4月20日、銀座エリア最大級の商業施設「GINZA SIX」が開業した。銀座は爆買いブームの発生と収束、東急プラザ銀座の開業など変わり続けるエリアであり、GINZA SIXの開業によりエリアの価値が向上することも期待される。JLLリサーチ事業部マネージャーの岩永直子氏に、銀座エリアを中心に高級ブランドの動向を分析してもらった。
―― 2016年の高級ブランド市場の動向は。
岩永 銀座などに出店するような高級ブランドは日本での売り上げが伸びている。16年の動きをみると、4月に中国で転売目的の海外製品の持ち込み規制を目的として関税が引き上げられ、中国人観光客による高級品消費は、日本のみならず世界中で減速した。一方、第4四半期の日本における欧米の宝飾、レザーグッズなどのラグジュアリーブランドは好調である。中には世界平均で8%ほど伸びたが、日本では円高にもかかわらず9%伸びたブランドもみられた。欧米亜(日本を除く)の勢いを凌駕し日本が牽引した格好だ。株高による資産効果が継続していることなどが要因だろう。
―― 日本の高級ブランド市場における特徴は。
岩永 日本における高級品消費市場の特徴は国内消費(在住者の消費)の多さだ。高級ブランドは訪日客による爆買いもあるが、爆買いがブームとなる前は9割以上、爆買いが起きてからも7割程度が国内消費だ。海外では高級ブランドの国内消費は5割程度の国もあり、日本は特に多い国と言える。
―― 高級ブランドは銀座に集まっています。銀座エリアの動向は。
岩永 16~17年の動向をみると、銀座は路面店のほか、東急プラザ銀座などに多くのブランドが出店した。さらに4月20日に開業したGINZA SIXにも数多くの高級ブランドが出店した。これにより需要は大きく吸収された感があり、今後は少し落ち着くだろう。
とはいえ銀座の価値は高いまま。むしろブランドが出揃い、エリア内の回遊が見込まれる。特にGINZA SIXが開業した銀座6丁目周辺では人の流れが増加するとみられる。また、爆買いが落ち着いたとはいえ、訪日客の数は増え、消費額全体では増えている。引き続き、銀座は世界有数の買い物エリアとして多く人を集客するだろう。
―― 逆に銀座で低価格を武器にするようなブランドが増えつつあります。
岩永 15年、ニトリが出店した。現在も出店機会をうかがう低価格ブランドはあると聞く。すでにユニクロ、H&M、ZARAなどが出店しており、街に馴染みつつある。高級ブランドにも言えるが、銀座に出店すると単体店舗の売り上げのみならず、広告宣伝効果やブランドイメージの向上が見込めるため、出店地として魅力的である。
―― 銀座と言えば百貨店集積地です。
岩永 百貨店は全体として厳しい状況が続く。売り上げを支える婦人服が伸び悩んでいるが、一因に暖冬の影響が挙げられる。冬物衣料は数万~数十万円するものが多く、年間の売り上げを支えている。ここ数年、何度か暖冬と言われる冬が訪れ、販売額に影響を与えた。
また低迷の理由に、ライフスタイルの変化もある。百貨店は家族のハレの日のデスティネーションであるが、買い物先の選択肢は増えつつある。一方、百貨店は苦戦しているものの、高級ブランドの売り上げは伸びているため、路面店に人が流れているのは事実で、また、百貨店でも化粧品販売は好調である。今後はこれらの強みのほか、従来からの外商による富裕顧客などを武器に、いかに時代に即応したサービスを提供していくかがカギとなるだろう。この意味でも、旧来型百貨店を転換して開業したGINZA SIXの示唆するところは非常に大きい。
(聞き手・編集長 松本顕介/副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2193号(2017年5月16日)(6面)
国内高級ブランド動向