商業施設新聞
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第161回

(株)からくさホテルズ 代表取締役社長 佐藤亮祐氏


「観光客」に徹底特化
銀座でハイブランド計画中

2018/12/25

(株)からくさホテルズ 代表取締役社長 佐藤亮祐氏
 ザイマックスグループの(株)からくさホテルズは、観光客に特化した「からくさホテル」を5施設・533室運営している。「観光客」の中でも特にインバウンドの目線に徹底することで高い稼働率、評価を実現する。同社代表取締役社長の佐藤亮祐氏に事業について聞いた。

―― 貴社がホテル事業に参入した経緯は。
 佐藤 数年前、当社の幹部が関西国際空港の運営会社の方から、将来的に日本は観光立国として多くの訪日客を受け入れていくと聞いた。まだインバウンドはさほど注目されていなかった時代だが、当社は関西国際空港が海外からの玄関口になり、大阪周辺で多くのホテルが求められると考えた。そこで大阪市と京都市のオフィスをコンバージョンして、2016年3月に事業を開始した。

―― からくさホテルは訪日客の中でも観光客に特化しています。この狙いは。
 佐藤 決定的に観光客向けホテルが不足していると感じたからだ。多くの観光客は2人以上で宿泊するが、当社の調べ(2017年)では大阪府内に客室が5万室あるうち、約半分がシングルルームだった。ツインルームは1万5000室程度で、トリプルルーム以上はほとんどなく、さらに築年数が20年以下で絞るとツイン、トリプルを合わせてわずか7300室しかなかった。ここに事業のチャンスを見出し、ツインルームを中心とした観光客に特化したホテルを企画した。

―― コネクティングルームの多さが特徴的です。
コネクティングルームなどが武器の「からくさホテル」
コネクティングルームなどが武器の
「からくさホテル」
 佐藤 観光客は4人や5人で宿泊することもある。約6割をコネクティングルームにすることで、1部屋で多くの人が宿泊できるようにしている。ツインルームでも3台目のベッドを置けるスペースがあり、部屋をつなげた場合は1室に6人まで宿泊できる。一方で、1部屋に多くの人がいると朝などはトイレ、洗面所、バスが込み合うため、水回り3点を独立させた。
 ただし、3点を独立させるとスペースが必要になる。そこで、基本的にバスタブは導入せず、シャワールームのみにした。日本人以外は、通常バスタブにお湯をためない。訪日客の嗜好に合わせ、必要なものだけを採り入れた。

―― 実際の稼働状況は。
 佐藤 今年度上期(4~9月)の平均稼働率は、台風21号と北海道の地震の影響があったものの87.6%に上り、宿泊者のうち約9割がアジアを中心とした訪日客だ。連泊率も高く、「からくさホテル大阪なんば」では7月の平均宿泊日数が1室当たり2.98泊に及んだ。ADRもなんばの上期平均が1万6000円を超えるなどした。

―― 貴社のホテルは必ずしも駅前ではありません。
 佐藤 例えば、大阪なんばはごちゃごちゃした立地と感じる人は多いだろう。日本人向けのホテルを積極的に出店する場所ではない。ただし訪日客の評価をみると、このエリア自体が面白いと感じていただいている。なんばは道頓堀など観光エリアにも徒歩数分で行けるなど、立地の評価は高い。
 このほかスタッフの評価も高い。フロントスタッフの約半数は外国人で、日本語以外でも接客できる点が特に評価されている。これらの評価、口コミが新しい宿泊者を呼んできてくれる。

―― 19年、東京で2ホテルを開業します。
 佐藤 5月、銀座に東京1号店として「からくさホテルプレミア東京銀座」を開業する。ワンランク上の部屋のしつらえ、サービスを提供し、バスタブも導入する。客室数は57室だが、スタンダードタイプなら100室設置できた広さだ。逆にコネクティングルームは14室に限定する予定だ。銀座に訪れる人をターゲットにするため、日本人を含めた観光客を取り込みたい。
 7月には「からくさホテル東京ステーション」を開業する。従来のからくさホテルのスタイルで151室を設置する。東京駅に近いため、日本旅行のハブとなるような利用を想定している。

―― 新大阪では大型のホテルを開業しますね。
 佐藤 新大阪駅から徒歩5分ほどの場所に24階建て、396室のホテルを設ける。「からくさホテルグランデ新大阪タワー」として、2019年11月に開業する予定で、当社最大規模になり、エリアの中でも最大級だ。新大阪はビジネスホテルが大半で、大型の観光客向けホテルが成り立つかというチャレンジでもある。

―― 今後の出店で注目している場所は。
 佐藤 当然、東京や大阪には出店したいが、我々の特徴を考えると成田空港や羽田空港の近くは適しているだろう。ゴルフ場やメディカルツーリズムに対応できるような場所もありうる。
 また、ザイマックスグループはPM、BMも手がけているが、これらの事業拠点があるエリアで運営することは、競争優位性が高いと強く感じる。その意味では福岡などは進出したい地域だ。来年は「プレミア」「グランデ」という新しいカテゴリーと、ワンストップビルメンテナンスサービスに挑戦していく。

(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2272号(2018年11月27日)(7面)
 インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.27

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