商業施設新聞
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第78回

中日本エクシス(株) 代表取締役社長 青山忠司氏


SA/PAが目的地に昇華
20年度に大型SAを秦野に開業

2017/5/16

中日本エクシス(株) 代表取締役社長 青山忠司氏
 サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)の商業施設ブランド、東名高速道や中央自動車道の「エクスパーサ」や新東名高速道の「ネオパーサ」を開発・運営する中日本エクシス(株)は、グループのネクスコ中日本と共にSA/PAの新しい価値を創造していく。青山忠司社長に聞いた。

―― 現在の状況から。
 青山 当社が管理しているSA・PA数は158カ所で、このうちエクスパーサ8カ所、ネオパーサ8カ所を含め、全672区画・テナント169店を展開している。最も売り上げが高いのが海老名SAで、上下線合わせて2015年度で物販・外食138億円、燃料を含めると169億円である。民営化して10年経ったが、15年ベースでは管内全体の売上高が1.35倍に拡大した。

―― 最近の整備は。
 青山 新東名延伸で16年に開業した上下線集約型ネオパーサ岡崎は、開業時には最大で1日7万人強が来場した。また、ネクスコ中日本が富士川SAに観覧車を整備し、当社は2階に店舗をつくった。富士川SAは富士山が眺望できるロケーションを生かし、この観覧車を地域のランドマークにしたいという要望が富士市からあり、SAの外、つまり地域の方の来場も増え、来場者数は前年比270%になった。
 高速道路からのお客様だけでなく、地域に開かれるSA/PAを目指している。山間部の地域も多く、買い物に不自由されている方も多いので、SA/PAを拠点に移動販売車で定期販売を行うPAもある。

―― そのほかには。
 青山 新東名が開業し、利用者の変化に対応した。新東名は勾配やカーブが少なく長距離やレジャー利用が多い。一方東名は短距離や職業ドライバーが多いため、東名の牧之原SAを大規模リニューアルし、3月18日にグランドオープンした。地元人気店がフードコートに出店したり、職業ドライバー向けにシャワーの増設や女性専用ブースをつくった。また、定食メニューの質の向上や値ごろ感を高めるなど利便性を高めた。
 駒門PA(下り)を4月20日に移設開業する。国道246号線に面するため、246号線のドライバーも意識した店舗を配置する。

―― ネオパーサ開業から5年が経ちました。
 青山 SA/PAが目的地化したことでブランド化でき、従来飲食や土産品が中心だったのが、アパレルなど従来にないショップの出店や、仕入れができなかった商品を物産展で販売できるようになった。出店テナントも予想以上の売り上げで、出店してよかったというお言葉を頂いている。

―― ドッグランも積極的に整備しています。
 青山 三十数カ所に広がり、ペット用品店やドッグカフェ導入など充実させている。ネオパーサはゼロからつくれるので、ドッグランも大型・小型犬に細分化したり、人工芝にして足が汚れないようにしている。

―― では改善点は。
 青山 デベロッパーとして、集客やテナントとのリレーションがまだまだ足りないと感じている。新業態に合う区画や店舗の組み合わせなど、より専門知識を高めていく必要がある。

―― 建て替えを機にネオパーサやエクスパーサ化は。
 青山 建て替え計画は数カ所あるが、エクスパーサ化などは検討が必要だ。客層や利用シーンが刻々と変化し、またコストもかかる。グランドデザインで全体を捉え、ニーズやロケーションを鑑みて決めていく。

―― コト消費が台頭しています。
足柄SAではグランピング場を期間限定で設置した(写真はトレーラーハウス)
足柄SAではグランピング場を
期間限定で設置した(写真はトレーラーハウス)
 青山 新事業として足柄SAにグランピング場を期間限定で整備し、単に食べてお土産を買ってもらうだけではなく、宿泊やバーベキューを体験できるようにした。意外にも女子会のような女性の利用者が多く、御殿場や箱根を回り、最後にグランピングというパターンが多い。おしゃれなテントだけでなく、キャンピングトレーラーハウスも配置した。また、御殿場市と連携しバーベキューには地元の食材を使うなど、地産地消にも取り組んでいる。

―― 訪日旅行客は。
 青山 レンタカーを利用する訪日旅行者が増えており、インバウンドは大きなテーマとして取り組む。足柄SAをパイロットエリアとして、結果を検証しながら他のSAに横展開する。

―― 新東名の延伸に伴う新たなSA/PAは。
 青山 新名神では鈴鹿PAを来年度に開業する。新東名では20年度開業を目標に「(仮称)小山PA」と「(仮称)秦野SA」を計画しており、現在のところ秦野SAは国内最後の新規大型SAになるだろう。背後に丹沢が控えるロケーションを生かしたい。

―― 今後の抱負を。
 青山 安全・安心で快適な商業施設運営が大きな軸だ。単にハードだけでなく、1日17万食を提供しており、食中毒はもってのほかで、異物混入回避やアレルギー問題も含めて安全・安心を追求していく。もうひとつはお客様の期待を超えた感動エリアの創造を目指しCSを高めていくこと。そのためには雇用確保が課題で、スタッフサティスファクションを向上していく。休憩室やトイレ整備をネクスコ中日本と共同で取り組むほか、ソフト面も含めてより一層やる気を引き出していきたい。
 さらに新たなビジネスモデルを探求する。グランピングはその1つで、エリアの付加価値を上げていけるものがないか探していく。
 かつてSA/PAは地域の迷惑施設と思われがちだったが、地元にとって“おらが街の名所”の1つに思ってもらえるように、商品や地産地消などで地域をアピールできるようにしてきた。その方向感は今後も変わらない。

(聞き手・編集長 松本顕介/若山智令記者)
※商業施設新聞2189号(2017年4月18日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.223

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