電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第274回

(株)安川電機 執行役員 ロボット事業部長 小川昌寛氏


産業用ロボの販売が国内外で伸長
常州市の新棟が6月から稼働

2018/5/25

(株)安川電機 執行役員 ロボット事業部長 小川昌寛氏
 (株)安川電機(北九州市八幡西区黒崎城石2-1、Tel.093-645-8801)のロボット事業が好調に推移している。世界的な自動化ニーズの高まりを受け、グローバルで需要が増加し、生産体制の拡大や新技術の開発も積極的に進めている。執行役員でロボット事業部長の小川昌寛氏に話を伺った。

―― ロボット製品の需要動向について。
ロボット製品の需要が好調に推移
ロボット製品の需要が好調に推移
 小川 2017年度におけるロボット事業の売上高は前年度比19.2%増の1668億円、営業利益は同80.1%増の185億円と好調に推移した(17年度より決算期を3月から2月に変更し、17年度は11カ月の変則決算。数字は17年3月21日~18年3月20日の12カ月間を対象とした参考値)。市場別では中国が大きく伸びたことに加え、日本、欧州、米州向けも堅調に推移した。分野別ではティア1などを含めた自動車関連がグローバルで好調だったほか、中国を中心に3C(コンピューター、家電製品、通信機器)関連も需要が旺盛であった。

―― 中国では企業間連携も増えていますね。
 小川 中国のEMS企業「深セン市長盈(チャンイン)精密技術」と合弁会社を17年8月に設立し、スマートフォンの製造現場で使用する産業用ロボットを開発している。開発品はチャンイン社の工場内での活用が増えており、17年末には外販も開始した。
 また当社は大手家電メーカーの美的集団と産業用ロボットの合弁会社「広東安川美的工業機器人有限公司」も展開しており、家電工場で活用できるロボットシステムの開発を進めている。現在、開発したロボットシステムの活用が美的の工場内で広がっており、外販も18年度から進めていきたいと考えている。

―― 電子デバイス関連は。
 小川 当社はウエハー搬送やFPD搬送用のクリーンロボットも展開しており、17年3月にクリーンロボット専門に取り組む部隊を再組織化するなど体制を強化している。17年度は好調な半導体市況を受けて約4000台のクリーンロボットを販売し、生産面でも月産500台の体制を整えた。また、ロボット製品だけでなく、半導体製造装置向けのサーボ製品の拡販にも注力しており、全社ベースで半導体関連分野を強化している。

―― ロボット製品の生産体制は。
 小川 国内では八幡西事業所(北九州市八幡西区)と中間事業所(福岡県中間市)、海外では中国・常州市にある「安川(中国)機器人有限公司」で生産している。17年度はいずれの拠点もフル稼働状態が続き、その需要に対応するため中間事業所の増強に加え、常州拠点で第3工場の整備を進めており、6月から稼働を開始する予定だ。常州拠点では第1、第2工場の再編も進めており、常州拠点全体での生産能力は月産1000台から同1500台まで拡大する見通しだ。そのほか、スロベニアで組立工場の建設も進めており、18年内に試験生産を開始し、19年に月産200~300台程度の量産体制を構築していく予定だ。

―― 注力していることは。
 小川 当社の自動化技術に「デジタルデータのマネジメント」を加えた3つの「i」からなる新たなソリューションコンセプト「アイキューブメカトロニクス(i3-Mechatronics)」を17年10月に発表し、取り組みを強化している。当社はこれまでにロボット、サーボ、インバーターといったメカトロニクス製品によって様々な現場の自動化ソリューションを提供してきたが、アイキューブメカトロニクスではこれらを「integrated(統合)」し、独自のエッジソフトウエア「YASKAWA Cockpit」で設備や装置のリアルタイムデータを収集。人工知能(AI)をはじめとした「intelligent(知能化)」なソフトウエア技術で、ライン全体の状況確認に加え、オーダーの実行状況や工程別の進捗状況、工程内の作業別進捗状況などを実現する。そして、こうしたデジタルデータソリューションを提供していくことで、お客様の生産プロセスに新たな「innovative(革新)」を生み出していく取り組みだ。

―― そのなかで強化されていることは。
 小川 こういったソリューションの構築には幅広い企業と連携を進めていく必要があり、3月にAIソリューション開発などを手がける新会社「(株)エイアイキューブ」を立ち上げ、AIベンチャーの(株)クロスコンパス(東京都千代田区)との連携を強化していることもその1つだ。
 また、センシングデバイスの重要性も高まっており、ロボットを中心としたメカトロニクス製品とセンサー製品の融合は加速度的に増えていくだろう。当社としても、センサーをはじめとした電子デバイス関連企業との連携やオープンイノベーションを積極的に進めていきたいと考えている。

―― 今後の方針をお聞かせ下さい。
 小川 18年度(19年2月期)におけるロボット事業の売上高は前年度比9.8%増の1832億円、営業利益は同14.2%増の211億円を計画しており、市場が拡大している中国を中心にグローバルで高まる自動化ニーズへの対応を着実に進めていく。それとともにアイキューブメカトロニクスのようなデータソリューション型の新たな取り組みも推進していき、ロボットを従来活用している自動車関連や電機・電子分野だけでなく、これまでロボットを利用したことがない分野の方にも活用していただけるようにソリューションの幅を広げていくことで、25年度にはロボット事業で売上高3000億円を目指していく。

(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2018年5月24日号9面 掲載)

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