(株)イオンファンタジー(千葉市美浜区中瀬1-5-1、Tel.043-212-6203)は、ファミリー向けアミューズメント施設および、インドアプレイグラウンドの運営を主力事業として、世界店舗数は849店(国内462店、海外387店、4月末時点)と、海外出店を加速させている。5月15日に代表取締役社長に就任した藤原信幸氏に事業戦略を聞いた。
―― 社長就任までの経歴について。
藤原 外食・サービス産業など数社での経験を経て2004年にイオンファンタジーへ入社した。当初は新規事業の開発、マレーシアにおけるフランチャイズ展開などを手がけていたが、07年に当社にとって初の海外進出となる中国事業の立ち上げに携わる。12年からは中国事業の責任者となり、18年2月には中国において200店を達成した。
また15年に中国で立ち上げたFANPEKKA(フィンランドがモチーフのテーマ型プレイグラウンド)の1号店は、中国チェーンストア経営協会選出の2015年「チェーンストア・ブランド最人気賞」を受賞し、現在は中国・アセアン諸国で12店を展開している。また、中国の「中国文化遊楽協会」より優秀経営者賞を15年から17年まで3年連続で受賞、さらに会社としても17年の優秀企業賞、優秀遊楽場所経営賞をいただき、従業員、お取引先様に大変感謝している。
―― 社長就任は中国・アジア市場強化の姿勢の表れか。
藤原 21年2月期までの3カ年経営計画では、アジアへの積極出店を打ち出している。連結で440店の出店を計画し、そのうち中国・アセアンなどの海外で410店を出店する計画だ。夢・楽しさ・ふれあいを求めるファミリーのニーズに国境はない。
―― 19年2月期には海外と日本の店舗数が並ぶ計画だ。
藤原 既存店舗数は、4月末時点で、連結849店のうち387店が中国・アセアンの海外店だ。19年2月期には連結で110店の出店計画のうち、海外が100店を占め、これにより日本と海外が460店ずつで肩を並べる。その後20年2月期には海外585店(日本465店)、21年2月期は海外730店(日本470店)と海外店舗数が日本を上回る計画だ。
中国、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムでのドミナント展開に加え、カンボジアでの出店も強化し、アジアへの出店を加速する。海外は日本と比べROIが高く、中間所得世帯数と子供の数が増大する市場潜在力の高い国々へ進出している。個人的な思いとしては、米国への出店願望もある。18年2月期は、中国事業で最高益、アセアン事業でも黒字化を達成した。これまで不調だったタイも徐々に回復基調にある。
―― 現在の海外店舗数は日本の462店(4月末時点)に近づきつつあるが、売上高ではまだまだ日本が多い。
藤原 そのとおりだ。18年2月期決算では、連結売上高721億円のうち588億円が国内事業、営業利益も連結59億円のうち56億円が国内事業によるもので、まだまだ当社の収益の大部分を国内事業が支えている。日本では、YouTubeでの当社関連動画の年間再生回数が9000万回を超えたことや、当社限定のオリジナル景品の導入拡大などにより、プライズ(景品)ゲームの人気が高まっている。一定時間内定額で遊び放題の「よくばりパス」も好評で200店に導入している。
―― 今後は日本市場でも年間10店の出店を維持していく。出店戦略の描き方について。
藤原 主力事業のモーリーファンタジー(0~12歳の子供とそのファミリー向け施設)の出店を進めつつ、PALO(ゲームを楽しみたいヤング層向け施設)も、来店客層に合わせて出店を検討していく。また「にこはぴきっず NHKキャラクターとあそぼう」や、健康麻雀「東一曲」などの新業態も始めており、「東一曲」は九州に2店目を開く予定だ。さらにインターネットクレーンゲーム、温浴事業にも18年春から参入している。温浴事業は神奈川県海老名市で「OYUGIWA」を開業、今後の多店舗展開も見据えている。日本市場では、これらの新規事業を含めての出店計画である。
―― 独自のゲーム機開発が事業での強みだ。
藤原 世界で初めて子供が遊べるVRゲーム機をグリーとともに開発、現在2機種を日本200店と中国100店で展開しており、夏にはさらに1機種を追加する予定だ。オリジナルゲーム機の開発は、主に中国で行っている。一例だが、中国で人気の水を使った遊戯機械を日本へ導入すると同じくらい人気が出る。子供向けゲームの流行にも国境はないと感じる。
(聞き手・笹倉聖一記者)
※商業施設新聞2248号(2018年6月12日)(7面)