商業施設新聞
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第173回

アパグループ 代表 元谷外志雄氏


次の拡大戦略は寡占化と海外
シェア10%獲得しトップ固めへ

2019/3/26

アパグループ 代表 元谷外志雄氏
 ホテル業界のトップ勢力として躍進を続けるアパグループ(東京本社=東京都港区赤坂3-2-3、Tel.03-5570-2113)。同社は2015年4月からホテルの拡大戦略を全国へ広げ、20年3月までに客室数10万室を目標とする第2次頂上戦略(SUMITT5-II)を推進している。次のステップとして、国内でマーケットシェアの10%を獲得し、業界No.1としての確固たる地位を確立し、海外での拡大戦略を推進する方針だ。同社の元谷外志雄代表に今後の事業展開などについて伺った。

―― 順調に事業が拡大していますね。
 元谷 現在、アパホテルネットワークは、498ホテル・8万3415室と全国最大のネットワークに成長し、国内のマーケットシェアで4%程度に達している。売上高も18年11月期連結決算で前期比18%増の1300億円、経常利益は同3%増の360億円を達成できる見通しだ。
 要因として、千代田、中央、港区の都心3区でトップシェアを獲得すべく頂上戦略(SUMITT5)を推進したことが挙げられる。10年4月から「一点突破・全国展開」をキーワードにスタートした戦略であるが、当時は、リーマンショック後でファンドバブルが崩壊し、土地代が現在の3分の1程度に下落した時に都心3区に絞り積極投資を行ったのが奏功した。これにより東京都心でFCを含め79ホテル・1万8945室まで拡大することができた。これは、頂上戦略を開始したタイミングや場所だけでなく、全株オーナーのメリットを活かし、土地購入をスピーディーに決断できたこと、住宅産業で培ってきた設計力・プラン力により競合他社と比較して客室数を1割程度多く作れたことも一因だ。

―― 新都市型ホテルを標榜しています。
3月19日に開業するアパホテルプライド〈国会議事堂前〉の完成イメージ
3月19日に開業するアパホテルプライド
〈国会議事堂前〉の完成イメージ
 元谷 アパホテルでは、ただ単に「スペース」を売るホテルではなく、「満足」を売るホテルとして、高機能・高品質・環境対応型を基本理念とする「新都市型ホテル」を展開している。現状のホテルに満足するのではなく、進化するアパホテルとして、新築ホテルが開業するごとに新しい設備やサービスを導入している。3月1日からは「進化するアパホテルアイデアコンテスト」(金賞30万円)を開催予定で、社員だけでなく取引先やユーザーからもアイデアを募集するなど、アパホテルの進化をさらに加速化させる方針だ。当社はホテル業界のリーディングカンパニーであるため、積極的に新しい設備やサービスを行っていく責任もある。

―― 中期経営計画の第2次頂上戦略の進捗は。
 元谷 15年4月1日からスタートした第2次頂上戦略(SUMITT5-II)では東京都心から地方中核都市へと全面展開を進めており、目標の客室数10万室はほぼ達成できる見通しだ。アパホテルの拡大戦略を加速できたのは、ホテルの巨大化とドミナント戦略が挙げられる。全2007室のアパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉を運営している実績があり、他社にない大型ホテルの運用ノウハウがある。大型ホテルは小型ホテルに比べて人件費など経費の比率を下げることで、収益の最大化を図ることができる。また、ドミナント戦略で、同一エリアに複数ホテルを運営することは新任支配人のフォロー体制を構築できる。これにより、20代の若手社員を積極的に支配人に登用することが可能で、経験と実績を積ませることができ、拡大戦略に必要な多くの支配人を育てる環境を整えることができた。

―― 拡大戦略とともにブランドアップやリスクヘッジも。
 元谷 当社では13棟のタワー型ホテルの展開や北米チェーンの取得など、知名度だけでなくブランド力を上げてきた。3月に開業予定のアパホテルプライド〈国会議事堂前〉(500室)や9月開業予定で日本最大客室数のアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉(2311室)は、1棟で考えると建築費・土地代などが高く、一般的なホテルと比べ投資利回りは低いものの、アパホテル全店の売り上げ・利益の最大化を図るためのブランドアップに大きく寄与するホテルである。
 また、日本国内において訪日外国人の宿泊数は増加の一途をたどっているが、観光大国化における1番のリスクはパンデミック(感染症・伝染病)であり、2番目のリスクは戦争、3番目のリスクは東日本大震災のような自然災害である。インバウンド集客にはカントリーリスクがつきまとうが、当社は他社と比較しても中国シェアが圧倒的に少ないことからリスクの分散に成功している。

―― 今後のホテル業界と第三次頂上戦略は。
 元谷 20年4月からの第3次頂上戦略(SUMITT5-III)は、寡占化戦略と海外戦略である。日本の観光産業は中長期に伸びていくと考えているが、東京オリンピック・パラリンピックの開催後は一時的なオーバーホテル現象が起きると見ている。アパホテルではオーバーホテル現象の逆境を絶好のチャンスと捉え、M&Aなども駆使しながら積極的に拡大戦略を推進し、国内ホテルシェア10%超えの寡占化一番乗りを目指していく。マーケットシェアを拡大することにより、直営のアパホテルのライバルはフランチャイズのアパホテルという自社競合の図式も考えられる。
 一方、海外戦略では経済成長著しいアジア圏で、アパホテルの知名度の高い国に出店を進める方針だ。具体的には台湾、韓国、香港、シンガポール、タイなどが挙げられる。宿泊サービスは、技術革新により進化することはあるが、消滅することのない国内外を問わず安定した業界である。アジア圏でのマーケットシェアを上げれば今後も無限の可能性が続くと見ている。

(聞き手・副編集長 永松茂和)
※商業施設新聞2284号(2019年2月26日)(7面)
 インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.31

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