阪急スタジアム跡地に開発した「阪急西宮ガーデンズ」(兵庫県西宮市)は、2018年11月に開業10周年を迎える。年間売上高は、開業から右肩上がりで、17年度は全館で815億円(うち専門店442億円)となり、800億円を初めて突破するなど、西宮北口駅エリアに欠かせない商業施設となっている。同施設を管理・運営する阪急阪神ビルマネジメント(株) 常務執行役員 阪急西宮ガーデンズ 館長の三輪谷 雅明氏に施設の魅力などを伺った。
―― 施設の構成から。
三輪谷 球場跡地の円型の敷地を活かすため、中央に駐車場を配置した特殊な施設構造であり、モール状の専門店ゾーンの両端に核となる百貨店の西宮阪急、GMSのイズミヤ、TOHOシネマズ西宮を配置している。リピーターの方が多く、その時の目的に合わせて上手に回遊していただいている。
―― 商圏や客層は。
三輪谷 半径10km・約170万人を基準とし、西宮市、尼崎市、伊丹市、宝塚市、芦屋市の近隣の市を想定している。総店舗面積約10万m²の大型商業施設でありながら、西宮北口駅と歩行者デッキで接続しているほか、駐車場も充実している。徒歩・自転車32%、車37%、電車30%と来館方法はどの交通手段も均等であり、近隣から広域まで幅広く来ていただいている。
メーンターゲットは、ファッションや生活にトレンドを取り入れ、自分らしさにこだわる高感度でハイセンスな女性で、梅田や三宮に次ぐ新たな都市“西宮”にふさわしい上質でレベルの高いMDや空間を提供している。商圏内は、全国平均よりも30~40代が多いため、特にこの年代の女性を中心に、子育てファミリーや古くから住んでいる年配の方などバランスがとれた客層を維持している。
―― 幅広く支持されている秘訣は。
三輪谷 開発当初から西宮北口駅周辺の街づくりを意識して事業を推進した。西宮市を含む阪神間は、現在の阪急阪神ホールディングスが古くから開発を進めてきたエリアであり、良好な自然環境とアクセスの良さから関西屈指の良好な住宅都市、文教都市として発展してきた。さらに、震災後は梅田や三宮に次ぐ交流拠点として、兵庫県立芸術文化センターや大学など教育・文化を軸とした街づくりがなされており、これらの街を支える施設づくりに注力しているからだ。
―― 具体的な施策など。
三輪谷 シンボルゾーンであるスカイガーデンをはじめ、館内共用部でも季節に応じたフラワー・グリーンの演出にこだわっている。また、ワゴンを使った物販催事は行わないなど、上質なイメージに合う空間とMDを維持している。核となる百貨店では都心並みのMDが揃っており、特にオケージョン商品が充実しているので地元の方にとって欠かせない売り場だ。一方の奥にはGMSを中心にデイリーニーズの高いサブ核テナントなどを配置しており、日々の買い物や映画館などハレの日にも満足していただいている。
さらに共用部分には柱を無くした広大な雰囲気で施設内外でもくつろげるよう緑を多く植栽している。商品や空間に奥行きをもたせ、都心とは少し異なるトレンドを発信しながら、周辺に住むお客様が求めるものを外さないように戦略を立てている。
―― 全国のSCで食のテナントが増えています。
三輪谷 当施設では、元々百貨店、GMS、専門店の食のバランスが取れて充実しているので、開業当初よりやや増えた程度だ。食部門に関しては、直近で17年4月にフードコートをリニューアルし11店を刷新した。小上がり席のキッズスペースを設置するなど、特に子育て世代の利便性が向上しており、これを含めて、施設全体で飲食や食料品が好調に推移している。
―― 今後の計画など。
三輪谷 この10月1日に「別館」を南側にオープンした。クリニックなどの店舗と475台が収容可能な立体駐車場で構成し、便利になったとお客様からの反応も良い。
さらに、西宮北口駅の駅ビルとして事業を進めてきた「ゲート館」は、11月21日にオープンする予定だ。駅を日常的に利用する人を中心にカフェやサービス店を導入するほか、教育・文化・保育が充実する施設も導入し、周辺の街づくりに貢献できる施設を目指す。
また、19年3月以降には現在の阪急西宮ガーデンズで約75店を刷新する大型リニューアルを実施する。日本初上陸のフランスのスポーツ店「デカトロン」を誘致するなど話題の店舗に注目してもらいたい。
今後は、現在の阪急西宮ガーデンズを「本館」に改称し、「本館」「別館」「ゲート館」の3施設一体体制で運営していく。それぞれの施設が持つ特徴をしっかり捉え、販促やMDなどで連携を強化する。開業10周年の目玉として3施設が一体となって西宮を盛り上げたい。売上高は、前年度をキープし、着実に伸ばしていく考えだ。
(聞き手・今村香里記者)
※商業施設新聞2267号(2018年10月23日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.278