商業施設新聞
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No.712

盛り上がるサブスク市場


北田 啓貴

2019/7/2

 普段から、「サブスクリプション」(サブスク)という言葉を目にするようになった。製品やサービスの一定期間の利用に対して代金を支払う方式のことで、要は電車の定期券やスポーツジムなどがそれにあたる。そして近年は、音楽の「Spotify」や動画の「Netflix」や「Amazon Prime」などのコンテンツ配信、コーヒー飲み放題やラーメン食べ放題などといった飲食にまで広がりつつある。

 ここまで広がる背景には、手軽に始められるということがある。ネットなどでポチっと登録するだけでサービスを受けられ、月額制なら次の月には解約することだってできる。加えて、動画配信サービスなら月額約1000円前後なので、ブルーレイディスクを購入するよりも約5分の1の価格でサービスが享受できるのも魅力である。

 この概念が今広がっているのが、飲食店である。狙いはリピート率の向上と客単価の増加で、居酒屋であれば、飲み放題料金を定額制にする代わりに一定数の単品メニューの注文をマストにしたり、コーヒーの飲み放題であれば、サイドメニューのついで買いを誘発するなどで、売り上げ増加を図っている。

サブスクリプション家具を導入した「住亭 SHIJO KARASUMA」
サブスクリプション家具を導入した
「住亭 SHIJO KARASUMA」
 そうした状況下、近年さらに広がりを見せているのが、家具や車など「モノ」のサブスクだ。ここに目をつけたのが、宿泊施設事業などを展開している(株)TRASTAである。同社では4月に、家具・インテリア・家電のサブスク事業を行う(株)クラスと業務提携し、TRASTAが2020年までにオープンを目指している18の施設にサブスクの家具を導入していく。メリットは、定期的に家具の交換などを行ってくれるので、買い替えのリスクがなく、常に最新の状態を維持できることである。TRASTAは4月にオープンしたホテル「住亭 SHIJO KARASUMA」や「住亭 MARUTAMACHI」ですでに導入しており、今後開発するホテルにおいても、FFE(家具、什器、備品)経費の削減を見込んでいる。(ちなみにこのサービスの発表後、クラスには他の宿泊事業者からも導入のオファーが来ているという)

 今後、サブスク市場はどうなっていくのか。クラスの久保祐丈社長は「動画配信や飲食のサービスがかなり浸透してきたので、これからは車や家具などのサービスが広がっていくのではないか」と期待を込める。実際に飲食店やレストラン、マンスリーマンション、オフィスでの利用者も増えているようだ。

 確かに、家具のサブスクなら、ホテルや飲食店だけではなく、例えばSCのレストスペースのソファーなどにも展開の余地があり、今後はすべてサブスク家具でまかなわれた商業施設や飲食店が開発されてもおかしくないだろう。サブスク家具でゆったり過ごすことが常態化する日もそう遠くないのかもしれない。
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