東急不動産グループが手がける宿泊特化型ホテル「東急ステイ」。東京中心から、地方都市への展開や、新しいカテゴリーのホテル運営も始めた。東急ステイサービス(株)代表取締役社長の小先文三氏に聞いた。
―― 概要から。
小先 当社は、不動産の開発など手がける東急ステイの100%子会社で、ホテル運営を担う。「東急ステイ」は全国に23店を展開し、そのうち東京が18店を占める。2017年11月の京都開業を皮切りに、18年4月に札幌、6月に博多、11月に札幌大通、12月に京都新京極通を開業した。今月、天神にオープンすると、札幌、京都、博多でそれぞれ2店ずつとなる。
―― 主な客層は。
小先 ビジネス利用が主だったが、銀座と新宿でレジャーや訪日客が7~8割に増えてきたことから、訪日客もメーンターゲットと意識し、金沢、高山、大阪、那覇、函館に出店する。最近は訪日客の長期滞在が増えている。銀座でも4泊程度の滞在が多く、洗濯機やキッチンを装備している東急ステイの特徴が活かせている。
―― 今年はラグビーのW杯があり、多くの訪日客が見込まれます。
小先 欧州やオセアニアを中心に、引き合いをいただいている。開催期間中、東京やリゾート地でツアーの要望もあり、滞在型は強みがある。
―― 稼働率は。
小先 17年で全店平均が94%だが、昨年オープンした地方店で稼働率7~8割で、認知はこれから。今後は稼働率よりも、お客様に価値を感じていただけることに注力したい。宿泊需要は好調なので、単価を上げていく。ビジネスとレジャーを両方取り込む。
―― 具体的には。
小先 地方都市でもビジネスの需要が獲得できるエリアと、レジャーが主体になるところがある。レストランとの提携や、レジャー目的の方が喜ぶ大浴場などに対応する必要がある。また、標準の客室面積は18~20m²だが、30~40m²の広めの部屋を用意して単価を上げるなど、バリエーションを増やしている。
―― 各社はライフスタイル型に力を入れていますが。
小先 トライしていきたい。それぞれ地域の特徴を生かしたものもある。東急不動産グループはデベロッパーとして地域と密着して何かを仕掛けるというのは強みがある。地域と連携したホテルができるのが理想。いろいろ検討している。
ただ、安易にライフスタイルに振れてしまうと、我々の滞在型の良さを損なってしまう懸念もある。そこは崩したくない。
―― ラグジュアリーについては。
小先 東急不動産は「旧軽井沢ホテル」を取得し、18年4月に「KYUKARUIZAWA KIKYO, Curio Collection by Hilton」として開業したが、当社は同ホテルの運営を担っている。いわゆるスモールラグジュアリーと言われるカテゴリーだ。こうした事例があれば積極的に運営を担いたい。また、旅行業を昨年秋から始めた。宿泊だけでなく国内外の富裕層向けにちょっとしたツアーの手配など、コンシェルジュ的な役割ができないかと、模索している。
―― 当面の目標は。
小先 20年度に30店・4400室を目指している。
―― 大阪は万博開催が決まりました。
小先 19年度に「大阪本町」を開業するが、良い物件があれば、今後も展開していきたい。楽しみなエリアだ。
―― 海外進出について。
小先 まずは訪日のお客様にサービスを提供することが最優先。当社のホテルに泊まっていただき、知名度を高めて行き、いずれグローバル展開したい。
―― 人手不足の対策は。
小先 働きやすさや時間外労働が起きないなど、いろいろ工夫しており、当社の離職率は業界の平均より低い。最近は女性社員が増えている。また、5年前から新卒採用を本格化したことから、20代半ばの社員が多い。新卒者が増えて、元気のある会社というイメージが高まっている。
海外のお客様増加に合わせて外国人の社員も増えており、今年度からはアジア人の採用を増やしている。
―― AIなどのテクノロジーは。
小先 現在、チェックイン機を使っている。東急ステイはお客様に長期滞在して頂くことが多く、他のホテルより清掃などの負担は少なく、人手の配置では、優位性がある。ただ、これからはAIやIOTを検討していく必要がある。
―― 今後の抱負を。
小先 滞在型ホテルとしてのポジションを築き、スタッフが自慢できるホテルにしたい。しっかりとした品質を担保するなどの点を地道に追求していく。そういうところに目線を置くことで、社員がホテルを大切にするし、ホテルが社員を大切にする。その思いが浸透すればいい会社、いいホテルになり、人材、お客様も集まると思う。
(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2282号(2019年2月12日)(7面)