スクウェア・エニックスグループの(株)タイトー(東京都新宿区新宿6-27-30)は、創業65年の歴史を持ち、「スペースインベーダー」や「電車でGO!」などの大ヒットゲームを世に送り出してきた。楽しさだけでなく、新たな驚きやワクワク感をも提供したいという、同社取締役 執行役員 オペレーション統括本部 統括本部長の田村雅壽氏に事業戦略を聞いた。
―― アミューズメント(AM)産業界が活況だ。
田村 外国人観光客を含め、UFOキャッチャーなどのクレーンゲームが人気だ。集客と収益はここ3年間ほど右肩上がりである。これは、ゲームの景品製造各社がアニメなどのキャラクターを駆使し、スマホや携帯コンテンツなどのアクセサリーを、様々な形で、お客様の要望に合わせて魅力的に変えて提案していることが大きく貢献している。
―― キャラクターやIP(知的財産)では、何が人気か。
田村 当業界では、景品として映画コンテンツで人気のIPを活用したぬいぐるみから雑貨までシリーズ化している。1つ目のキャラクターが2つ目、3つ目へと派生し、大人から子供まで楽しんでくれている。また、当社でも景品を企画開発する部隊を持ち、この春はミッフィーを導入できることになった。景品の流行の速度が速いので、1カ月ごとにアニメのIPを使った景品やフィギュア(人形)を、流行のものを投入して対応しなければならない。適正数を適正な店に導入することが不可欠だ。
―― 外国人観光客の利用率をどう見ているか。
田村 全体の数%程度とみている。クレーンゲームや、自動車などのドライブゲームに興味を持たれる傾向があり、景品では日本の精緻なフィギュアも大人気である。東京・秋葉原の店舗では、中国と韓国からのお客様が多い。
―― 出店状況と、FC展開について。
田村 店舗は、北は北海道のイオンモールから、南は鹿児島のアミュプラザ内まで150店以上を展開している。そのうち直営は約100店、FCは約50店を数える。FCはここ11年で店数の伸び率が大きい。当社のマニュアル、仕入れ、機械や景品の選定、スタッフ教育などが高評価をいただいているのだと思う。
―― SCなどへの郊外型出店と、駅前の繁華街へ出店する2通りの出店形態がある。
田村 SCの店舗では、家族3世代のファミリー層、繁華街の店舗ではグループやカップルなど若者のお客様が多い。各地域でワクワクドキドキ感の提供を心掛け、繁華街店での知見をSCの店に活かしている。駅前繁華街とSCへの出店比率は4対6のイメージだ。当社はショッピングモールへの出店が多い。
―― 新規出店について。
田村 最近の新規出店は年間10店以上(FC含む)で進めており、そのうち直営店は年間2~3店の出店傾向である。要望があればどこへでも出店するが、今後は名古屋駅周辺、京都府内、岡山県内など現在空白となっている地域への出店を考えたい。海外への直営での出店は考えていない。FCであれば検討したい。
―― 繁華街店では、川崎市の溝の口で新タイプのAM施設を開いた。
田村 2017年10月に開店した新業態の「MEGARAGE」(アーケード・ライブ・バー)では、ゲーム開発者のトークイベントや、地場のミュージシャンによるイベントを開いたり、カフェを備えたことでお客様の交流スペースとして活用いただいている。溝の口以外の他の店舗でも、クレープなどの軽食を提供する飲食店を備えた業態を展開しており、女子高校生などから人気がある。
―― 観光地への提案では、メダリーフ(オリジナルメダル作成機)の設置サービスを行っている。
田村 好きなデザインを選びボタンを押すと、無地の銅板が圧延し楕円形に刻印される機械で、全国の動物園、水族館、観光地に機械を貸し出している。旅行者からは記念になると人気がある。
―― 高齢者向けにひざ掛けなどを提供するサービスが話題になった。
田村 今はメダルゲーム用の手袋や膝掛けに加えて、健康のために血圧計、体重計を貸し出している店もある。畳式のベンチやお茶のサービスもある。細かな気配りやサービスは、店舗ごとの現場スタッフに任せており、シニアのお客様には、当社のアミューズメント施設を交流や、健康づくりの場として活用していただければよいと考えている。高齢化社会では、リアル店舗でリアルな交流が欠かせない。当社の一部の店では、車いすのお客様にも楽しんでいただいている店もある。
(聞き手・笹倉聖一記者)
※商業施設新聞2286号(2019年3月12日)(6面)
活況のAM産業に聞く No.2