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第310回

セイコーエプソン(株) ロボティクスソリューションズ事業部 事業部長 吉田佳史氏


産業用ロボットの製品群を拡充
25年度までに生産体制3倍超に

2019/2/8

セイコーエプソン(株) ロボティクスソリューションズ事業部 事業部長 吉田佳史氏
 セイコーエプソン(株)(長野県諏訪市大和3-3-5、Tel.0266-52-3131)は、小型の産業用ロボットをグローバルで展開しており、スカラロボットは世界トップシェアを有する。また現在、中期的な市場拡大を見据えた製品群や生産体制の強化も進めている。ロボティクスソリューションズ事業部 事業部長の吉田佳史氏に話を伺った。

―― 2018年度におけるロボット製品の需要動向について。
 吉田 18年度におけるロボティクスソリューションズ事業部(産業用ロボットやICハンドラーなどで構成)は、好調だった17年度の勢いを継続するかたちで4~6月期は堅調に推移したが、米中貿易摩擦の影響が色濃くなってきた7月以降は、当社の主力市場である中国の電機・電子分野で設備投資が先送りになる案件が増えており、当社のロボット製品の需要も弱含みで推移している。一方で、それ以外の地域は販売が拡大しており、欧州や米州は車載関連を中心に堅調で、国内でも人手不足を背景にロボット製品への需要が高まっている。

―― 製品群について。
 吉田 主力製品のスカラ型を中心にラインアップの強化を図っている。その1つとして可搬重量10kgタイプの「LS10」の受注を18年11月より開始した。シンプルな組立作業や搬送工程などに適したLSシリーズは可搬重量3kg、6kg、20kgを展開していたが、10kgタイプを加えたことで、より幅広いニーズに対応できるようになった。また、コントローラー一体型のスカラロボットであるTシリーズにおいて、T6(可搬重量6kg)を18年5月から発売し、LS10とともに強い引き合いをいただいている。また現在、スカラ型の人協調型ロボットの開発を進めており、19年度内の市場投入を予定している。

―― 垂直多関節ロボットも強化されています。
製品ラインアップを強化(写真はVT6)
製品ラインアップを強化(写真はVT6)
 吉田 小型6軸ロボットの「N6」および「VT6」(いずれも可搬重量6kg)を18年に市場投入した。設計を一から見直すことで、コストパフォーマンスや省エネ性能の向上を図った製品だ。そのうち、N6は独自に開発した折りたたみ式アームにより、省スペースで効率的な動作が可能で、アーム長を1000mmへとロングアーム化した。VT6は設置が簡単で低価格なエントリーモデルで、電子部品や加工品の検査装置への搬送やマシンテンディングに適している。

―― 生産面での取り組みは。
 吉田 ロボット製品は長野県内にある協力会社と中国・深セン市の拠点で生産している。加えて、豊科事業所(長野県安曇野市)の既存棟を改修して、延べ約3522m²のロボット生産ラインを整備し、18年末から本格的な稼働を開始した。新しいラインでは双腕型産業用ロボット「WorkSense(ワークセンス)W-01」の生産などに加え、ロボットの組立を効率的に行える生産ラインの研究開発も行っている。こういった取り組みとともに、中期的な需要増を見据えて深セン市の拠点での増強なども検討していき、25年度までに生産体制を18年度(計画値)に比べて3.5倍程度に引き上げていく方針だ。

―― ワークセンスについて教えて下さい。
 吉田 「見て、感じて、考えて、働く」といった要素を持つ自律型ロボットで、頭部カメラやアームカメラによって、人間の目のようにワークを認識。設置場所を変更してもプログラムを変更せずに即座に作業が行え、7軸アームの経路、姿勢、障害物の回避を自ら考えることもできる。独自の力覚センサーを搭載したロボットアームで繊細な組立や搬送作業が実現でき、部品を押さえながらネジ締めするといった左右別々の作業にも対応する。18年2月から出荷を開始しており、現在はお客様と連携しながら、ワークセンスを活用したソリューションの構築を進めている。

―― ロボット関連の電子デバイスについて。
 吉田 当社には水晶デバイスや半導体など扱う部門もあり、19年は自社製センサーを用いたロボットシステム用の周辺装置を投入する予定だ。ロボットの開発面からみると、電子デバイスには小型化、放熱性、長期かつ安定的な供給体制などに加え、省エネ化を図るうえで、コストパフォーマンスの高いパワーデバイスの必要性が高まっている。

―― 今後の方針について。
 吉田 米中貿易摩擦の影響がどこまで長期化するか見えない部分はあるが、中長期的な視点で見て、ロボット市場は拡大が見込まれる分野であり、需要が踊り場を迎えた今だからこそ、製品群などをしっかりと拡充し、将来的な市場拡大に備えていきたい。販売地域の拡大も重要なテーマに据えており、セイコーエプソングループが持つグローバルのネットワークを活かしながら、すでに展開している地域でのさらなる拡販とともに、インドなども含めたアジアや中南米など新興国向けも強化することで、25年度にはロボティクスソリューション事業で売上高1000億円(17年度は246億円)を目指していきたい。

(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2019年2月7日号9面 掲載)

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