イオンリテール(株)(千葉市美浜区中瀬1-5-1、Tel.043-212-6075)は「イオンスタイル」など、イオングループにおける小売り分野の中核企業であるとともに、GLA(総賃貸面積)720万m²強(GMSの小売り面積含む)を有する国内最大規模のデベロッパーとしての顔も持つ。近年は新規出店や、高年齢化した店舗のリニューアルやスクラップ&ビルド(S&B)へ取り組みながら、都市型新業態の開発なども進めている。同社取締役ディベロッパー本部長の岡崎龍馬氏に話を聞いた。
―― 現在の課題をどう捉えているか。
岡崎 当社は現在、店舗面積3000m²以上の店を約400店展開しているが、多くのものが高年齢化しており、この店舗年齢をいかに若くするかというのが一つ大きな課題である。グループのイオンモールやイオンタウンなどの核店舗出店だけに頼っていては高年齢化のトレンドを変えることはできないと考え、当社自らがしっかりとした店づくりをS&Bも含めて行い、競争力のある店舗づくりを進めている。
S&Bは全店のうち、少なくとも約3分の1が対象となるだろう。例えば、年10店のS&Bを実施すると、10年で100店の新店と同じで、あわせて純粋な新店を出店すればさらに店舗年齢は若くなる。その中で、直営売り場に専門店も導入し、テナントビジネスもミックスしたショッピングセンター(SC)の開発を推進していく必要がある。
―― 貴社の開発の強みや特徴は。
岡崎 開発が小売り目線であるということだ。いかに長く鮮度を保つSCを開発するか、オペレーションするかということに加え、出店してもらう専門店と一緒にSCを育てていくことにも重点を置いている。当社グループは元々教育が強い会社なので、専門店の教育も行いながら、SCも成長させていく。
―― 今後の開発について。
岡崎 SMを中心に店舗面積約3000~5000m²の核店舗+商販一体の専門店というものをモデルとした店を、スピード感を持って数多く作っていきたい。当社の店舗が今後、eコマースの拠点としての役割も担っていくべきだと思っており、それには拠点数(店舗数)を増やす必要がある。
―― 新業態の考えはありますか。
岡崎 今の都市生活者のニーズを満たす商業施設が少ないので、そこに対応する「都市型NSC」を展開しなければいけないと思っている。都市生活者や、そこに働きに来ている人を含めたニーズを取り込む。また、例えば昼間の若いニューファミリー層をターゲットとする商売だけでは厳しいと思う。ファミリーだけでなく、それ以外の人にも来てもらうことで、昼、夕方、夜と、二毛作・三毛作ができ、幅広い需要に対応できる店づくりを行っていきたい。
都市型NSCは、GLAで2万m²程度を上限に、1万m²もしくはもう少し小規模になると思う。出店数を重ねていきたいので、あまり大型にして大きな投資がかからないようにする。都市型NSCの計画は、2019年に着工する案件もある。おそらく19年に着工できるのはこの1店で、これを実験店として20年までにオープンを目指す。また、この新業態はS&Bのコンテンツとしても使っていきたいと思っており、例えば旧マイカルや旧ダイエーを含めた古いGMSを都市型NSCに変えていきたい。
―― 他の開発について。
岡崎 3000m²サイズの新業態の開発も進めている。これは、SMとコモディティ、H&BC(ヘルス&ビューティケア)+デリカなどを複合したもの。これを一つのパッケージとして多店舗化、ドミナント化して展開したい。もちろん、専門店を導入できるところは導入し、前述したeコマースの拠点にも対応できるものとして数多く出店しようと思っている。3000m²あれば割と色々なことができるので、これにプラスアルファでGMSならではというものを作っていく。また、ここに様々なITを駆使して、幅広い商品の販売も予定している。
この新業態も都市型NSCと同じくらいのスケジュールで動いているので、新しいイオンリテールの店舗というものが、20年ごろに2業態登場する見通しだ。
―― ダイエー再生についての考えは。
岡崎 旧ダイエーから当社に移管した店舗が現在32店で、非常に立地の良い店もある。だが、そこは築40年くらい経っているので、もう一度再生する。基本は32店すべてだが、立地が悪いとできない店も出てくると思うので、立地の良いところは再生したい。
―― 最後に、今後に向けて。
岡崎 やはり新店を作ることが大事だ。店舗数を増やし、店舗年齢を若返らせていくことが、私の最大のミッションだと思っている。加えて、新しいモデルの店舗も短時間で作り上げ、これを多店舗化するなどし、当社を次のステージに上げていく。
(聞き手・編集長 松本顕介/若山智令記者)
※商業施設新聞2266号(2018年10月16日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.277