大和ハウスグループの(株)コスモスイニシア(東京都港区芝5-34-6)は、都市型アパートメントホテル「APARTMENT HOTEL MIMARU」を2018年2月に東京・上野で開業して以来、4月中旬時点で9店(東京都6、京都府3)に拡大している。運営状況と今後の事業戦略について、同ホテル運営会社である(株)コスモスホテルマネジメント 代表取締役社長の藤岡英樹氏に聞いた。
―― 「APARTMENT HOTEL MIMARU」のコンセプトについて。
藤岡 “暮らすように滞在する”を主題とし、訪日外国人旅行者などのグループでの中長期滞在の需要に対応している。
当ホテルは、(1)ダイニングスペースを備え4人以上で快適に過ごせる空間、(2)客室内にキッチンや調理器具などを常備し、共用部にランドリールームを備えることで叶う、暮らしの延長線上にある自由な過ごし方、(3)都市部や観光地などにアクセスしやすいことで可能となる様々な体験、の3つの特徴がある。1室40m²程度の広さを中心とし、1室ごとの料金設定にしている。「MIMARU」というブランド名には、旅先で過ごす団らんの時間を皆で共有し、そこで生まれる会話によって、思い出をより深めてもらいたいという思いが込められている。
―― 客層はどのような状況か。
藤岡 第1号店である東京の「上野NORTH」は、90%以上が外国からのお客様で、その中でも台湾からが30~40%を占め一番多い。ほかにも香港、タイ、豪州、中国、韓国からのお客様が多い。上野のホテルは、新幹線へのアクセスが良く当社ホテルからの日帰り旅行も人気だ。当社のホテルは、4~9人の宿泊に対応しているので、父と母、お子様の4~5人での家族旅行で来日されるお客様が多く、子どもの宿泊比率が日本一高いホテルと言えるかもしれない。お客様は5~6日間日本に滞在される方が多く、滞在期間中に当社のホテルには平均して3~4日間宿泊される。その後、また別の地域のホテルに宿泊されるようだ。
―― 稼働率や、客からの反応が良い。
藤岡 ホテル稼働率は平均して90%前後で、予備の部屋を確保しておかなければならないことを勘案すれば満足のいく数値である。お客様からの反応も良く、トリップアドバイザーのランキングでは、上位5位内に当社のホテルは3店が入っている。同ランキングでは、スタッフへの満足度が項目別では一番高い。当社ホテル内にはレストランがなく、外国からのお客様が多いため、お薦め観光スポットやレストランをご案内するなどのスタッフの対応について評価いただいたと考えている。またホテルスタッフも外国人が大部分で、最低でも日本語と英語の2カ国語に対応している。
―― 店舗展開の状況は。
藤岡 18年2月に東京・上野で開業して以来、19年4月中旬時点で合計9店を展開している。19年になってからは、京都・西洞院高辻と東京・八丁堀で、それぞれ3月と4月に新規開業した。7月以降には、京都STATION、京都・烏丸御池NORTH(夏)、京都・河原町五条(冬)のほか、東京で新富町(冬)、新宿(20年春)の開業を予定する。東京・新宿では20年内に2店の開業を予定。渋谷でも開発したいのだが、同地は不動産価格が高騰しているのが難点だ。
また、3月には大阪市西区で1店を着工しており、当社として同市初のホテルが20年夏ごろに開業するだろう。21年3月には全体で1500室体制を目指しており、19年1月末までに1200室に達している。
―― 全1500室体制を達成した後、21年以降の外国人観光客の動静や経済情勢をどうみる。
藤岡 五輪終了後一時的に経済が鈍化するのは、どこの国でも共通している。ただし、外国人観光客が減ることはないだろう。その国が経済不況だからという理由で、海外旅行をやめたという話は聞いたことがない。その国の経済情勢と、外国人観光客の動静は別ということだ。
世界で最も海外旅行先として人気があるフランスでは年間8000万人の旅行者が訪れると聞いている。同国の人口は日本より少ないことなどを考えると、日本への外国人旅行客も同数程度まで増加してもおかしくはないと考える。昨年は、大きな自然災害により、旅行者にも多大な影響を与えた。自然災害が起こらないことを願う。
(聞き手・笹倉聖一記者)
※商業施設新聞2292号(2019年4月23日)(7面)
インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.39