「コムサ」シリーズなどアパレルを中心に多彩なブランドを持つファイブフォックスグループ。その中で「カフェコムサ」を展開する(株)コムサ(東京都渋谷区千駄ヶ谷4-4-4、Tel.03-5775-2630)は、新たな改革が好結果をもたらしている。舵取りをする菊地豊社長に聞いた。
―― 社長就任2年目です。
菊地 「コムサイズム」が拡大した2000年代前半、当社も伸長し、07年に50店まで拡大したが、安価な輸入フルーツの使用によりブランド価値を下げてしまった。この立て直しの要請を受けて3年前に入り、昨年4月、社長に就任した。ファイブフォックスの経営管理本部長取締役も兼任する。
―― 改めてカフェコムサの特徴は。
菊地 最大の特徴はファイブフォックスの子会社であること。ファッションブランドが手がけるケーキを主体としたカフェであり、かつアパレルが展開したカフェの先駆け。店作りはファイブフォックスの店舗内装担当者が担っているし、商品にもアートを織り交ぜるなど、ファッションの切り口を随所に出している。そして「コムサ」のブランドの知名度から、店舗数33店のうち8割がアパレル店と同じ館に展開し、「食」というキーワードに、ライフスタイルやファッションがクロスオーバーしている。
―― 立て直し策は。
菊地 14年から改革に取り組んでおり、まず原点回帰の観点から、高級・高品質路線に舵を切った。食材改革を大きな柱に、国産比率を上げた。宮崎県産最高級マンゴー「太陽のタマゴ」や皇室献上栗といった高級品を使っている。全店にパティシエを配し、その日届いたフルーツをカットしその場でケーキを作る。値段は張るが、中心顧客層のミセス・ミッシーから好評だ。また、高級路線の一環として、銀座と京都・祇園に旗艦店を開店した。
もうひとつがコト消費の追求だ。ケーキ教室などを通じて食育・知育イベントに力を入れており、キッズパティシエ教室が大変好評で、大人の教室も始め、そのほか食べ放題ビュッフェも好評である。農家の方に来ていただきフルーツ講座や農家ツアーも検討している。さらに改めて2つのミッションを推進中だ。
―― 具体的には。
菊地 1つが「日本の食をアートする」。日本の良い食材を使うことが、地方創生プロジェクトにつながり、それにアートやファッションを組み合わせ、これを改革の旗印にしている。特に自治体とのコラボに力を入れており、全国の自治体が推奨する高級フルーツや、新種や旬のフルーツもご紹介いただき、いち早くお客様に提供している。また、岡山では食材だけでなく、備前焼のお皿に盛り付け、説明も行っている。
「日本の食をアートする」では、日本絵画やアニメキャラも表現している。今年は大政奉還150周年なので、京都市と提携して二条城の松鷹図をイメージしたケーキや、昨年は伊藤若冲生誕300年記念スペシャルケーキをつくった。
ミッションのもう1つが「感動シーンの名脇役」。ケーキはウエディングやバースデイなど様々なイベントの名脇役。イベントをつくりだして、常に感動シーンを提供したい。
―― 3月に柏の葉T-SITEに出店しました。
菊地 地方創生とコト消費が最もかみ合うのが、柏の葉T-SITEの店舗だ。愛媛・宇和島産の柑橘を使ったキッズパティシエ教室などを宇和島市と実施する予定で、館全体を巻き込んで展開する。同施設を運営する蔦屋書店も宇和島への旅や、宇和島の文化や歴史の本のコーナー展開をする予定で、館を挙げてイベントを行う。こういうことができるT―SITEへの出店を熱望していた。
―― 今後の売り上げ見通しや出店計画は。
菊地 現在、18億円だが、30億円を目指したい。店舗は50店に増やす。現在33店のうち、16店が百貨店、9店がSC、5店が駅ビルや新業態などその他業態、3店が路面店で、今後は柏の葉T―SITEのようなニューファミリー向けのSCへの出店も拡大する一方で、地方百貨店への出店を強化する。地方百貨店がテナントを導入していく流れの中で、当社が出店することで、高級志向でコト消費を実現でき、地産地消の取り組みにもつながる。また、こうしたシナジーを出しながら地方エリアでもアパレルでも存在感を出していきたい。
―― 出店エリアは。
菊地 「コムサ」の知名度を生かして、地方出店を強化する。大阪や名古屋でのドミナント化をはじめ、福岡は一度撤退したが再上陸するし、仙台も再進出を目論む。ただマーケット戦略ありきではなく、まずは1店ずつ作り、そこに核となる社員を育てる。この人材がドミナントのカギを握る。
―― パティシエ育成が重要ですね。
菊地 その通りだ。そのために教育プログラムを重視している。農家研修や検定では技術レベルに応じてタイを色分けし、全体のモチベーションとレベルアップを図る。外食産業は人手不足だが、大変ありがたいことに、新卒19人の採用が決まった。
―― 今後の抱負を。
菊地 当社は22年目を迎え、ブランドの良さを生かした高級路線を引き続き推進する。さらに当社がフルーツの開発にも携わり、6次産業化も視野に入れている。
出店では将来的にはホテルへの出店、また海外進出を視野に入れている。日本の食文化をモノづくりとおもてなし、空間の3つで表現したい。
(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2188号(2017年4月11日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー