した。大都市圏の稼働率はおおむねこれまでどおりに高水準だ。会員数も150万人に届く勢いで、毎月4万~5万人ずつ増えている。
出店先は東京、名古屋といった大都市のほか、長崎や和歌山、金沢などの地方都市にも出店した。大都市と比べ、地方都市ではまだ認知度や客室稼働率は若干低いが、地方でもファーストキャビンに対するニーズはしっかりと感じており、1~2年後には大都市と変わらない水準になると思っている。
―― ファーストキャビンが地方都市に出店することのインパクトは。
来海 地方都市については、駅前や商業などが衰退していると強く感じている。また、インバウンド需要に牽引されたビジネスホテルの新設も、そろそろ限界が来ていると思う。特に地方都市においては、通常のホテルの新設はこれから難しくなるのではないか。そういう状況があるからこそ、ファーストキャビンに需要が集まっており、そういったニーズに応えていきたい。
―― 18年11月に開業した、ニセコの施設について。
来海 稼働率は高く、18年冬は平均して80%弱で推移した。また開発が急成長しているニセコでは、今後は建設作業員などによる夏季の宿泊需要も期待できる。ニセコだけではなく、例えば富良野のような、今後成長・投資が期待できるリゾート地への出店は有望だと考えており、検討を進めていく。
―― ファーストキャビンステーションの状況は。
来海 1号店の「ファーストキャビンステーションあべの荘」は、稼働率が70%を超え始めており、好調に推移している。ファーストキャビンとしては客室、庭園などの環境・ハード面ではトップクラスの施設であり、今後も有望だ。和歌山の施設も良い滑り出しだ。
3月に開業した、初めての旅館再生案件となる「ファーストキャビンST.京都梅小路RYOKAN」についても、予約は満室に近く、期待できる状況だ。今後は年間で2~3店の出店に挑戦していきたい。
―― 商業施設内への出店について。
来海 商業施設への出店は、好立地であることに加え、施設側にも集客効果というメリットがある。例えば、高層階のレストランフロアのコンバージョン先として、魅力的な選択肢が提案できるのではないか。
初の商業施設内への出店である、ファーストキャビン博多は好調に推移している。他の複数フロアの店舗と比べると、とてもコンパクトにまとめることができており、立地の良好さとも併せて好条件の施設だ。当初は8階への出店ということで不安があったが、現在は稼働率も良く、施設全体への集客効果も発揮していると思う。
3月に東京ドームシティ内に開業した「ファーストキャビン東京ドームシティ」も、こうした実績やラグジュアリーな「キャビンスタイルホテル」としてのブランド力が評価され出店に至った。我々としてもここでファーストキャビンを展開できるのはとてもありがたいと考えており、東京ドームシティというブランドの中でともに価値を高めていきたい。
―― 商業施設へのカプセルホテルの出店について、今後はどうなっていくと思いますか。
来海 商業施設のテナントとしての簡易宿泊所業態は、十分に可能性はあると思う。しかし、それがただのカプセルホテルであれば、逆に商業施設の価値を下げることになるのではないか。重要なのは、その商業施設にふさわしいブランドなどの付加価値にある。その点、我々のファーストキャビンは、百貨店のテナントとしても十分なブランド力を備えていると自負している。
―― 今後の意気込みなど。
来海 我々は、常に「価値の再生」ということを考え、提案し実現している。古い施設の再生については、その機能や集客力、また法規制といった数々の問題がある。我々はこうした問題について、解決策を提案できる数少ない企業だと考えている。今後も我々の能力を活かし、地方都市の再生へ積極的に寄与していきたい。
(聞き手・山田高裕記者)
※商業施設新聞2299号(2019年6月18日)(7面)
インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.47