商業施設新聞
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第176回

三井不動産(株) ホテル・リゾート本部 ホテル事業部長 小田祐氏


20年度に客室1万室が目標
新ブランド確立、海外強化を推進

2019/4/16

三井不動産(株) ホテル・リゾート本部 ホテル事業部長 小田祐氏
 三井ガーデンホテルブランドを中心に、全国でホテル事業を展開するのが三井不動産(株)(東京都中央区日本橋室町2-1-1、Tel.03-3246-3131)。最近ではハイクラスのブランドである「ザ セレスティンホテルズ」の展開に乗り出すなど事業領域の拡大戦略を推進しており、2020年度には客室数1万室を目標としている。今後の展開について、ホテル・リゾート本部 ホテル事業部長の小田祐氏に伺った。

―― 現在のホテル数と足元の状況は。
 小田 1月に三井ガーデンホテル金沢をオープンしたことにより、26ホテル6703室となった。19年度は6ホテル約1550室、20年度には10ホテルで約2000室をオープン予定であるため、中期目標の20年度の客室数1万室は達成できる見通しである。
 既存ホテルの状況は、昨年は地震などの特殊要因を除けばいずれのホテルも稼働率は90%前後で好調に推移している。インバウンド需要も順調な外国人客の増加に伴い、東京、大阪、京都エリアのホテルを中心にその割合は高まっており、この3エリアにおいては約5割が外国人観光客という状況だ。

―― 貴社のホテル事業の強みと差別化について。
1月にオープンした三井ガーデンホテル金沢
1月にオープンした三井ガーデンホテル金沢
 小田 全国的なホテルチェーンの場合、ハード・ソフトともに画一的施設であることも一般的に散見されるが、当社は総合デベロッパーとして多方面でのもの作りや事業展開を行っており、それぞれの土地が有する歴史、文化といった体験価値の提供を意識したハード・ソフトをとことん追求しているのが強みと言える。そうなるとホスピタリティのあり方や施設の作り方も変わってくる。ここにもの作りとして当社のこだわりがあり、案件ごとに地域性やハード、お食事、ホスピタリティを追求している。
 一方、そうした施設作りは我々だけでは実現しえない。例えば今年1月に開業した三井ガーデンホテル金沢だが、和風の施設を作れば金沢らしいという単純なものではない。我々が把握でき得る文化性には限界があるので、やはりもの作りの際には地元で活躍されるそれぞれの領域の専門家の方々との協働によりこれを実現している。
 また、そこに訪れるゲストの嗜好性も広がる中で、単一ブランドで対応するよりも複数の受け皿で展開する方が顧客ニーズに応えられる。ワンランク上質になると顧客の求めるものが変わり、さらに上のホスピタリティを提供することでチェーンとしての幅を持たせることができるし、セレスティンホテルで学んだものをガーデンホテルに活かすこともでき、チェーン全体の力になる。

―― 出店の進め方は。
 小田 政令指定都市や地方都市で観光要素のある街がターゲットとなる。ただ、最近では、例えば瀬戸内界隈が海外で注目を浴びるなど、世界に映る日本の街の魅力も時々刻々と多様化してきており、そのような都市を探し出すことも重要である。
 ホテルの出店ブランドでは、ゲストとの距離感も近く、細かなニーズの把握が可能な150~200室規模で、プライベート感やゆったり感を持たせられる条件が整った場合にはセレスティンホテルを展開したい。ガーデンホテルとプレミアについては、都市の機能性を有し利便性が高い土地である場合には、今後も積極的展開を図りたい。
 客室数はおおむね250~300室で、料飲施設、大浴場の併設を基本とするが、大浴場は単に体を洗うといった機能面だけでなく、日本の文化を楽しみ、旅情に浸りながらリフレッシュしていただく施設を考えている。

―― 東京五輪後の市況について。
 小田 オリンピック後にはホテル景気の減速について懸念する声があるが、さらなる日本の魅力がきちんと伝わっていけば外国人観光客は五輪以降も4000万~5000万人時代を迎える可能性が強く、国内外需要とも順調に推移すると見ている。過去にオリンピックが開催された都市を見ても、それを契機に認知、評価されており、日本の観光資源、治安の安心安全な状況を考えれば、さらに日本の魅力を訴求することができ、インバウンドの需要が下支えになると見ている。

―― 今後の展開は。
 小田 まずは、20年度に客室数1万室を達成するのが目標となるが、その後は従来どおり三井ガーデンホテル、セレスティンホテルを展開するとともに、デジタル化世代が今後主流になっていった場合、そのライフスタイルや嗜好の変化にも注視したホテルの在り方も考えていく必要がある。
 一方でグループの海外事業強化に伴い、ホテル事業も同様に積極展開を進める。この一環として、台湾で3件目となるホテルの「(仮称)敦化北路ホテル」(185室)に参画することを決定した。国泰建設股フン有限公司とホテルの開発を進めるもので、24年の開業を目指している。
 当社はすでに台北市内で「(仮称)忠孝新生ホテル」(約300室、20年開業)と「(仮称)中山忠孝ホテル」(約350室、22年開業)の2ホテルの開発を計画している。今回計画する「(仮称)敦化北路ホテル」は、アッパーグレードの宿泊主体型ホテルとして運営する計画である。当然、その他のアジアでの都市の展開についても次のターゲットとなる。

(聞き手・副編集長 永松茂和)
※商業施設新聞2287号(2019年3月19日)(7面)
 インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.34

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