商業施設新聞
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第126回

森トラスト(株) 取締役副社長 吉田武氏


虎ノ門、赤坂で大開発進行中
高級ホテル計画も多数控える

2018/4/24

森トラスト(株) 取締役副社長 吉田武氏
 森トラスト(株)(東京都港区虎ノ門2-3-17、Tel.03-5511-2255)は、東京・虎ノ門と赤坂で延べ約20万m²の大規模複合開発を進めている。さらに奈良や沖縄で高級ホテルの開発も進めているほか、多くの開発用地を保有している。取締役副社長の吉田武氏に現在の開発、今後の動向などを聞いた。

―― 貴社が開発を進める虎ノ門のポテンシャルについて教えてください。
 吉田 虎ノ門が位置する港区は東京都心の中でも大使館の数、外資系企業の数、外国人居住者の数などが突出しており、ビジネスにおいて優位性を持っている。
 その港区の中でも虎ノ門はビジネスの中心地であり、さらに東京オリンピックで交通の中心になる環状2号線も開通した。発展が望まれている地ということだ。虎ノ門では各事業者が開発を進めており、我々も独自の特徴を意識しつつ大規模複合施設「東京ワールドゲート」の開発を進めている。

―― エリアにおける森トラストの開発の特徴は。
「エディション」などを導入する「東京ワールドゲート」
「エディション」などを導入する
「東京ワールドゲート」
 吉田 世界的評価の高い最高級ラグジュアリーホテルを擁する複合開発ができることだ。東京ワールドゲートではマリオット・インターナショナルの「エディション」が日本初進出する。ライフスタイルホテルの中でも最高級に位置づけられる、洗練されたブランドだ。我々は2020年春に、東京ワールドゲートと銀座の2カ所でエディションを開業する。同時開業により、相当話題に上るだろう。

―― 東京ワールドゲートは大規模なオフィスも特徴です。
 吉田 働き方改革として生産性の向上が求められているが、クリエイティブな場所がなければ生産性は上がらない。緑の中などサードプレイスにおけるコミュニケーションがクリエイティブな活動には欠かせない。東京ワールドゲートはフロア面積も東京でトップクラスのオフィス空間を備えているうえ、5000m²の緑地を整備している。さらにホテル以外にも、イノベーションを促進する「場」をハード・ソフト両面から提供していく。良い場所に良いソフトを備えたビルをつくることが重要だ。

―― 同じ港区の赤坂2丁目でも大規模開発を控えています。
 吉田 上質なオフィスと高級ホテルを導入する点で、東京ワールドゲートと同じ。一方、赤坂はかつて武家屋敷が多く、下町の江戸とは違う特徴的な文化があった。江戸庶民の文化とも異なる、武家の江戸文化に対する外国人知識層の関心は高い。彼らに満足いただける文化施設を設けるほか、山車を復元して展示する予定だ。

―― 貴社は奈良の開発も話題になっていますね。
 吉田 もともと奈良は観光客が多かったが、上質なホテルが少ないため宿泊客が少なかった。このため良質な飲食店など夜の楽しみも少なく、悪いサイクルができていた。
 我々は、県有地の活用事業者を決めるコンペで、世界的最高級ホテルブランドである「JWマリオットホテル」の誘致を提案した。誘致決定後、大変な反応があり、奈良に多くのホテル開発を呼び込んだ。今後は飲食店も活性化するなど、良いサイクルが生まれるだろう。

―― そのほかに各地でホテル用地を保有しています。
 吉田 箱根、熱海、飛騨高山、長崎、沖縄などインバウンドに人気のエリアを押さえている。各地では基本的にラグジュアリーホテルをつくる方針だ。5つ星ホテルを誘致するのは誰にでもできることではない。これは観光産業における我々の使命だろう。

―― 開発ラッシュを迎える沖縄ですが、観光客数はハワイを超えました。しかし消費額はまだ劣ります。
 吉田 消費額を上げるには、上質なホテルを整備して海外の富裕層を呼び込むことが欠かせない。一昔前と比べると沖縄に5つ星ホテルは増えたが、さらなる開発が必要だ。
 当社は今年、宮古諸島伊良部島で、60室程度の規模の「イラフ SUI ラグジュアリーコレクションホテル沖縄宮古」を開業する。これはマリオット・インターショナルの「ラグジュアリーコレクション」と当社の新ホテルブランド「翠 SUI(スイ)」のダブルブランドとなる。
 本島中部では、瀬底島で「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」と、タイムシェアリゾートの「ヒルトン・グランド・バケーションズ」を同時開発している。それぞれ20年、21年に開業する。瀬底島の案件は10万坪ほど購入した土地の3分の1程度を活用しており、残りの土地の開発も検討していく。

―― 沖縄の成長は続きそうですか。
 吉田 有望なマーケットだ。さらなる成長に求められるのはインフラ整備だ。モノレールや高速道路は延伸しているが、沖縄の各エリアに人を波及させるにはいっそうの整備が必要だ。

―― 今後も開発用地の取得は続ける意向ですか。
 吉田 東京都心は大規模な土地がほとんどないが、建て替え案件は可能性がある。当社が東京オリンピック後に計画する港区三田における開発も、複数ビルの建て替えになる。
 一方で、リゾートなど地方のホテルはまだ新規開発用の土地がある。注目エリアの一つとして、金沢や日光なども面白い。観光業は日本の柱であり、ホテルマーケットはこれからも伸びる。その中で、当社の強みであるラグジュアリーホテル開発を今後も展開していきたい。

(聞き手・編集長 松本顕介/副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2237号(2018年3月27日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.257

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