人口面で大きな存在感がある都下エリアで、駅前商業の一角を占めているのが「セレオ」などの駅ビルを展開しているJR東京西駅ビル開発(株)(東京都八王子市旭町1-1、Tel.042-686-3100)だ。同社代表取締役社長の清水公男氏に、施設の現状やエリアの今後などについて話を聞いた。
―― 現在展開している商業施設について。
清水 現在、駅ビル型の商業施設「セレオ」を6施設展開している。旗艦店となる八王子北館と、駅南口に展開する八王子南館のほか、年商規模はトップの国分寺店、小規模な西八王子店の4店が都内の施設だ。このほか、山梨県の甲府店、神奈川県の相模原店がある。
加えて4月には、東京都昭島市の拝島駅の改札内部にある「Dila拝島店」をアトレから運営移管された。改札内に店舗を集めた、当社初の駅ナカ施設となる。
―― Dila拝島店はどのような位置づけですか。
清水 売上面でも期待しているが、同時に駅ナカ店舗のオペレーションを学ぶ場としての意味が大きい。駅ナカで顧客が求めるのはペットボトル一本などの少額なものが多く、接客も一般店舗のペースで行うわけにはいかないなど、改札の内と外では求められる商品もサービスも違う。
今後、当社の営業エリアに駅ナカ施設ができるようなことがあれば、我々が店舗の運営を行えるようノウハウを蓄積していきたい。
―― 旗艦店である八王子店の現状と今後について。
清水 八王子北館は開業以来堅調に推移しており、17年度の年商は263億円であった。南館と合わせれば、340億円を超える。来館者数を引っ張っているのはイベントや催事だ。特に地域物産展は人気があり、例えば九州物産展などを開催すると1日200万円以上の売り上げがある。
しかしこれからは商環境が厳しくなっていくと思う。八王子市の人口は最近減少に転じているし、18年秋には駅南口直結で「八王子オーパ」が開業する。また今後八王子IC北にイオンモールが開業すれば、さらに需要が駅前から流出する可能性がある。
こうした状況に備えるため、催事のさらなる充実など地域密着性を高めていく。また開業以来初の大規模改装を進めているレストランフロアでは、店舗の入れ替えだけではなく環境面も一新し、全体的に緑あふれる新しい飲食フロアへ生まれ変わり、19年春の完成を目指している。
―― 地域への貢献もされています。
清水 八王子については、行政の中心市街地活性化計画と協力する形で街ぐるみで魅力を向上させ、人口減少に歯止めをかけようと頑張っている。八王子店での催事の強化、改装などはこの一環でもあり、地元の幅広い客層が楽しめる、「卒業しない駅ビル」を目指していきたい。また東急スクエア、京王八王子SCといった周辺の商業施設との間で、共同イベントの開催や休館日をずらすなどの協力を行い、駅周辺にお客様がいつ来ても楽しめる体制を作っている。
―― 「ミーツ国分寺」が駅前に開業しましたが、影響は。
清水 ミーツとはいくつか競合する部分があり、売り上げに影響が出るのではと予想している。しかし国分寺でも互いに潰しあうのではなく、八王子のように協力できる部分は協力して、国分寺駅前の魅力を高め、お客様の数を増やしたほうが良いと思っている。
―― その他の施設については。
清水 甲府については、イオンモール甲府昭和の影響が大きく、駅前の周遊人口自体が減ってしまっている。そうした中で我々が14年に行ったリニューアルでは、食品や普段使いカテゴリーの強化、アッパーミドル層への訴求、来街者対応などに重点を置いた結果、年商は40億円から50億円に伸長し、好調は現在も続いている。
相模原は、今後の発展が期待できる立地だ。現在も売り上げ前年超えが続いているが、将来的に隣の橋本にリニアの駅ができることで、工事期間中は工事関係者、完成後はリニア利用者の需要が期待できる。また駅北側の米軍補給廠が返還され、住宅などの再開発が予定されている。単純なリニューアルだけではなく、増床の可能性も含めて様々な検討をしていかなければならない。
―― 今後のリニューアル予定や新しい取り組みなど。
清水 リニューアルは随時進めていく。八王子店のレストランフロアだけではなく、国分寺店や西八王子店のリニューアルも進行中だ。
近年では、テナントの人手不足が大きな問題となっている。これを少しでも解消するためには、ESの強化が大切だ。休憩室、社員食堂の整備や、研修、懇親会の充実に努めている。
また、当社の若手社員から独自の発想を吸い上げ、例えば、eコマースやインバウンドへの対応、そして駅以外でのセレオの出店といった新しい取り組みをするならば、会社の魅力も増大していくと考えている。
(聞き手・山田高裕記者)
※商業施設新聞2247号(2018年6月5日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.263