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第216回

キヤノントッキ(株) 代表取締役会長兼CEO 津上晃寿氏


有機EL好調で売上高3倍に
組立能力さらに倍増目指す

2017/4/7

キヤノントッキ(株) 代表取締役会長兼CEO 津上晃寿氏
 スマートフォン(スマホ)用に旺盛な増産投資が継続している有機ELディスプレー。その量産に不可欠な真空蒸着装置のトップメーカーであるキヤノントッキ(株)(新潟県見附市新幸町10-1、Tel.0258-61-5050)は、積極果敢な生産体制の拡張でFPD各社の投資計画に応えようとしている。調査会社の予測によると、真空蒸着装置市場における同社のシェアは2017年以降も上昇するとみられている。直近の取り組みや今後の展望を代表取締役会長兼CEOの津上晃寿氏に聞いた。

―― この1年を振り返って。
 津上 過去24年にわたって有機EL用の蒸着装置を手がけてきたが、この1年は過去に経験したことのない忙しさだった。かつては一品ものを開発・製造して納入するのが常だったが、有機ELパネルの量産に乗り出すFPDメーカーが現れたことで、ここ1年は量産用標準ラインのリピートオーダーを手がけるかたちにビジネスモデルが変わった。これに伴い、16年度(12月期)の売上高は前年度比3倍強の703億円を達成することができた。有機ELが本格的な拡大期に入ったのだと実感している。

―― 生産の状況は。
 津上 主力生産拠点の平塚事業所(神奈川県平塚市)はフル稼働が続いている。キヤノン本社および産業機器グループ会社から即戦力となる人的支援を多数いただいており、16年中に生産能力を従来の2倍に拡大した。キヤノングループでなければ、これだけ短期間のうちに増産体制を整えることはできなかっただろう。

―― 真空蒸着装置市場における競合状況をどう捉えていますか。
 津上 日本、韓国、米国にライバルがいて、競争が厳しさを増しており、脅威に感じている。量産ラインは100m以上の長さの真空搬送と成膜チャンバー群から構成される巨大なシステムであるため、需要増加に伴って資本力の戦いという側面も出てきた。こうした状況下で勝ち残るには、キヤノングループのバックアップのもと、FPDメーカーの要求する仕様を完璧に満たし、実績を出し続けていくほかない。性能に関してはもちろんだが、標準化によるリードタイム短縮など装置の生産効率向上にも秀でていることが競争力になる。

―― 納期に関して。
 津上 装置の仕様によるので一概にはお答えできないが、「顧客の要求に応えること」をトッププライオリティーに置いている。1ラインの部品点数は非常に多く、かつて一品ものの受注が多かったときは、部材の調達計画をその都度立てる必要があったが、量産ラインを複数製造する現在はFPDメーカーの投資動向を的確に捉え、生産計画や調達戦略を立て納期要求に対応している。

―― 量産ラインが中心とのことですが、主流の6Gハーフ以外のサイズへの対応については。
 津上 6Gハーフサイズ以外の装置にも対応している。顧客の投資戦略に関わるため細かくは申し上げられないが、有機EL市場の拡大に寄与するためスマホ用にとどまらない展開を期待している。スマホ用ラインも含め、要求される基板サイズによっては開発を伴うが、主流の6Gハーフサイズでは、スループットやプロセス精度の向上など生産性を高める開発投資も充実させている。

―― 17年の事業方針は。
 津上 トッププライオリティーを厳守するため、引き続きグループを挙げて生産の拡大に取り組む。現有のサプライチェーンをさらに太くし、グループおよび協力会社への委託範囲の拡大などで、16年比2倍の生産体制を整備するつもりだ。並行して、営業やサービスサポート体制も拡充する。特に中国のキヤノングループ会社との連携をより深めていき、17年度も増収を達成する計画だ。

―― 電子部品製造装置事業にも注力しています。
 津上 既存のスパッタ装置に複数の小型ロータリーカソードを配置し、反応性スパッタ技術と融合した独自のRR(Reactive Rotary cathode)システムなどを展開している。事業バランスを安定化させるためにも重要な事業であり、SAWフィルターなどを中心に引き合いや受注を獲得している。当面は現在の事業方針やターゲット領域を維持しつつ伸ばしていくつもりだ。

(聞き手・編集長 津村明宏)
(本紙2017年4月6日号1面 掲載)

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