3月15日、「マロニエゲート銀座2&3」がオープンした。長い間銀座の女性ファッショントレンド発信地として知られた「プランタン銀座」をリニューアルした施設で、銀座初出店18店を含む123店が出店した。同施設を運営する(株)マロニエゲート(東京都中央区銀座3-2-1)代表取締役社長の木村透氏に話を聞いた。
―― 貴社の概要から。
木村 当社はフランスの百貨店「プランタン」ブランドを冠した「プランタン銀座」を銀座で32年間運営し、社名も(株)プランタン銀座だった。25~35歳の働く女性をターゲットに、銀座だけれども親しみやすいファッションの発信地として支持を受けてきたが、プランタン本社との契約が切れ、2016年末に閉館することとなった。
そして17年1月からは、社名を(株)マロニエゲートに改称し、読売新聞社と三越伊勢丹の共同子会社から、読売新聞社の100%子会社となった。3月にはプランタン銀座を「マロニエゲート銀座2&3」として本格始動した。現在は07年にオープンした、読売新聞社所有の「マロニエゲート銀座1」と一体的に営業している。なお、三越伊勢丹とは協力関係を維持している。
―― リニューアル後の状況はどうでしょうか。
木村 3館揃ってオープンした“グランドスタート”当日にはたくさんのお客様に並んでいただき、好調なスタートを切れた。入店者数は、前年比10%増だ。売上高はまだ集計中だが、ほぼ想定どおりでまずまずの結果が出ていると思っている。2カ月間のブランクによる客離れは起きていないと思う。
―― コンセプトは。
木村 プランタン時代よりメーンターゲットを広げている。働く女性に加え、近隣のタワーマンションに住むようなおしゃれママをターゲットとした。テナントのセレクトだけではなく、ベビーカーや子供連れでも利用しやすいように、施設内の通路を広げたり授乳室を設けたりといった工夫を凝らしている。
―― 施設の目玉は。
1階に設置した「ハナドケイ」。
デジタルサイネージを活用した
木村 15年4月から入店しているニトリの増床に加え、地下2階の健康・スポーツに特化したフロアだ。スポーツウェア・アウトドア用品に加え、健康に配慮した飲食・食物販を揃え、イートインも備えている。また、デジタルサイネージは情報発信に加え、季節を感じていただく空間演出のみに利用した「ハナドケイ」を新たに設置した。
―― リニューアルに伴う新しい試みなどは。
木村 以前のプランタンカードに代わって、スマートフォンを利用したデジタルポイントサービスを導入した。利用にはスマートフォンが必須なので、以前と比べ利用者数が落ち込むのではと危惧したが、開始してから4月末時点で約4万2000人が登録しており、予想を上回るペースで利用されている。登録者5万~6万人が目標だったが、早々に目標を超えるペースで、今後の特典なども色々考えていきたい。またSNSの活用も進めており、Facebookには1カ月で「いいね!」が5200つくなど好評で、「社長の日記」も始めた。
―― インバウンド対応はどうでしょうか。
木村 アリペイなどの決済手段を導入したほか、Wechatやウェイボーといった中国語圏で利用されているSNSでの広告展開を積極的に行う予定だ。施設名についても、中国人スタッフと相談して中国語名の「七叶ファン銀座(ファンは王へんに番)」を正式に命名した。
―― 「Ginza six」が開業しました。影響は。
木村 すごい施設だとは承知しているが、ターゲット層や商品の価格帯も違うため、競合するかというとあまりそうは考えていない。マロニエゲートは入りやすさ、気軽に立ち寄れる施設を目指している。むしろ多彩な商業施設が揃うことで、銀座を訪れる人が増えることに期待したい。その中において我々は“銀座の入り口”に構えていることで、銀座を盛り上げていきたい。
―― 今後の展望や目標などは。
木村 「マロニエゲート2&3」については、年間165億円程度の売り上げを目指している。新聞事業は年々厳しくなっており、読売にとっては当社の事業も多角化の一環だ。私はこれまで商業施設の運営とは無縁の仕事をしてきたが、だからこそ新しい決断ができると思っている。SNSの積極的な活用や、全館でのiPad導入、デジタルポイントサービスなどはその一例だ。施設とテナントが一体となって、こういった新しい取り組みを進めていきたい。
(聞き手・編集長 松本顕介/山田高裕記者)
※商業施設新聞2195号(2017年5月30日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.226