施設の建築コストは近年高騰し続けており、コスト削減は事業者にとって死活問題となっている。また様々な領域で注目を集める新事業については、それに対応した新機軸を備えた施設が要求されることも多く、事業者を悩ませている。こういった施設に関する問題をワンストップで解決する企業として今注目を集めているのが、(株)山下ピー・エム・コンサルタンツ(山下PMC、東京都中央区明石町8-1、Tel.03-6853-7700)だ。同社代表取締役社長の川原秀仁氏に、事業やこれからの展開について話を聞いた。
―― 貴社の概要から。
川原 当社の業務は、一言で形容すれば施設事業者の参謀役である“施設参謀”とでも言うべきものだ。ベースとなるのは、施設の企画、発注、設計、施工といった一連のフローを管理するプロジェクトマネジメント(PM)、コンストラクションマネジメント(CM)といったものだが、これに加えて施設の運営や修繕に関するライフサイクルマネジメント、不動産の価値を最大化するためのCRE戦略マネジメントも行っている。施設戦略のあらゆる点で、事業主のためにワンストップのソリューションを提供するのが我々の仕事だ。
―― これまでの実績や、手がけた施設の種類など。
山下PMCが手がけた
「アトレ恵比寿西館」。
事業主、運営会社をサポートし
魅力ある商業施設を実現した
川原 1997年に設立して以降、これまでに約1300棟を手がけてきた。現在は、平均して1件約50億円のプロジェクトを、同時に180施設程度手がけている。
施設の種類については、住宅以外は基本的に何でも手がけている。現在はスポーツ施設やホテルが特に多く、本社ビル、研究開発施設、物流施設、商業施設などがそれに続いている。また公共施設や庁舎、学校、病院、インフラ関係などもやっている。
―― 施設参謀として、事業主からどのようなことが求められていますか。
川原 最近は、「新ビジネスを一緒に作ってくれ」という要望が多い。事業主が考える新しいビジネスに不可欠な、新しい施設を考えてくれというものだ。我々は先進的な企業との仕事が多く、そこでは新しいビジネスに対応した施設や、働きやすい施設、アイディアが出る施設といったような付加価値のある建物が求められる。例えば金融関係ならフィンテックに対応した施設、メディア関係ならネット配信など次世代のメディア体系に対応する施設などだ。
定格的な建物のプロジェクトについては、競合との価格競争があり厳しいが、特殊な付加価値のある建物ならば、我々の長所が活かせると思う。
―― 付加価値のある建物ということですが、具体的には。
川原 公表できるものでは、JR三鷹駅から立川駅までの高架下を活用した「中央ラインモール」が挙げられる。我々は高架下の活用と、駅の活用と、まちが南北でつながることによるまちづくりといった3つの点について企画している。ここではプロトタイプの商業施設を入れるところまで関わらせていただいた。商業施設については、施設単体で考えるのではなく、その地域コミュニティやほかの商業施設、産業とどのように関わっていくかということを考えた企画を行っている。
スポーツ関連施設も多いが、公表できるところでは海浜幕張近くのJFAナショナルフットボールセンターが挙げられる。単なるスタジアムではなく、全体をスポーツパークとして機能させ、一つの大きな商業体とすることを考えている。スポーツ施設は、これまでのような体育施設という位置づけではなく、アミューズメント要素を持ったスポーツビジネスが成り立つ拠点となる必要がある。
―― 今後の抱負を。
川原 ビジネス手法が変わるくらいの変革を、建設業界に起こしたい。施設建築にかかる労力の大部分を削減するというようなレベルのものだ。そのために、我々は広くコラボレーションを進めていく。
(聞き手・編集長 松本顕介/山田高裕記者)
※商業施設新聞2212号(2017年9月26日)(6面)