商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第111回

西日本高速道路(株) 執行役員 事業開発本部長 横田正文氏


新名神で宝塚北SAが誕生
地域の特徴活かす施設づくり

2018/1/9

西日本高速道路(株) 執行役員 事業開発本部長 横田正文氏
 西日本高速道路(株)(大阪市北区堂島1-6-20、Tel.06-6344-4000)は、近畿、中国、四国、九州、沖縄で高速道路事業を行っている。高速道路上のSA(サービスエリア)とPA(パーキングエリア)は2017年10月現在で306カ所設置している。このうち、有人の営業施設(第三セクターの運営を除く)は184カ所(SA 92、PA 92)で、16年度の売上高は961億円であった。これは民営化直後の06年度の851億円から約10年で13%成長したことになる。同社の執行役員 事業開発本部長の横田正文氏に取り組みや成長戦略など話を聞いた。

―― SA・PAの概況から。
 横田 大型施設から小型店舗まで大小様々だが、テナントの貸し付けは当社グループの西日本高速道路サービス・ホールディングス(株)が行っている。
 同じく当社グループの西日本高速道路リテール(株)の直営店は48店あり、この中で、11年に「モテナス」というブランドを立ち上げた。「モテナス」は現在25店を運営しており、トラックドライバーが手軽に日常使いできる、お得なメニューを提供し、栄養やボリューム面に力を入れている。
 ほかにも、複合型商業施設の「パヴァリエ」は、現在3施設を展開している。SA・PAからの素晴らしい眺望を生かすなど、単なる通過点ではなく、目的地としてご利用いただける施設だ。

―― 近年の取り組みは。
 横田 地域の特徴を打ち出すことに取り組んでいる。17年3月にリニューアルした高松自動車道の「豊浜SA下り」は、四国でもトップクラスのポテンシャルを持つSAで、売り場面積は2倍以上に、販売品目も1.3倍に拡充した。香川県産のオリーブ牛を使用したメニューや、地元で有名な手打ちうどん専門店などを導入している。
 また、熊本地震で被災した九州自動車道の「山川PA」の再オープンでも、豚骨スープと地元みやま市の醤油を使用したラーメンを提供するなど、地域の特徴を活かしたメニューを扱っている。直営店もテナントも同様に、地元の名物や特産を活かし、より地域の魅力を味わっていただくよう心がけている。

―― テナント誘致や商品セレクトの手法は。
 横田 お客さまに新たな商品を提供するとともに、テナントと地元企業のビジネス機会を創出するため、“ビジネスマッチング”を開催している。昨年は、中国銀行とタイアップして岡山で中四国の事業者を対象に商談会を実施し、84社の生産者やメーカーが参加、39件が契約に至った。例えば、広島の特産である“瀬戸内レモンを使ったスティックケーキ”を宮島のSAで販売するなど、地域の隠れた逸品を高速道路の利用者に提供できており、これらを探すことが我々の役割だと思う。さらに、当社の利益だけでなく、地域経済にも貢献できている。
 基本的なターゲットは全方位だが、定番からニッチなものまで取り入れ、現在は当たり前のように出店しているCVSや巷で人気のチェーン店なども取り入れながら、多様性のあるSA・PAを目指す。

―― 車を運転する人が減少しています。対策などは。
 横田 各自治体と協力して“お国じまんカードラリー”という観光スポットやSA・PAを巡ってカードを集めるキャンペーンを実施している。観光に加え、カード集めも楽しめるとあって、旅行のついでだけではなく、カード集めを目的に高速道路を利用する人も多く、新たな観光需要を掘り起こせている。
 さらに、旅行会社や鉄道会社と連携し、橋やJCTなどを見学する“インフラツーリズム”も人気であり、成長が見込める事業だ。

―― 観光といえば“ガチャめし”が話題に。
 横田 これは、舞鶴若狭自動車道「西紀SA下り」のテナントが企画したもので、メニューを選ぶ時間を省けるが、何が当たるか分からないという斬新な企画だ。今後もテナント側のアイデアも大切にし、一緒になって様々なイベントや企画で賑わいを創出していく。

―― 一方、一般道からの利用者に向けては。
 横田 高速道路外の一般道から利用できるSA・PAは69カ所ある。山陽自動車道の「小谷SA上り」では、出店している店舗で周辺住民を対象としたパン教室やフラワー教室などを開催している。SA・PAが地域の賑わいの拠点としての機能も担っており、一般道からも利用できるエリアを増やしていきたい。

―― 新名神高速道路で誕生する施設について。
 横田 高槻JCT~神戸JCT間では、17年度末に「宝塚北SA」が開業する予定だ。宝塚北SAは、当社の管轄エリアでは数少ない上下線で行き来できる一体型のSAとなり、西日本有数の広さでもある店舗面積約1800m²を確保し、巷で人気のカフェやラーメン店も導入する予定だ。
 新名神高速道路は、既存の中国自動車道と一体となってダブルネットワークを形成するものであり、利用される方のニーズに適確に対応したいと思う。また、23年度に開通が予定される大津JCT~(仮称)城陽JCT間で「(仮称)大津SA」の計画がある。

―― 最後に中期経営計画(16~20年度)での目標を。
 横田 既存施設のリニューアルや「モテナス」ブランドの認知度向上、地域利用の促進と地域の発展につながる取り組みを行い、営業施設の売上高は5年間の累計で5000億円を目指す。当社は事業エリアが広域になるので、それぞれの地域の特徴をしっかり打ち出していくことが重要だ。

(聞き手・今村香里記者/北田啓貴記者)
※商業施設新聞2222号(2017年12月5日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.243

サイト内検索