日本土地建物(株)は、大規模再開発事業における商業施設の運営に注力している。今後は好調に推移する東京・京橋の「京橋エドグラン」の運営安定化を図るとともに、虎ノ門エリアでの大型再開発を推進する計画だ。事業展開について資産マネジメント第二部長の藤枝雅幸氏に聞いた。
―― 大型再開発事業が活発です。
藤枝 当社グループは、都市開発事業、住宅事業、不動産ソリューション事業、資産運用事業などを展開しているが、1980年代から東京・大崎エリアで再開発事業を行うなど取り組みの歴史は古く、これまでに西新宿の新宿オークシティ、大井町などでも事業を行っている。東京・京橋で開発した京橋エドグランは、当社が権利者であり、かつ特定業務代行者の代表企業として事業を推進した大型複合施設で、2016年11月にグランドオープンした。規模は地下3階地上32階建て延べ11万3456m²で、旧来から店を構えていた明治屋やトシ・ヨロイヅカの旗艦店「Toshi Yoroizuka TOKYO」、ミシュランガイドに連続して掲載された実績を持つラーメン店「ソラノイロ」など、話題性のある人気店34店が入居しており、当社がMDを行う初めての商業施設として、思い入れのある物件だ。
―― 運営状況は。
藤枝 地下1階~地上7階の商業エリアには、開業から1年の17年11月の時点で、年間来館者目標の延べ400万人を15%も上回る460万人が来場した。2年目の今年も来館者は前年比毎月2割増えている。
―― 要因は。
藤枝 オフィスの入居率が高まってきたことや、再開発を推進する上で、権利者、行政などから土日の賑わいを作ってほしいとの要望があり、開業後もMDで様々な工夫を行った。オフィスビルに併設される商業施設はクローズドモールが多いが、京橋エドグランはどこからでも入れる形態とし、テラス席をふんだんに配置した。また、地下1階と1階をつなぐ大階段の大きなスペースを活用し、音楽ライブなど様々なイベントを開催している。緑化や休憩スペースを多くとり、ソファーなどの家具にもこだわったことも順調な要因であり、1階と3階の休憩スペースには多くの人がくつろいでいる姿が常に見られる。また、日本橋と京橋を周遊する無料巡回バスであるメトロリンクのバス停前で、認知度も高まっている。八重洲開発によりいずれは東京駅から八重洲地下街でつながる計画があるなど、開発が急速に進む日本橋、八重洲エリアとの相乗効果も期待している。
―― 虎ノ門でも再開発が進行しています。
藤枝 地下鉄虎ノ門駅で、野村不動産が中心に進めている虎ノ門駅前地区市街地再開発事業に参画している。規模は、地下3階地上24階建て延べ4万7237m²で、地下1階~地上2階が商業施設、4階がカンファレンス、5~23階がオフィスで構成され、20年6月に竣工予定である。その東側の隣接エリアに虎ノ門東洋ビルとNT虎ノ門ビルを所有しており、当地区でも再開発事業の機運が高まっている。すでに、15年7月に再開発準備組合が発足しており、現在、早期の都市計画決定に向けて準備を進めている。オフィスを中心とした再開発ビルとなる見通しで詳細を詰めている段階だ。17年11月には京橋エドグランの開発に携わったメンバーを中心に新たに資産マネジメント第二部を発足し、ビルの運営にも注力する体制を整えた。虎ノ門の再開発も京橋エドグランで得たノウハウを活用し、タウンマネジメントを推進する方針だ。
―― コンバージョン事業も活発です。
藤枝 5月に文京区本郷4丁目の地下鉄春日駅近くにあるオフィスビルをコンバージョンして(株)共立メンテナンスが運営するドーミーイン後楽園として開業した。客室数117室、キャビン42室であり、大浴場やレストランも設けている。オフィスビルからの用途変更で苦労した点も多かったが、オフィスビルから本格的なビジネスホテルへのコンバージョンは国内でも珍しい事例と言える。コンバージョンは、14年のシェアリーフ西船橋グレイスノート(シェアハウス)以来となるが、新築に比べて工事費削減、事業期間の短縮などが図れるため、今後は増えて行く可能性もある。
―― 今後の展開を。
藤枝 不動産市況は賃料が高止まり傾向にあり、今後の推移を注視する必要がある。今後は商業施設を含めた運営面の差別化が重要となり、タウンマネジメントなどで施設の魅力を維持し、向上させる施策が必要だ。特に京橋エリアは、日本橋と銀座に挟まれていることから、京橋独自の色を出して街のブランドを高めていきたい。京橋エドグランの運営安定化を図り、運営ノウハウを蓄積する方針で、次の虎ノ門再開発にも活かしていく考えだ。
(聞き手・副編集長 永松茂和)
※商業施設新聞2261号(2018年9月11日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.274