電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第329回

ウエスタンデジタル 日本法人社長 小池淳義氏


K1でも共同で装置投資
総合ストレージ企業に脱皮

2019/6/28

ウエスタンデジタル 日本法人社長 小池淳義氏
 米ウエスタンデジタル(WD、日本法人=東京都港区港南1-6-31、Tel.03-4334-7100)は、旧サンディスクのNANDフラッシュ事業を買収し、大容量SSD/HDDも世界規模で手がけるストレージ・ソリューションの大手だ。東芝メモリ(TMC)とは、NAND生産拠点の四日市工場(三重県四日市)で2000年以来、生産提携を行っている。このほど北上工場(岩手県北上市)でも共同で設備投資に踏み切った。WD日本法人の社長を務める小池淳義氏に今後の事業展開などを聞いた。

―― NAND市況の低迷が長引いています。
 小池 足かけ1年以上にわたり価格下落が続いている。19年1~3月期もNANDの平均売価(ギガバイトあたり)は前四半期比23%ダウンしており、厳しい状況が続いている。主要アプリのスマートフォンなどのモバイル、大容量SSDを消費してくれるデータセンター(DC)向けの需要が依然弱いためだ。

―― 市況回復はいつごろですか。
 小池 それは誰にも分からないだろう。19年1~3月期のフラッシュの売上高は前年同期比で3割強落ちている。この1~3月決算でフラッシュのグロスマージンは21%となり、過去1年間で最も低い水準だ。しかし、確実に高速伝送が必要な5G通信規格をはじめ、IoTなどの進展でフラッシュの需要が拡大することは間違いない。年内いっぱいは厳しいかも知れないが、20年以降、新たに需要が刺激されるとみている。我々は常にいつ市況が急回復しても良いように、準備だけはしっかりしておく。
 ちなみに、今年の当社のビット成長は30%を若干上回る程度とみている。

―― 北上工場でもTMCと共同で設備投資を決定しました。
 小池 現在、TMCが北上市に建設中の北上工場・第1製造棟(K1)に導入する製造設備について、共同で投資を行うことを決めた。K1の竣工は19年秋を見込むが、製造装置は近く導入を開始する。市況にもよるが、20年後半に向けて量産を開始する。主力は96層3D-NANDとなる。このため、当社もエンジニアを採用した。ちなみに今年の新入社員は全社で90人強を採用した。

―― 四日市工場の足元の状況は。
 小池 18年から稼働したY6を含め、現在ウエハーの投入量を絞り込んでいる。極端に悪いわけではないが、徐々に在庫もはけ始めており、需給バランスは改善に向かっている。Y6の追加投資はこれからで、需要動向を見極めながら投資する。まずはY6棟を満杯にしてからK1に本格的な量産ラインを整備するという流れになるだろう。
 現在96層TLC/QLCを量産しており、20年前半までには同製品で市場をリードする。ちなみに4~6月には、四日市で製造するNANDの25%以上を96層品が占めるだろう。当社はすでに主力の64層を含む先端3D製品が全生産量の8割強に上っている。

―― ポスト3Dへの取り組みは。
 小池 TMCと共同で開発を進めている。より高積層の12X層以上の3Dフラッシュや、次世代メモリーの1つ、ReRAMなどの研究開発もスタッフを増員しながら開発を加速させている。中期的にもエンジニアの採用は積極的に行っていく。

―― フラッシュの後工程ならびにSSDの一貫生産といったビジネスモデルを強化中です。
 小池 フラッシュの後工程は上海で展開している。コントローラーICなどと組み合わせたモジュールやSDカードなどを主に生産している。また、マレーシア・ペナンでは、ウエハーで供給を受け、パッケージングからSSDまでを15年から一貫生産している。チップ設計・製造から行っている利点を最大限引き出し、付加価値を高めていく。

―― HDDのシェアを落としています。
 小池 シェア回復に向けて、ニアライン対応の大容量品で16テラバイト(TB)や18TB品など、年内をめどに新規投入する。ハイエンドDC向けに需要が旺盛なためで、市場ニーズに迅速に対応する。

―― 国内でもDC用の大容量ストレージシステムを市場投入します。
 小池 IntelliFlashファミリーの製品群から積極的に市場を開拓する。エンタープライズ向けのストレージとして拡販する。そのために藤沢市に専用のトレーニングセンターを今夏までに開設する。改めて、当社はNANDフラッシュのチップ製造から、SSDやHDDといったデバイス、さらには今回のストレージシステムまでのトータルソリューションを展開できる唯一の企業として、業界で存在感を発揮する。

(聞き手・副編集長 野村和広)
(本紙2019年6月27日号1面 掲載)

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