(株)JR中央ラインモール(東京都小金井市本町1-18-10)は、武蔵小金井駅などの中央線沿線で、商業施設「nonowa」を展開している。3月には武蔵小金井駅で、「nonowa武蔵小金井」第3期開発にあたる「ムサコガーデン」を開業した。また、中央線の高架に沿って遊歩道「ののみち」を整備するとともに、高架下に店舗を設置した空間づくりでも注目を集めている。同社の現況や今後の展開について、8月に新しく代表取締役社長に就任した石井圭氏に話を聞いた。
―― 運営施設などの現況について。
石井 現在、武蔵境、東小金井、武蔵小金井、西国分寺、国立の5駅で駅直結の商業施設「nonowa」を展開しており、このうち3駅では駅の運営も受託している。直近では4月に武蔵小金井で第3期開発にあたる「ムサコガーデン」を開業したほか、9月には西国分寺の施設をリニューアルした。また武蔵小金井では、2016年12月に「セレオ武蔵小金井」が「nonowa武蔵小金井south」となり、当社が運営している。
駅間の高架部分では、全9kmの区間中の約3kmで、高架に沿った遊歩道「ののみち」を整備している。そしてそれに沿う形で高架下に24店の店舗が展開している。駅部と高架下の店舗を合わせると現在約140店が出店しており、17年度は120億円(対前年比6%増)の売り上げとなった。成長傾向は続いており、18年度は売り上げ130億円を目指している。
―― 駅部の施設について。
石井 テナントは食品・食物販が多く、売り上げもそれらのテナントが安定している。地元の方々や通勤客、また近隣大学の学生が主な客層だ。地域の方々や近隣大学とはつながりが深く、地域イベントを度々行っている。
またこれは当社自身での運営だが、子ども向けロボットプログラミング教室の「プログラボ」を、武蔵小金井のムサコガーデンと国立駅、中野駅付近で展開している。先立って展開している中野校と武蔵小金井校はいずれも好評で、10月に開業した国立校も順調だ。中央線沿線は教育熱心なご家庭が多く、こうした地域の需要に合った施設であり、また一種のコト消費テナントとして今後有望な事業だ。
加えて、当社は駅と商業施設を共に運営しているため、トラブルなどの際に駅・商業施設担当で人員を融通し、丁寧な対応を可能としているのが強みだ。
―― 駅間の高架下にも店舗が展開しています。
石井 高架下にはサービス店舗などに加え、地元のカフェや飲食店、雑貨店が出店している。またシェアオフィスのような新しいタイプの施設もある。
駅部のnonowaでは、営業時間や休業日などについてルールがあり、ある程度規模のある事業者でないと出店が難しいが、高架下はその対象外のため、小規模な地元事業者でも出店しやすい。そのため雑貨やカフェなどの小規模ながらも中央線らしい、クリエイティブさがあるスタートアップ事業者の出店につながっている。また、今後そういった事業が軌道に乗り規模を拡大することになった際には、nonowaに出店していただければ、といった期待もしている。
―― 商業施設や「ののみち」拡大の可能性は。
石井 当社が展開するエリアでの高架下面積は約7万m²で、現在は駅部で1万m²、駅間で4000m²が開発済みだ。高架下以外も含めれば約2万1000m²で開発を行っている。鉄道施設や法規制などもあるので100%を開発することはできないが、今後も開発は進める計画だ。
駅部の商業施設については、リニューアルは今後も続けていくが、拡大という点ではいったん完了したと考えている。今後開発を広げていくのは駅間になる見込みで、国立―立川間など比較的空いている部分で「ののみち」の延伸や店舗開発を行っていく。
―― 中央線沿線エリアをどう見ていますか。
石井 我々のエリアである三鷹・立川間だけではなく、新宿や中野、立川など特色ある駅が揃った、多様性があるエリアだと思っている。また沿線住民にはニューファミリー層も多く、十分なポテンシャルがある。こうした多様な需要に対し、しっかりとした質の高い店舗を揃えることで応えていきたい。
―― 今後の抱負を。
石井 我々の企業理念は、地域に根ざした存在として、中央線の沿線価値を向上させること。そのためには地域連携を一過性のイベントで済ませるのではなく、地域の方々のビジネスにも貢献し、お互いにWin―Winになるような取り組みを進めたい。その舞台としてnonowaや高架下の店舗・スペースが活用できればいいと思う。
我々は5つの駅とその高架下に限定して展開しているが、逆にこれが地域へ密着しやすくなるという利点もある。こうした強みを活かして、地域の皆さんともっと関わっていきたい。
(聞き手・編集長 松本顕介/山田高裕記者)
※商業施設新聞2275号(2018年12月18日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.284