東急不動産SCマネジメント(株)は、東急不動産ホールディングスグループの一員として、商業施設を専門に運営する。「東急プラザ」「キューズモール」といった東急不動産の物件を中心に、外部受託物件も含め70の施設を運営する。4月から同社代表取締役社長に就任した粟辻稔泰氏に聞いた。
―― 足元の環境から。
粟辻 モノが売れない時代と言われるが、当社が運営する施設は、リニューアルした施設を中心に全般的に好調である。
最も好調なのがキューズモールの旗艦店である「あべのキューズモール」(大阪市阿倍野区)だ。また「あまがさきキューズモール」(兵庫県尼崎市)、「ノースポート・モール」(横浜市港北区)、「東急プラザ戸塚」(横浜市戸塚区)については、周辺のマンション開発も進んでいるため、さらに売り上げ増が期待できる。
―― 東京都心部は。
粟辻 「東急プラザ表参道原宿」は、エリアに訪日客をはじめ来街者が多い。アパレルの売り上げは昨今の情勢を表しているが、雑貨や飲食は好調。東急プラザ銀座は「GINZA6」「東京ミッドタウン日比谷」の開業で、新たな人の流れができた。
―― 全体的に飲食、雑貨が好調です。今後、MDも変わってきますか。
粟辻 これらが増えるのは間違いないが、増やしすぎると施設内で競合するため、エリアに適した店舗数を考える必要がある。
―― 郊外大型RSCは。
粟辻 今後郊外型は厳しくなるだろう。ただ、我々は駅前型の商業施設を中心に受託している。その中でも「あべの」「ノースポート」は、駅前型にもかかわらず、約1500台の駐車場を持ち、電車でも車でも来館できる利用のしやすさがひとつの優位性だ。
―― 開業から8年目の「あべの」の活性化策は。
粟辻 一昨年、昨年とリニューアルした。さらに20年ごろに次の改装を検討している。ターミナル立地であることに加えて、エリアのインバウンドが急増したことで、インバウンド向け施設ではないが、売り上げシェアが伸びてきている。次の改装ではこのあたりも検討課題だ。
―― 「ノースポート」は。
粟辻 14年に東急不動産が取得したもので、入り口を含めた導線の変更や、ファミリー向けに、ユニクロとジーユーなどの大型店をマグネットに中型店を配置するという構成にした。
港北ニュータウンは、商業施設激戦区で、もはや出店していないブランドはないほど。地域一番店を目指し、圧倒的な品揃えやワンストップで買えることを目指した。昨年第1弾リニューアルを行い、今後も定期的に見直しを図る。
―― 関西は。
粟辻 「みのおキューズモール」(大阪府箕面市)前に、北大阪急行線が千里中央駅から延伸し、駅が設置されることから、リニューアルを含めた活性化施策を検討中だ。
―― 都心施設での今後の取り組みは。
粟辻 「デックス東京ビーチ」はインバウンドの来店が多く、オリンピック・パラリンピックに向けて、さらに期待値が高まる。アミューズメントを入れ替えたり、たこ焼きミュージアムをリニューアルするなど好調に推移している。
―― 「銀座」は。
粟辻 色々な調査を試みて、人の流れやお客様の消費行動などが見えてきたので、昨年から様々な施策を推進しており、その効果が表れてきている。
―― 運営受託は。
粟辻 70施設・80万m²におよぶ。うち7割が東急不動産ホールディングスグループだ。
―― 当面はこの体制で。
粟辻 現在、東急不動産が開発している渋谷駅前再開発物件をスムーズに受託できるように体制を整えている最中である。
―― 外部受託は。
粟辻 ドミナントで構成できるところを中心に厳選している。今後重点エリアと位置づけるのは首都圏、中京圏、関西圏となる。
―― 五輪開催が迫っています。施設運営では。
粟辻 相当数の来場が予想されるため、安全対策の強化が必要になる。特に、都心部の施設を中心に整備を推進していく。
―― 都心以外は。
粟辻 当然安全対策は重要だが、一方でインバウンド需要が今以上に増えてくると思うので、それに対応できるようにする。
―― 今後の抱負を。
粟辻 競合も含めてどの商業施設でもテナント構成に差はない。それでもお客様に選ばれる、足を運んでいただける施設づくりをしていかなければいけない。環境面やソフト面など、これまでやってきたことに加えて、新たな試みを含めてリピートしていただける仕掛け作りが重要だと思う。
(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2248号(2018年6月12日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.264