神奈川県三浦郡葉山町で産声を上げた葉山コーヒー(株)(大阪市平野区瓜破2-1-76、Tel.06-6703-8824)は、今年で創業18年目を迎えた。揺るぎない経営理念と、5つのこだわりを持ち、カフェ「葉山珈琲」などを展開する同社は、一つひとつの店舗を丁寧に作り込んでおり、少しずつではあるが、全国各地に店舗網を広げようとしている。「5年以内に全都道府県への出店を達成したい」と意気込む、同社代表取締役の前野守杜氏に話を聞いた。
―― 葉山コーヒーのこだわりとは。
前野 2000年11月に葉山町に1号店を開店し、これまで全国にFC店を含めて19店を展開してきた。当社は『「最愛の人」と一緒に過ごしたい「最愛のカフェ」で…』という経営理念を掲げ、生豆にこだわる、焙煎にこだわる、品質にこだわる、熟成にこだわる、淹れ方にこだわる、の5つのこだわりを持つ。
例えば、焙煎工程では職人が生豆の選別を行っており、焼成工程も含め、すべて手作業となっている。そのため、店舗に並べるのは、焙煎後2週間以内の珈琲豆に限定している。鮮度を重視しているがゆえに芳醇な香りが楽しめ、プロが淹れても、素人が淹れても、美味しいコーヒーを飲むことができる。このようなこだわりを持つので、新規出店は年間6店が限界である。
―― 数あるコーヒーチェーンの中で、貴社の強みは。
前野 日本は職人が築き上げた国であり、当社も職人が生み出す商品力、これを重視して店舗展開を図っている。職人と店舗の強い結びつきは、当社の特徴と言える。また、当社はフランチャイズによる多店舗展開を行ううえで、その地域や風土に合った店づくりや商品づくりを大切にしている。
具体的には、コーヒーは全店共通であるが、フードはオーナーからの提案を可能としている。オーナーからは月に30~40件の提案があり、実施店舗のフォローをすることで、他の店舗で成功事例として伝えることができる。また、直営店の「珈の香 鴫野駅前店」や「HAYAMA COFFEE 鴻池新田店」でもあらゆる検証を実施し、精度を高めるように努めている。
―― 業態や店舗フォーマットについて。
前野 現在、レギュラーコーヒーフルサービスタイプ、カフェインレスタイプ、セルフサービスタイプの3業態を展開しているが、店舗面積や席数はすべてばらばらで、コーヒーの価格は形態によって異なる。一定の基準として、店舗面積は33m²以上で出店できる。今のところ、最小は1月に開店した「長崎オランダ通り店」で、店舗面積は82m²、席数は28席。最大は17年4月にオープンした「土浦店」で、店舗面積は264m²、席数は108席を数える。
立地は路面店を基本とし、オフィス街の場合は、昼間人口と夜間人口のバランスを重視している。エリアは全国を対象に主要都市への出店を心がけている。例えば、17年の前半は東京都や茨城県などの北関東エリアに出店したが、後半は、広島県や長崎県といった西日本エリアに新店をオープンした。FC展開が中心のため、まず旗艦店となる店舗オーナーと契約することで、静岡県や茨城県、神奈川県、大阪府に集中出店することができている。
―― 商業施設内への出店について。
前野 主に、フードコート内に出店している。商業施設は絶対的な集客力が魅力であるが、デベロッパーが当社の店舗に求める内容、葉山の地を思い浮かべる高級感を理解したうえで、前述の経営理念や5つのこだわりにマッチする施設内への出店を考えている。
―― 今後の出店計画は。
前野 18年は1月に長崎オランダ通り店を開店しており、このほか、東京・世田谷や浜松、名古屋で新規出店を計画している。世田谷は住宅街に立地し、これまでで最小の店舗面積となる49m²を想定する。業態はセルフサービスタイプを予定しており、住宅街に立地するので、珈琲豆を積極的に販売する計画だ。名古屋は未定であるが、浜松はロードサイドに立地し、店舗面積は231~264m²を想定しており、レギュラーコーヒーフルサービスタイプの業態を展開する。
―― 将来の展望を。
前野 将来的には、全国の主要都市に最低1店を設け、5年以内に全都道府県への出店を達成したい。そして、全社売上高は現在の4億円から、3年後には5億5000万円まで高める予定だ。
(聞き手・岡田光記者)
※商業施設新聞2233号(2018年2月27日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー