(株)プリンスホテル(東京都豊島区南池袋1-16-15、Tel.03-5928-1111)は、ホテル事業において「プリンスホテル」を中心に国内4ブランド、海外5ブランドの計9ブランドを展開している。国内外ともに新ブランドを開発したほか、海外では2017年度に事業取得したStay Well Holdings(ステイウェル)を通じた出店強化などに取り組んでおり、現在、国内外で74店のホテル数を、中長期的に計250店とする目標を掲げている。同社執行役員事業開発部担当兼事業開発部長の網藏二郎氏に話を聞いた。
―― 国内外のホテル数について。
網藏 ホテル数(FC、MC含む)は、5月現在で国内43店、海外31店の計74店を展開している。国内は、「プリンスホテル」ブランドが中心となるが、フラッグシップでラグジュアリータイプの「ザ・プリンス」、宴会やMICEなどでも利用される上質なサービスを提供する「グランドプリンスホテル」、そして、機能性と利便性を追求した宿泊主体型の新ブランド「プリンス スマート イン」(スマートイン)の4ブランドを保有し、幅広いお客様に対応している。
海外は、ステイウェルが元々保有していたブランドに加え、海外向けのラグジュアリーブランドとして「The Prince AKATOKI」を開発し、現在は5ブランドをもって展開を行っている。
―― 足元の状況は。
網藏 例えば、17年のRevPARは既存事業の強化などが寄与し、マーケットの成長率を2倍以上上回る7.3%の成長率となった。これは、稼働の上昇はもちろん、単価を意識した施策がうまくいったことも要因の一つだ。
足元の業績も非常に好調で、既存事業に加え、注力する新規事業も堅調に推移しており、18年度の3Qを見ても良い状況であると思う。
―― スマートインについて。
網藏 リーズナブルな価格帯、機能性や利便性、効率性などを実現するブランドとして新設した。ミレニアル世代、デジタル世代のお客さまに焦点を当て、AIやIoTなどを活用した形のホテルとなる。効率性という意味では、キャッシュレスをはじめ、AI・IoTを駆使して予約やチェックイン・アウトをスマートフォンで行うといった取り組みを検討している。1店100~150室程度が標準モデルとなるだろう。
客室は十分な広さを持たせ、ベッドや寝具にもこだわる。昔からある、いわゆる「ビジネスホテル」よりも上質さ、こだわりを持たせる。また、ライフスタイル型ホテルの動きも意識し、ベンチマークするブランドに育てていく。1号店は、20年夏ごろに東京・恵比寿に出店する予定だ。
―― 現在の取り組みについて。
網藏 既存領域では、既存ホテルの改修は随時行っている。当然、時代の流れについていかなければならないし、それはハード面だけでなく、すべての面において言えることだ。新たなニーズへの対応では、「プリンスバケーションクラブ」という、会員制ホテル事業を推し進めている。
開発では、スマートインを中長期で100店体制とするのが、目下の目標だ。宿泊主体型は今最もニーズが高く、当社としても新しい客層への訴求ということで、強く推し進めていきたい。
―― 既存ブランドも含めた今後の展開エリアは。
網藏 当社は北海道、長野、関東地方にホテルが多く点在しているため、スマートイン以外でも、まだ進出できていないエリア(=未補完地区)に機会があれば出店したいと思っている。
スマートインは効率性と利便性が高いので、首都圏のみならず地方都市、インバウンドや国内出張を含めてお客さまが多くいらっしゃるようなところに積極的に展開したい。その中で、ドミナント展開もあり得る。この規模のブランドならば、ニーズがあれば同エリアに数店舗を展開することも可能だ。また、仮に当社の他ブランドが同エリア内にあったとしても、スマートインの出店意義がある場合には展開していきたいと考えている。
―― 東京・潮見にプリンスホテルを計画中です。
網藏 20年7月、東京・潮見に客室605室の「東京ベイ潮見プリンスホテル」を開業する予定だ。東京は需要が強いので、補完地区であっても出店を行う。また、潮見は「今後も明るい材料がある」「インバウンド、MICEなどのお客さまの利用」を考えた時に、ここに出店することは非常に合理性があると考えた。
―― 今後の目標は。
網藏 国内は、中長期でスマートインを100店展開したい。海外は、最高級ブランドの「The Prince AKATOKI」を、大きなマーケットや大都市圏に出店していきたい。加えて、ステイウェルが持つ既存ブランドを開発して広げていき、海外ではおよそ10年で100店体制としたい。これによりスマートイン100店、海外100店とし、既存ホテルを合わせると国内外で計約250店になるので、この規模感を、スピードを持って構築していきたい。これには新規事業、既存事業の両輪がうまく回る必要がある。両事業を進化させることで、持続的な成長を目指す。
また、ホテル事業に加えてレジャー事業も同時に成長させ、より高い利益率の獲得も目指す。
(聞き手・若山智令記者)
※商業施設新聞2296号(2019年5月28日)(7面)
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